危険な動物を逃がす罪とは? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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危険な動物を逃がす罪とは?

2017年06月24日

今年(2017年)5月末、静岡県葵区の住宅地で体長約1メートルの大トカゲが目撃され、静岡中央署が注意喚起を呼びかけたという報道がありました。

この大トカゲは付近の住民がペットとして飼っていたもので、インドネシア産のコガネオオトカゲという種。
性格はおとなしく、人間には危害を加える恐れはないということですが、家の近所で突然そんなトカゲと遭遇したら…ちょっと怖いですね。

幸い6月6日には捕獲されたということですが、今回は危険な動物を逃がすと犯罪になる可能性がある、ということについて解説したいと思います。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

12 人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠つてこれを逃がした者

 

本号は、「危険動物解放の罪」とも呼ばれるもので、ポイントとなるのは次の3点です。

①人畜に害を加える性癖
②正当な理由がなく
③解放、または監守を怠って逃がす

人畜とは、人や家畜のことです。
家畜とは、人間が利用するために繁殖、飼育をする動物で、イヌ、ネコ、
ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ニワトリ、アヒルなどをいいます。

条文に「害を加える性癖のあることの明らかな」とあるので、たとえば噛み癖のある犬やライオンなどの猛獣、また鳥獣類ではないですがコブラなどの毒ヘビやワニなども該当するでしょう。

正当な理由かどうかは、事件の発生状況や社会通念などに照らして判断されます。

また、危険動物を解放することは故意犯、監守を怠って逃がすことは過失犯になる可能性があります。

以上のことから考えると、飼い主の過失によって逃げ出した大トカゲでしたが、人間に害を加える恐れのない、おとなしい種類であり、人に危害を加えたわけでもなかったため軽犯罪法違反には問われなかった、ということになると思います。

ちなみに、実際このトカゲが人にケガをさせた場合は、刑法の「過失傷害罪」に問われる可能性があります。

「刑法」
第209条(過失傷害)
1.過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2.前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

 

詳しい解説はこちら⇒
「犬を散歩させただけで、6300万円の賠償金を払う?」
https://taniharamakoto.com/archives/1872/

 

なお、ペットなどの動物は、法律上は「モノ」になるため、仮に発見者が「これは珍しい!」と捕獲して家に持って帰った場合は、「遺失物等横領罪」になるかもしれません。

第254条(遺失物等横領)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 

動物に関与する方は、このほか、「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)や、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護法)などもチェックしておきましょう。。

ペットなど動物の管理には十分気をつけましょう。