祇園の18人死傷事故は殺人罪なのか? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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祇園の18人死傷事故は殺人罪なのか?

2012年04月16日

2012年4月12日、京都市東山区の祇園で軽ワゴン車が、赤信号を無視した上で、歩行者を次々とはねて男女7人が死亡し、11人が傷害を負った事件で、現在、過失ではなく、故意による事件、つまり殺人罪で捜査が進められています。

当初は、ワゴンが電柱に衝突して止まった時点で、てんかんの持病がある加害者が車内で泡を吹いており、てんかん発作の際の状況に似ていたことから、自動車運転過失致死傷罪で捜査が進められましたが、その後の捜査状況からは、殺人罪の容疑に切り替えられたものです。

当初の自動車運転過失致死傷罪で捜査が進められていた時に書いた記事は、こちら。
http://ameblo.jp/mtanihara/entry-11221702188.html

目撃情報によると、藤崎容疑者は交差点で歩行者をはねる前にタクシーに追突した後、いったんバックしてタクシーを追い抜き、さらに別の車をかわしながら、一方通行で狭い大和大路通を北上した。交差点付近でクラクションを鳴らし、横断歩道にいた歩行者らをはねたということです。

また、歩行者らをはねた後、の逃走経路を見ると、車や歩行者などをうまくすり抜けて逃走しており、とても発作中の者の運転とは考えられない運転であるとのことです。
逃走経路
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120416-00000002-kyt-l26

さらに、加害者の司法解剖の結果、加害者の体内から、抗てんかん剤が検出されている、とのことです。つまり、加害者は、抗てんかん剤を飲んでいた可能性もある、ということです。

ということは、次の可能性が濃厚です。

(1)交差点に進入する前の段階では、意識があった。
(2)交差点での事故後、逃走する段階では、意識があった。
(3)事故後電柱に衝突した時点では、てんかん発作が起きていた可能性がある。

そうすると、交差点で飛行者らをはねた段階で、意識があった、つまり殺人の故意があった可能性が高くなってきましたが、まだこれだけで殺人罪と断定することができません。

(ア)抗てんかん剤を、何時間前に飲んだのか?
(イ)その状態であれば、てんかん発作は起きないのか?
→起きないのであれば、事故当時意識があったと推定され、殺人罪の可能性が高まる
(ウ)てんかん発作は、一瞬だけ生じ、その後すぐに意識を回復して運転可能な状態に戻るのか?
→事故の時点だけてんかん発作であった可能性は、あるのか?
(エ)てんかん発作中でも、運転可能なのか、可能であれば、どの程度の運動能力になるのか?
→事故後の運転経路との関係から、事故後、てんかん発作中の運転であった可能性は、あるのか?

などを捜査しなければ、ならないでしょう。

今後の捜査を見守りたいと思います。