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税理士の説明義務が認められなかった裁判例(税理士勝訴)


2016年9月19日

【東京地裁平成27年5月19日判決】

○税理士勝訴

(事案の概要)
個人である原告らが,税理士に、損益通算の可否や不動産買換特定の適用の有無等の税務相談をしたところ,税理士の誤った説明により,税務署からの更正処分等を受けたとし,債務不履行等に基づき,損害賠償を求めた事案。

税理士は、原告らが経営する会社の顧問弁護士でした。

過去に原告ら個人の税務相談に無償で応じたことが数回ありました。

争点は、次の6点

(1)原告らと税理士被告との間の税務顧問契約の有無
(2)原告らと税理士との間の委任契約の有無及びその内容
(3)不動産の売却に関する損益通算に関して,原告らに対して,税理士が誤った説明をしたか。
(4)不動産に関する居住用不動産買換特例の適用に関して,原告らに対して,税理士が誤った説明をしたか。
(5)会計事務所従業員の行為につき被告が使用者責任又は監督義務違反に基づく不法行為責任を負うか。
(6)原告らの損害額

(1)原告らと税理士被告との間の税務顧問契約の有無
⇒否定。

・原告らは、不動産の売却を踏まえた原告らの確定申告についても,税理士に委任することなく行っていた

・他に証拠がない(契約書もないし、報酬も払っていない)

(2)原告らと税理士との間の委任契約の有無及びその内容
⇒肯定。税務相談の委任契約あり。

(3)不動産の売却に関する損益通算に関して,原告らに対して,税理士が誤った説明をしたか。
⇒(1)のとおり契約がないので、義務違反はない。

(4)不動産に関する居住用不動産買換特例の適用に関して,原告らに対して,税理士が誤った説明をしたか。

・税務申告は原告らが自ら行うこととなっており,上記税務相談に関する報酬は定められていない

・具体的なスキームについては税理士が主導的に提案をしていることをうかがわせる証拠もない

⇒税理士の義務は,原告らから受けた情報を前提に居住用不動産買換特例の適用の有無を検討するに止まり,原告らから受けた情報の正確性を検証するまでの義務は負っていない
(5)(6)は省略します。
(この裁判例から学べること)

この裁判例は、税理士と顧客との契約は、契約書がなくても成立することを認めました。

しかし、税理士が負う注意義務の程度は、その契約の内容によって異なる、という考え方も提示しています。

税理士が本格的に業務に携わる場合には、対象不動産、売買、借入等に関する全ての資料を入手し、その資料の正確性を検証し、その上で、税法の要件の適用があるかどうかを検討する、ということになります。

しかし、本判例では、税理士の義務は、「資料の収集」「情報の正確性」は、税理士の注意義務から除外されています。

税理士は、原告らから提供された情報を前提に、税法の要件適用の判断をすればよい、と認定しているのです。

ということは、きちんと報酬を定めて行う税務相談ではなく事実上好意で税務相談であっても、

・契約書を締結すること

・契約書の中で、「税理士は、依頼者から提供された情報を前提に税法適用の判断をするものとし、それ以上に資料収集、情報の正確性等の踏み込んだ検証をしないものとする」等の記載を入れておく、という防御策が考えられると思います。

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税理士が資本金額の助言を怠り損害賠償が認められた裁判例


2016年9月19日

【東京地裁平成27年5月28日判決】

●税理士敗訴
損害賠償額 1257万2890円

(事案の概要)
医師が個人で運営していた医院を医療法人として設立して自分が代表者として就任する際に,医師の顧問税理士であった税理士ととの間で契約を締結しました。

その契約の内容は、医療法人の設立手続の一部を税理士が行う、というものです。

そして、医療法人設立後は、税務顧問契約を締結しました。

ところが、医療法人は、税理士を訴えた、という事案です。

理由としては、

①税理士は,本件契約上,医療法人設立時に資本金を,設立後2期分の消費税の免除を受けられるなど税務上有利とするために1000万円未満とするように指導すべき義務があったにもかかわらず,これを怠り,医療法人に設立後2期分の消費税を支払わせるなどの税務上の損害を与えた

②税理士は,事務用品購入費について経費算入を怠り,これにより税務上の損害を与えた

というものです。

主な争点は、①の方です。

医療法人側は、法人設立の目的は「節税目的」なのだから、税理士は当然資本金を1000万円未満にするよう指導する義務がある、と主張しました。

税理士は、

①資産総額について,1000万円未満とした場合には設立後2期分の消費税が免税となる旨説明した

②しかし、医療法人代表者が「資産総額だけでも他のクリニックに勝ってブランド化したい。」「設立から2期分の消費税の免税が受けられなくとも,課税される消費税が経費となるならそれでかまわない。」「運転資金が潤沢にあった方が運営しやすい。」などと述べて,資産総額を1億円超とした、とのことです。

しかし、その後、2回にわたり、医療法人から税理士に対して「なぜ1000万円未満にしなかったのか」という問い合わせに対し、消費税については,医師は個人経営から法人成りした経緯から,2期分の免除の適用はない旨,誤った認識に基づく回答をし,設立の際に正しい説明をしたことや,医師の強い希望で資本金額を1億円以上としたとについては全く触れなかった、という事情があります。

つまり、争点は、

設立の際に、税理士は、資本金1000万円未満にすれば、設立後2期分の消費税が免税となることを説明したか?

という点です。

(判決)

この点、裁判所は、設立の際に説明した証拠がないこと、その後の問い合わせ時にも、説明した旨回答していないこと、などから、税理士の主張は信用できない、として、税理士は敗訴しました。

税理士は、税務に関する専門家として、依頼者のために税務に関する有効な説明・助言をする義務があります。

これを税理士の説明助言義務と言います。

裁判所は、この説明助言義務を前提として、この義務違反を認めた、ということになります。

(対策)

この裁判例から学べること。

知識がないことは論外です。しかし、実際説明したとしても、「説明したこと」を立証できないと税理士は損害賠償義務を負担します。

そこで、通常と異なる処理をする場合には、説明時に書面化しておくことが必要です。

今回でいえば、もともと節税目的の法人設立ですから、資本金1000万円未満にすれば設立後2期分の免税になるのですから、そちらを選択する方が通常であるのに、異なる処理をしました。

そこで、その旨書面化し、代表者がアドバイスと異なる処理を選択した旨署名捺印を得ておく、という方法です。

そのような書面をもらっておけば、裁判になっても、その書面を提出するだけで、勝負は決することになりますし、そもそも裁判にもならないと思います。

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コンサートのチケット転売で逮捕!


2016年9月16日

ファン心理に付け込んで金儲けをしていた女が逮捕されたようです。

問題となったのは、アイドルのコンサートチケットの転売です。

「嵐のチケットを無許可で転売、25歳女逮捕」(2016年9月14日読売新聞)

アイドルグループ「嵐」のコンサートチケットを転売したとして、北海道警札幌中央署は、香川県善通寺市のブリーダーの女(25)を古物営業法違反(無許可営業)の疑いで逮捕しました。

報道によると、香川県公安委員会の許可を受けていないにもかかわらず、女は2015年11月から12月の間に札幌市内の女性ら3人に対し、
嵐のコンサートチケット5枚を計4回、インターネットの転売サイトで計7万円で売ったということです。

女は、チケット交換サイトでコンサートチケットを入手した後、転売サイトに出品して高値で販売する手口で、2014年10月から今年4月までに、全国31都道府県の168人に嵐などのコンサートチケット299枚を販売し、約1000万円の売り上げを得た疑いがあるとして、同署で余罪を調べるということです。
チケットの転売行為、いわゆるダフ屋行為については以前も解説しています。

詳しい解説はこちら⇒
「AKB総選挙とダフ屋行為」
http://taniharamakoto.com/archives/155

「チケット転売で逮捕!?」
http://taniharamakoto.com/archives/1866

これらの事件では、逮捕容疑は東京都迷惑防止条例違反(ダフ屋行為)でした。

迷惑防止条例は、全国の各都道府県でそれぞれ制定されていますが、たとえば東京都の場合、第2条でダフ屋行為の禁止について規定しています。

対象となるのは、乗車券や入場券、観覧券などのチケットで、転売目的で買うことも売ることも禁止されています。

ただし、「公共の場所」等で買ったり売ったりしないと、迷惑防止条例で処罰はされません。

インターネット上には適用がないわけです。

この条例自体が、「公衆での迷惑」な行為を取り締まることを目的としたものなので、インターネット上は対象にしていない、ということですね。

さて、今回の事件では古物営業法違反です。

古物(こぶつ)営業法とは、どのような法律なのでしょうか?
条文を見てみましょう。

「古物営業法」
第1条(目的)
この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
「古物営業法」は、1949(昭和24)年に制定されたもので、盗品などの売買や窃盗などの犯罪の防止等を目的としています。

「古物」とは、一度使用された物品や美術品、商品券、乗車券、郵便切手、あるいは使用されない物品で使用のために取引されたものなどをいいます。(第2条1項)

「古物営業」とは、たとえば次のようなことをいいます。(第2条2項1号)
・古物を売買、交換する営業
・委託を受けて古物を売買、交換する営業

そして、この営業は許可制になっています。

第3条(許可)
1.前条第2項第1号に掲げる営業を営もうとする者は、営業所が所在する都道府県ごとに都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。
これに違反した場合は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第31条)

ちなみに、営業とは生業に限定されません。
小遣い稼ぎでも「営業」になります。
そして、営業とは「営利を目的として、反復継続する」ことです。

今回の事件は、約1年半にもわたって168人に299枚もの大量のチケットを販売したということです。

計算上は、約2.4日に1回のペースでコンサートに行くことになります。

さすがに「299回全て自分でコンサートに行く予定で買ったけれども都合が悪くなったので、やむなく売った」とは言えないでしょう。

「転売してお金を儲けるために反復継続してチケットを購入し、販売した」ということになるでしょう。

このような転売が横行すると、コンサートに行きたいファンのチケット入手が困難になります。

もちろん、高いお金を払えば手に入るのかもしれませんが、それでは、アーティスト達の本意ではありませんね。

多くのアーティストが高額転売に苦言を呈しているところです。

早く有効な防止策を考案してくれることを祈ります。合掌。。。

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