相続 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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  • 相続と遺言の本出版です!

    2015年10月12日

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    新刊出しました。今回は、【相続】です。

    自分が死んだ後、30年間、自分の思い通りに
    遺産をコントロールする方法を解説しました。

    マイケル・ジャクソンの遺産は、どうやって
    わけられたか、についても解説してあります。

    税理士が悩んでいる「名義預金」の回避法も
    説明してあります。

    名義預金の回避法はない、と言われていましたが、
    この方法はどうでしょうか?

    読んでみていただければと思います。

    会社を経営している人で、将来、会社が
    倒産してしまうとき、自宅を守れないか、
    と思っている人も多いと思います。

    ぜひ、読んでください。

    遺言書を書きたいけれど、遺留分が心配だ、
    という人がいるでしょう。

    ぜひ、読んでください。

    回避可能かもしれません。

    知識は力です。

    知っておくだけで、違います。

    「遺言と贈与はまだするな!
    「信託」で自分の死後三〇年間財産を支配し続ける方法 」
    (万来舎)

    http://www.amazon.co.jp/dp/4901221930/

  • 遺言書で自分の取り分がなかったら?

    2014年12月21日

    ★遺言書で自分の取り分がなかったら?

    たとえば、親が亡くなって、相続が発生したと思ったら、遺言書が出てきて、自分以外の人に、全ての財産を相続させる、と書いてあったら、どうでしょうか?

    ショックですね。(>_<)

    自分の取り分がゼロになってしまいます。

    しかし、その場合でも、法律は、救済策を作っています。

    「遺留分」という制度です。

    遺留分というのは、遺言書でも取り上げることのできない、相続人の取り分のことなのです。

    たとえば、相続人が妻と長男、次男の3人だったとして、「妻に全ての財産を相続させる」という遺言書があるとします。

    その場合、長男と次男には、財産に対し、4分の1ずつの遺留分がありますので、妻から、その分を分けてもらうことができます。

    この遺留分は、一定の事実を知った後1年以内に請求しないと、権利が消滅してしまいますので、ご注意ください。

    ご相談は、こちらから。
    http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/

  • 【税理士向けセミナー】相続案件受注法

    2014年10月12日

    ●相続案件を受注したい税理士さんへ

    相続税改正を迎え、相続への関心が益々高まっています。

    こういう時は、間違いなくビジネスチャンスとなります。

    法人税を中心業務にされている税理士も、だんだんと
    競争が厳しくなってきている今、資産税分野への業務
    拡張は有効な手段です。

    では、どうやって相続税に関する相談を受注したら
    よいのでしょうか。

    そんなことは誰も教えてくれません・・・

    と、思いきや、教えてくれる税理士がいました。
    税理士の中里先生です。
    中里先生は相続をテーマとした講演依頼が
    年間40回以上もあるなど、相続に特化して
    講演・集客をされている先生です。
    セミナーの内容はいかのとおりです。

    1.選ばれる税理士になるには?

    ・基礎控除の引き下げで、新たな市場にアピール
    ・「会計」「税務」の2大業務に付加価値をつける
    ・「困っている人の前」で解決策を提示してPRする
    ・相続対策になる商品、サービスを販売している会社の活用方法を知る
    ・「新たな市場」は全ての税理士に来ないことを知る
    ・誰の紹介で相続税の相談者が来るかを知る
    ・簡易な相続対策に特化する 他

    2.相続税の仕事を増やす7つの手法

    (1)セミナー開催
    (2)相続税相談者との面談の機会を増やす
    (3)相続税の個別相談のやり方
    (4)提案の方法
    (5)簡易試算の出し方
    (6)相続税の個別相談のやり方
    (7)遺言作成の実務
    (8)成果として得られる様々な報酬&手数料

    3.具体的な事例

    税理士井上立子先生が実際に
    この手法で開催したセミナーで起きた驚異の実績など

    さらに

    懇親会では、生損保会社やハウスメーカーが
    多数参加しますので、

    顧客を紹介してくれる
    パートナーと知り合うチャンスもあります。
    日程は以下のとおりです。

    11月20日(木)15:00~19:00
    (セミナー・懇親会)

    詳しい内容はこちら
    http://valley-field.com/seminar/sozoku201411.pdf
    相続顧客獲得の手法と紹介してくれる人脈を
    一度に手に入れる機会です。

    先着50名なので、

    これから相続案件を増やしたい方は
    早めにお申込みください。

    税理士以外の専門家も参加できます。
    【お申し込みフォーム】

    https://55auto.biz/vfieldbiz/touroku/souzoku1120.htm

  • 認知症の父の相続問題にどう対処する?

    2014年07月21日

    高齢者の方が、よく言われるのが「ボケたくない」、「家族に迷惑をかけたくない」ということです。

     

    しかし、実際には日本の超高齢化は進行し、認知症になってしまう人が増え続けています。

     

    厚生労働省の発表では、認知症の人の数は推計で約460万人。発症の可能性のある400万人も含めると、65歳以上の高齢者のうち、4人に1人が認知症とその予備軍だということです。

     

    認知症の問題は本人だけでなく、現実的に家族にも大きくのしかかってきます。

     

    親が認知症になってしまったら、どうしたらいいのでしょうか?

    今回は、親の認知症と相続問題を法的に解説します。

     

     

    Q)75歳の父が認知症になってしまいました。実家は、地方で代々続く地主の家系で、父も数件の土地を先祖から相続して所有しています。そこで心配なのは、今後の財産の管理と相続についてです。いつか悪徳業者にだまされてしまうのではないかと不安でしょうがありません。母は今まですべて父に任せきりで何もわかっていません。おまけに長男である私と弟、妹も全員が実家を出ていて、別生計で家庭を持っています。私が実家に帰ることも考えていますが、仕事の関係もあり、すぐに行動できない状態です。早急に対応したいのですが、何をどのようにすればよいのでしょうか?

     

     

    A)高齢者や障害者などの財産管理や、生活支援をするための制度として、「成年後見制度」というものがあります。

     

    成年後見制度には、認知症や精神障害、知的障害、頭部外傷による高次脳機能障害などで本人の判断能力が低下してしまったときのための「法定後見」と、本人が元気で判断能力があるうちに将来のリスクに備えて自分で後見人を選ぶ「任意後見」があります。

     

    質問のように、親が認知症の場合は、法定後見制度を利用するのがいいでしょう。

     

     

    【法定後見】

    判断能力が不十分な人がいる場合、家族などが家庭裁判所に審判を申し立て、後見人が決定されます。

     

    後見人は、本人に代って財産の管理や法律行為などを行います。

     

    後見人制度は、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれていて、本人の事情に応じて選択できるようになっています。

     

    「後見」

    〇判断能力がまったくない人が対象

    〇申立てができるのは本人・配偶者・四親等内の親族・検察官・市町村長など

    〇後見人には、財産管理に関する全般的な代理権と取消権(日常生活に関する行為を除く)が与えられる

    〇制度を利用した場合、医師・税理士等の資格や会社役員・公務員等の地位を失う

     

    「保佐」

    〇判断能力が著しく不十分な人が対象

    〇申立てができるのは本人・配偶者・四親等内の親族・検察官・市町村長など

    〇民法13条1項の掲げられている借金・訴訟行為・相続の承認や放棄・新築や増改築などについて、本人に不利益でないかを検討して、問題がない場合の同意権が与えられる

    〇取消権(日常生活に関する行為を除く)が与えられる

    〇制度を利用した場合、医師・税理士等の資格や会社役員・公務員等の地位を失う

     

    「補助」

    〇判断能力が不十分な人が対象

    〇申立てができるのは本人・配偶者・四親等内の親族・検察官・市町村長など

    〇申立てにより、民法13条1項の掲げられている借金・訴訟行為・相続の承認や放棄・新築や増改築などの一部の同意権と、取消権(日常生活に関する行為を除く)などが与えられる

     

     

    たとえば、後見人は本人に代わって、所有している不動産の売却手続きをすることができます。

     

    また、悪徳業者によるリフォーム契約の取り消しをすることができます。

     

     

    【手続きなどでの注意点】

    〇申立てには、申立書などの書類や本人の戸籍謄本、申立て手数料や登記手数料などが必要です。

     

    〇法定後見を申立てる際、医師の診断書の添付を求められます。この診断書が、「後見」「保佐」「補助」の決定において重要視されます。

     

    〇審判では、医師による鑑定を必要とする場合もあるため、選任までに数ヵ月もかかることがあります。

     

    〇後見人の選任は家庭裁判所が決定するため、申立て人の希望に沿うとは限りません。候補者として家族や親族を挙げていても、本人が必要とする支援などの内容によっては、たとえば候補者以外の人で弁護士や司法書士、社会福祉士、税理士などの専門職や、法律又は福祉に関わる法人などが選ばれる場合があります。

     

     

    【後見人の役割や注意点】

    〇成年後見人制度は、あくまでも本人のための制度であるため、たとえば、相続税対策のための贈与や借入、投機的な運用等はできません。

     

    〇成年後見人から請求があった場合は、家庭裁判所の判断により、本人の財産から報酬が支払われることになります。

     

    〇成年後見人の仕事は、本人の財産管理や契約などの法律行為に関するものに限られています。そのため、食事の世話や介護などは一般には成年後見人の仕事ではありません。

     

    〇成年後見人は、行った仕事の報告を家庭裁判所に報告し、必要な指示等を受けます。これを、「後見監督」といいます。

     

    〇原則として、後見人は本人が死亡するまで任務が続くことになります。

     

     

    平均寿命の長さ、高齢者の数、高齢化のスピードなどから見ていくと、日本はすでに「超高齢化社会」に突入しているといいます。

     

    それにともない、さまざまな事故や問題も起きています。

    認知症の高齢者の徘徊による鉄道事故に関しては、以前、解説しました。

     

    「鉄道事故の賠償金は、いくら?」

    https://taniharamakoto.com/archives/1421

     

    また、2013年には親族に代って成年後見を申し立てた市区町村長の数が、本人の子供についで2番目の多さになったという報道がありました。この5年で2.7倍に増加しているということです。

     

    家族のいない、身寄りのない高齢者がいかに増加しているかが見てとれます。

     

    時代の変化に合わせて、法律と上手につきあっていくための知識が今後ますます求められているのかもしれません。

  • 遺産相続における特別受益とは何?

    2014年07月09日

    松下幸之助さんが生前、こんなことを言ったそうです。

    「嫉妬は狐色に焼くのがよろしい」

    焼きが足りなくてもいけないし、焼き過ぎてもいけない。
    嫉妬は、こんがり狐色くらいが程よく香りも立って、人間味も出て、さらには本人の向上心にもつながる。
    そんなことをユーモアで表現したのでしょう。

    とかく、人間が集まると嫉妬が芽生え始めるものです。
    それは会社の人間関係でも友人同士でも、家族の間でもあるものです。

    「お姉ちゃんばかり、ずるい!」
    「父も母も弟であるお前ばかり可愛がって、うらやましかった」

    子供の頃、兄弟姉妹でこんな不公平を感じていた人も大人になり何事もなく、それぞれの家庭を持って暮らしていたのに、ある問題がきっかけで、兄弟の仲が険悪になってしまうこともあります。

    今回は、不公平を感じてきた兄弟姉妹間の遺産相続問題を解説します。

    Q)父が亡くなり、兄弟間で遺産問題が起きてしまいました。問題は弟です。私たち兄弟は長女である私、次女、長男である弟の3人です。父も母も後継ぎとして、小さい頃から弟を可愛がってきました。それは姉である私たちも同じですが、やはり少し甘やかしすぎたようです。弟は大学進学資金、結婚費用を親から出してもらい、おまけに実家から飛び出し、マイホーム資金まで出してもらったにも関わらず、父の死後、「自分が後継ぎなんだから遺産を多くもらって当然だ」と主張します。今まで親からの援助を多く受けてきた弟が、さらに遺産相続も多くもらう権利があるなんて、おかしくないですか? もう、我慢できず法的に対応しようと考えています。どのように進めていけばよいのでしょうか? ちなみに、母は健在で父の遺言書はありません。

    A)被相続人から特別に財産をもらった相続人がいる場合、その財産も遺産の一部とみなして法定相続分から差し引いてから遺産分割することを「特別受益」といいます。

    つまり、特別受益とは、質問のように被相続人である父の生前に法定相続人の1人である弟が特別に利益を受けていた場合、遺産分割の際に弟が同じ相続分を受けられるとすれば、それは不公平になってしまいます。そのため、受けるべき財産額の「前倒し」を受けていたとして扱うことで、不公平を是正する制度ということです。(「民法」第903条)

    質問からは実際の金額がどのくらいかはわかりませんが、仮に、遺産が5,000万円、弟が受けていた利益を1,000万円とすると、具体的な法定相続分は以下のようになります。

    「みなし財産」
    5,000万円+1,000万円=6,000万円

    「各相続人の相続分」
    妻:6,000万円×2分の1=3,000万円
    長女:6,000万円×2分の1×3分の1=1,000万円
    次女:6,000万円×2分の1×3分の1=1,000万円
    長男:6,000万円×2分の1×3分の1=1,000万円

    ここで、長男である弟はすでに贈与として1,000万円を受けているので、差し引いた残額は0円。
    よって、単純に計算すると、今回の法定相続分は弟にはないということになります。

    ただし、注意点があります。

    ①みなし財産から控除する特別受益は、贈与時ではなく相続開始時で評価するため、住居などは現実の遺産分割時の不動産評価額を参考にして修正し算定することが多くあります。

    ②生活費の援助や結婚式費用など、社会通念上、遺産の前渡しとまではいいがたい範囲の金額は特別受益とはいえないとされる場合があります。

    ③法定相続人全員が合意すれば、遺産は法定相続分のとおりにきっちり分割する必要はありません。こうした話し合いを、「遺産分割協議」といいます。

    つまり、弟の「自分が後継ぎだから遺産を多くもらって当然」という考えは違法ではありませんが、法定相続人間で話がまとまらず合意が得られないため法的な対応を考えているなら、今後は家庭裁判所の調停の手続に入ることになります。

    家庭裁判所の調停は、場合によっては何年もかかることがあり、さらに親族間でもめて関係が悪化することも考えられますから、今後の対応については慎重に判断していただきたいと思います。

    ご相談は、こちらから⇒ http://www.bengoshi-sos.com/about/0902/

  • 子供のいない妻は夫の遺産を100%相続できない!?

    2014年07月03日

    遺産の相続問題で、こんな話を聞くことがあります。
    「うちの夫婦には子どもがいないから相続が簡単。ラクでいい」

    確かに一見すると、簡単そうに思えますが、果たして法律的にはどうなのでしょうか?

    今回は、子供のいない夫婦の相続問題を法的に解説します。

    Q)夫を病気で亡くしました。59歳でした。突然のことだったので、遺言書は見つかっていません。私は相続のことなど考えてもいなくて、勉強もしていませんでした。私たち夫婦には子供がいなかったので、夫の遺産は私が相続するものだと、勝手に漠然と思っていたのです。しかし、49日が過ぎたころ、義理の姉とその息子がやってきて、「遺産を相続する権利が自分たちにもある」というのです。本当でしょうか? 私は義姉とは特に仲が良かったわけでもないので、心情的には納得がいきません。ちなみに夫の遺産は2人で住んでいたマンションとわずかな預金のみ。夫の父母は数年前に亡くなっています。(茨城県在住 S・Tさん 56歳 主婦)

    A)個人が亡くなった場合、その人は「被相続人」となり、権利義務
    を「相続人」が承継します。

    民法では、相続人の順位が決められています。

    〇第1順位:子(直系卑族)
    ※養子・非嫡出子・胎児を含みます
    ※子が死亡している場合は、孫や曾孫に代襲相続されます

    〇第2順位:父母(直系尊属)
    ※父母が死亡している場合は、祖父母が相続人になります
    ※第1順位の人がいない場合のみ、相続人になります

    〇第3順位:兄弟姉妹
    ※第1・第2順位の人がいない場合のみ相続人になります
    ※兄弟姉妹が死亡している場合は、甥・姪が相続人になります

    〇配偶者:夫または妻
    ※配偶者は、つねに相続人になります
    ※法律上の婚姻関係にある者で。内縁関係では相続人にはなりません

    S・Tさんのように子供のいない夫婦で旦那さんが亡くなった場合、まず配偶者であるS・Tさんは相続人になります。

    次に、子供はいないため、夫の父母に相続人である権利がありますが、どちらも亡くなっているため、第3順位の夫の姉に相続権が発生することになります。

    父母が健在なら、S・Tさんの法定相続分は3分の2、親が3分の1となりますが、今回のケースでは、義理の姉にも相続権があります。
    法定相続分は、S・Tさん4分の3、姉が4分の1となります

    ここでは仮に、マンションの評価額1,800万円、預金200万円として、義理の姉とお金で解決する前提で考えてみると、S・Tさんが義理の姉に支払わなければいけない金額は、法的には500万円になってしまいます。

    もし、S・Tさんに十分な預貯金がない場合は、マンションを売却するしかなくなってしまいます。
    すると、生活基盤である住まいを失い、S・Tさんの生活は一気に不安定な状況になってしまいます。

    さぁ、困ったことになってきました。
    果たして、こうした事態を回避する方法はあるのでしょうか?

    いくつかありますので、順に説明していきます。

    ①「法定相続人に相続放棄してもらう」
    被相続人が死亡すると自動的に相続が開始されますが、相続人は、自分が望まないのに無理矢理相続する義務があるわけではありません。また、被相続人に多額の借金がある場合、借金も相続されますので、なんとか相続を逃れない、という場合もあるでしょう。

    そんな時、相続人は「相続放棄」をすることができます。

    相続放棄をすれば、始めから相続人ではなかったことになります。今回の場合、義理の姉が始めから相続人でなかったことになり、S・Tさんが全ての財産を相続することができます。

    ただ、「遺産を相続する権利が自分たちにもある」という登場の仕方から考えると、相続放棄してもらえる可能性は低いでしょう。

    ②遺産分割協議をする。

    法定相続人全員が合意すれば、遺産は法定相続分のとおりにきっちり分割する必要はありません。
    こうした話し合いを「遺産分割協議」といいます。

    S・Tさんの場合は、法定相続人の1人である義理のお姉さんと話し合って、S・Tさんが支払える限度のお金の相続で我慢してもらうか、マンションの持分の一部を相続してもらって、そのマンションの分割を求めない旨の合意をすることも考えられます(但し、5年が上限です)。

    ②「遺言書を遺しておいてもらう」
    遺言を遺しておけば、財産の分け方を本人の意思で決めることができます。

    「自筆証書遺言の書き方」の詳しい解説はこちら
    ⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1372

    ただし、法定相続人には最低限の財産を受け取る権利である「遺留分」が認められているので注意が必要です。

    たとえば、子供が2人いる場合、夫が「自分の全財産を妻に相続させる」という遺言を遺しても、子供は「遺留分」を受け取ることができます。
    この場合、遺産等の全体の2分の1が遺留分となり、そこに子供の法定相続分である4分の1を掛けた8分の1ずつが子供たちの遺留分となります。

    ところが、兄弟姉妹や甥・姪が法定相続人になる場合は遺留分が認められないので、S・Tさんの場合、「全ての財産を妻に相続させる」という遺言書を遺しておいてもらっていれば遺産の全額を相続できるということになります。

    S・Tさんの場合、誠意をもって義姉と話し合いをして理解してもらうか、もしくは旦那さんが遺言書を遺している可能性もあるので、公証役場で探しもらったり、遺品の整理をしてみることをおすすめします。

    ご相談は、こちらから。
    http://www.bengoshi-sos.com/about/0902/

  • 相続した不動産を兄弟間で争わずに分割する方法とは?

    2014年06月24日

    一定の年齢になると、多くの人はあの問題に直面します。

    お金も絡んでややこしく、時に争いにまで発展することもあるものといえば……相続問題です。

    父親も母親もまだ生きているから、後で考えよう。
    親の死なんて、縁起でもないことは考えたくない。

    そんなことを言っているうちに、いざという時がきて、あわてたり、親族間の争いが起こったりすることがあります。

    そこで今回は、相続に関する相談を法的に解説してみたいと思います。

    Q)いっしょに暮していた父(68)が亡くなり、財産を相続することになりました。しかし、父には現金の財産はほとんどなく、大きな遺産は実家の家と土地です。私には弟が一人いて、母はすでに亡くなっています。この家と土地を私と弟で相続するわけですが、争わずに分割するいい方法はありますか? (神奈川県在住 T・Hさん 40歳 会社員)

    A)相続問題で、よく相談されるもののひとつに相続した財産の分割問題があります。

    相続の問題というと、資産家や経営者一家の問題と考えている人もいるでしょうが、じつは一般的な家族にこそトラブルが起こりがちです。

    相談者であるT・Hさんの抱えている問題はその典型ともいえます。

    多くの一般家庭では、現金の財産は少なく、大きな財産といえば実家の土地と家ということがよくあります。
    この不動産を分割して相続するときにトラブルが起こりがちなのです。

    では、この土地と家を、どのように弟と分ければいいのでしょうか?

    遺産分割には、大きく分けると以下の3つの方法があります。

    ①現物分割
    ②代償分割
    ③換価分割

    【現物分割】
    相続した不動産(現物)を共同相続人と分割する方法。
    遺産が土地の場合は、区画に分けて(分筆して)相続しますが、狭い土地の場合は分割するのが難しい。
    また、建物は分割できないという問題があります。

    【代償分割】
    債務負担による分割方法。
    簡単にいうと、不動産を相続した人が他の相続人に対して、自分の預貯金から代償金を渡すわけです。
    ある程度、平等に財産を分割することができます。
    しかし、不動産を相続した人にまとまった現金がない場合は、他の相続人に代償金を渡すことができないという問題が発生します。また、不動産の価値で意見が分かれ、紛争に発展することもあります。

    【換価分割】
    不動産を売却して、その代金を相続人間で分割する方法。
    平等に分割することができるが、家と土地を売却するため、そこに住んでいる人がいる場合、問題が生じるケースがあります。

    遺産相続は、原則的には「現物分割」で行われますが、建物は分割できないという物理的問題や、分割することで著しく価値が損なわれるような場合には「代償分割」を考えます。

    「代償分割」の場合、T・Hさんが弟に渡すお金は厳密に法定相続分きっちりである必要はありません。
    兄弟で話し合って、お互いが納得できる金額にすれば問題はありません。

    しかし、小さな土地と一軒家でも都心に近ければ数千万円にはなるでしょうから、T・Hさんが弟に不動産の代償金を渡せるだけの現金をもっていなければ、事態は難しくなります。
    いずれにせよ、兄弟間での話し合いが必要となるでしょう。

    「換価分割」を選ぶなら、T・Hさんがこの家に住んでいるという部分をどうするか、検討する必要があります。

    相続人の間で話し合いがうまくいかなければ家庭裁判所の調停の手続に入ることになります。

    家庭裁判所の調停は、場合によっては何年もかかることがあり、親族間の関係もぎくしゃくしたものになってしまいます。

    お互いが譲り合い、尊重しあって兄弟仲良く生きて行きたいものです。

  • 自筆証書遺言の書き方

    2014年03月21日


    最近、年配の方の中には「終活」というものを行う人がいるようです。

    これは「人生の終わりのための活動」の略で、生前に行うべきことをやっておき、終焉を見つめ準備しておくことで、今をよりよく生きようという思いがあるようです。

    葬儀やお墓のこと、財産などの相続のことなど、自分のためだけでなく遺された人たちのためにもやっておくべきことがあります。

    弁護士として、相続問題の相談をよく受けますが、その中に「遺言」があります。(ちなみに、法律用語では通常「いごん」と読みます)

    遺言というと、映画やドラマの世界で資産家の遺言書が原因で殺人事件が起こったりする場面を思い浮かべる人もいるでしょうが、実は、普通の人でも必要となるものです。

    しかし、やはり人間は「自分の死のことなど考えたくない」、「まだいいだろう。もう何年かしたら考えよう」などと、つい後回しにしがちです。

    また、「うちの家族は仲がいいから遺言なんて必要ないよ」と考えている人もいるでしょう。

    ところが、経験上、仲のいい普通の家族でも、いざ相続となったときにもめることが多いのです。

    よく経験するのは、本人は兄弟姉妹間で争いたくないと思っていても、配偶者が「もらえるものはもらうべき。ウチだって苦しい」と言われ、泥沼の紛争に入ってゆくパターンです。

    お金よりも、家や土地が残された場合、その配分でもめるケースが多いですね。

    相続=争族という言葉もあるくらいです。

    そこで今回は、遺言を法的に解説します。

    【遺言の種類】
    遺言には、死期が迫っている、一般社会から隔離されているなど特別な場合の「特別方式」と、通常の場合の「普通方式」があります。

    普通方式には、さらに以下の3種類があります。

    〇「自筆証書遺言」…遺言者が遺言内容の全文、日付、氏名すべてを自分で記載して、捺印をするもの。

    〇「公正証書遺言」…公証人に作成してもらうもの。

    〇「秘密証書遺言」…遺言内容と氏名を自筆し、捺印した書面を封筒に入れ封印したものを公証人に証明してもらうもの。

    私たち弁護士が遺言書の作成を依頼された場合には、「公正証書遺言」の作成を薦めるのが通常です。

    遺言書の作成における弁護士の役割は、遺言者の意思を明確に遺言書に残し、かつ、死亡後の紛争を回避することです。

    公正証書遺言は、公証人が作成するので、証明力が高く、紛争になりにくいからです。

    でも、公正証書遺言では、余計な費用もかかるし、大事だ、ということもあるでしょう。

    あるいは、たびたび書き直したい、ということもあるでしょう。

    そんな時は、取り急ぎ「自筆証書遺言」を作成することになります。

    ここでは、自筆証書遺言について解説していきます。

    【自筆証書遺言の書き方】
    自筆証書遺言として認められるための要件は、「全て自分で書く」ということです。具体的には、①遺言の内容②日付③署名を自筆し、④捺印することです。

    ①「遺言の内容」
    必ず自筆でなければなりません。
    代筆は認められません。ワープロやパソコンのワードで作成した文章は無効となります。

    ②「日付」
    自筆で日付を書かなければなりません。「平成(西暦)〇〇年〇月〇日」と書きます。

    遺言書が複数存在する場合、日付が最終のものが最終意思となり、それより前の遺言書の矛盾する部分は取り消されることになります。

    ③「署名」
    氏名を自筆します。
    必ずしも戸籍上の本名である必要はなく、従来より使用していた雅号、屋号、芸名などの通称でもよいとされています。その場合、他人との混同を避けるため住所を記載するなどして同一性を確認できるようにしておく必要があります。
    万全を期すには、本名の氏と名を自筆で署名すれば安心でしょう。

    ④「捺印」
    使用する印章は実印である必要はありません。認印でもよいとされています。
    病床の人は、たとえば手の震えを抑えるために他人に介添えしてもらったり、他人に命じて押してもらってもよいとされています。

    【遺言書の検認】
    遺言者が亡くなった場合、遺言書の保管者(遺言者から遺言を預っている人)または、これを発見した相続人は、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。(民法第1004条1項 遺言書の検認)

    また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いの上、開封しなければならないことになっています。(民法第1004条3項)

    つまり、裁判所以外では開封してはいけないということです。もし開封してしまうと、5万円以下の過料を受けることがあります。(民法第1005 過料)

    遺言書の検認とは、有効か無効かを確定するものではなく、その外形を保全し、偽造や変造を防止し、遺言書の検証と証拠保全をするための手続き、と考えておけばよいでしょう。