労働法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 社労士事務所限定の勉強会開催

    2016年04月15日

    勉強会

     

    昨日は、私が主催する社労士事務所限定の労働法勉強会を開催しました。

    上の写真は以前に開催した際のものです。

    内容は、「能力不足による解雇」についての研究です。

    懇親会も盛り上がりました。

    能力不足による解雇は、とても難しい判断を求められますが、契約時点での工夫、解雇への段階的手続、により、解雇が有効とされる確率も上がると思います。

    むやみに解雇することはいけませんが、採用段階で想定された能力に達しず、指導しても向上せず、あるいは向上の意欲がないような場合には解雇もやむを得ないところでしょう。

    しかし、法的にはとても難しいところですので、やはり解雇前には専門家に相談した方がよいでしょう。

    次回勉強会は、6月を予定しています。

  • 違法に残業させると刑罰を受けます。

    2015年12月25日

    社員に違法な長時間労働をさせていた会社と総務部長が書類送検されました。

    今回は「労働基準法」について解説します。

    「JR京都伊勢丹で違法残業130時間 運営会社と総務部長を書類送検」(2015年12月18日 産経新聞)

    京都下労働基準監督署は、正社員だった男性に違法な長時間労働をさせたとして、京都市下京区の百貨店「ジェイアール京都伊勢丹」を運営するジェイアール西日本伊勢丹の総務部長の男性(51)と、法人としての同社を労働基準法違反の疑いで京都地検に書類送検しました。

    同労基署によると、2014(平成26)年7~12月、総務部の社員だった男性に労使協定で定めた時間外労働の限度時間(1ヵ月に60時間)を超えて、約84~130時間の時間外労働をさせたとしています。

    JR西日本伊勢丹は長時間労働を認め、「事実を真摯に受け止め、社員の労働時間管理に万全を期し、再発防止策に取り組む」としているということです。
    ◆「労働基準法」は、日本国憲法27条「労働権」の規定に基づいて、1947(昭和22)年に制定された法律で、「労働組合法」、「労働関係調整法」と併せて労働三法と呼ばれます。

    ◆労働者の労働契約や労働時間、休日、賃金、安全などの労働条件の最低基準について規定しているもので、労働者と使用者の双方が守るべき重要な法律です。

    ◆労働基準法上、原則として、会社は社員に対し、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはいけません。
    これを、「法定労働時間」といいます。(第32条)

    ◆法定労働時間を超えて社員を労働させた場合、会社は社員に対して「時間外労働」として割増賃金を支払わなければいけません。(第37条)

    ◆原則として、会社は社員に対し毎週に少なくとも1日は休日を与えなければなりません。
    これを、「法定休日」といいます。(第35条)

    ◆法定休日に社員を労働させた場合、会社は社員に対し「休日労働」として割増賃金を支払わなければいけません。

    ◆また、午後10時から午前5時までの間に社員を労働させた場合、会社は社員に対し「深夜労働」として割増賃金を支払わなければいけません。

    ◆残業代の割増率は以下のように規定されています。
    ①1ヵ月の合計が60時間までの時間外労働、及び、深夜労働については2割5分以上の率
    ②1ヵ月の合計が60時間を超えた時間外労働が行われた場合の時間外労働については5割以上の率(現状例外あり)
    ③休日労働については3割5分以上の率
    とされています。
    ④深夜労働については2割5分以上の率
    今回の報道では、「労使協定」で定めた時間外労働の限度時間を超えて、会社が社員に時間外労働をさせたとしています。
    この労使協定は第36条に規定されているもので、「36協定(さぶろくきょうてい)」と呼ばれます。

    ◆労働基準法第36条では、会社は、過半数組合または過半数代表者との書面による労使協定を締結し、かつ行政官庁にこれを届けることにより、その協定の定めに従い労働者に時間外休日労働をさせることができると規定しています。

    ◆届け出をしないで時間外労働をさせると、労働基準法違反で6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

    ◆時間外労働をさせて割増賃金(残業代)を支払わなかった場合も、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

    労働基準法は、とても厳しい法律で、労働基準法違反がある場合、刑罰が科されてしまうわけですね。

    経営者の方々は、今一度、就業規則や労使協定で定められた残業の限度時間と、実際の残業時間を確認した方がよいでしょう。

    そうしないと、思わぬところで、お縄につかなければならなくなってしまいます。

    「真に生産性を向上させる方法は、何を行うべきかを明らかにすることである。そして、行う必要のない仕事をやめることである」
    (ピーター・ドラッカー/オーストリア出身の経営学者・社会学者)
    未払い残業代に関する相談は、こちらから⇒ http://roudou-sos.jp/zangyou2/
    労働災害に関する相談は、こちらから⇒http://www.rousai-sos.jp/

  • 安全配慮義務を怠ると会社は損害賠償請求される!?

    2015年06月09日

    中華料理店の料理人が、重い鍋を振りすぎて体を壊したとして会社を訴えた訴訟の判決が出たようです。

    裁判所は、どのような判決を下したのでしょうか?

    「鍋振り続け脚の骨損傷…餃子の王将と男性が和解」(2015年6月5日 読売新聞)

    「重い中華鍋を立ったまま振らされ続け、脚の骨を損傷した」として、中華料理チェーン「餃子の王将」の大阪府内のフランチャイズ店で働いていた男性(40歳代)が運営会社に対し約3600万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁であり、運営会社が男性に400万円を支払う条件で和解が成立したようです。

    報道によると、男性は2009年7月から調理場スタッフとして週6日、1日約12時間勤務。
    1回に15~20人前の食材が入った中華鍋を振っていたところ、股関節に負担がかかり、痛みを訴えたが調理を続けさせられ、2011年1月に退職。
    その後、病院で「脚の付け根の骨の一部が壊死している」と診断され、人工股関節を入れたということです。

    男性は、「鍋の重さは食材を含め5キロ以上あり、過酷な業務で症状が悪化した。店には安全配慮義務違反があった」と主張。
    運営会社は、「業務との因果関係はない」と反論していたようです。

    なお、和解について運営会社は取材に応じず、フランチャイズ契約を結ぶ王将フードサービスは「コメントできない」としているということです。
    5キロ以上の中華鍋を1日に何度も振り続ける仕事を、体感的に想像するのは未経験者にとっては難しいですが、大変な重労働であることはわかります。
    しかし、男性が体を壊す前に会社も本人も、できることはなかったのでしょうか?

    今回の事案でポイントとなったのが「安全配慮義務違反」です。

    労働契約法では、使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならないとされています。

    この安全配慮義務に違反した結果、労働者に傷病が発生した場合には、会社は、債務不履行責任として損害賠償義務を負担します。

    その損害賠償とは、今回の例で言うと、治療費、入院看護費用、入院雑費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料、後遺症に基づく慰謝料、逸失利益、などです。

    その合計が、400万円という和解金となった、ということですね。

    仕事上、労働者が怪我をしたり、病気になった場合には、労災保険給付がされることがありますが、これ以外にも、会社に前記のような安全配慮義務違反があった場合には、別途会社は損害賠償責任を負担する可能性があります。

    したがって、会社は、常に、労働者の安全に配慮しなければならない、ということです。

    餃子の王将も、本件を契機として、再発防止策を社内で策定しているのではないでしょうか。

    問題が起こった時は、その問題に対処すると同時に、再発防止策を検討、策定することがとても重要です。

    労働問題の相談は、こちら。
    http://roudou-sos.jp/

  • 給料不払いの代償~刑事訴追

    2015年02月14日

    ことわざに、「ただより高いものはない」というものがあります。

    通常は、ただで物をもらったら、そのお返しでかえってお金を使うことになるとか、ただの裏側には有利になるように取り計らってほしいという相手の打算、意図があるから、よろこんでばかりいると面倒なことになる、というような意味で使われますね。

    ところが今回、ただで社員に仕事させていた会社の社長が、とんでもない高い代償を払うはめになってしまったという事件が起きたようです。
    一体、どんな代償を払ったのでしょうか?

    「8人が3ヵ月タダ働き…賃金不払い容疑で建設業者書類送検」(2015年2月10日 産経新聞)

    札幌中央労働基準監督署は、昨年2月に事実上倒産した札幌市北区の建設業の社長(56)と法人としての同社を、最低賃金法違反(賃金不払い)の疑いで書類送検しました。

    社長の男は、本社と関東営業所(埼玉県)に勤務する従業員計8人に平成25年12月から26年2月まで3ヵ月分の給料を出さず、北海道や埼玉県の最低賃金に当たる計約260万円を支払わなかったようです。

    昨年1月、関東営業所の従業員が川越労働基準監督署に相談して発覚したようですが、社長は「経営が悪化し、支払えなかった」と供述しているということです。
    給料の不払いについては以前、解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒「給料の不払いが犯罪になる!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1395

    「金がないから払えない」とは、一見もっともな理屈にも思えますが、法律の前ではそんなことは通用しません。

    社員への給料不払いは、「最低賃金法」という法律に抵触します。

    第4条(最低賃金の効力)
    1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
    第34条(監督機関に対する申告)
    1.労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

    簡単にまとめると、以下のようになります。

    〇社長は、従業員に対して国で決められた「最低賃金」よりも多く給料を支払わなければいけない。
    〇賃金が支払われなければ、労働者は労働基準監督署に訴えることができる。
    〇違反した場合は、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金。

    ところで、厚生労働省が公表した統計データによれば、平成23年4月から平成24年3月までの間に、賃金不払いの是正を指導され割増賃金を100万円以上支払った企業は1312社で、支払われた割増賃金の合計額は、じつに145億9957万円にものぼります。

    また、今回のように社員の労働基準監督署への相談や内部告発は年々増加していて、2012年の「労働基準監督年報」によれば、受理した件数で最も多いのが賃金未払いに関するもので、全体の85.6%にも及んでいます。

    さらに、近年では会社と社員の間で、残業代の未払いに関する労働トラブルも増えています。

    「労働基準法」で定められた時間外労働に対しては、当然、会社は社員に残業代を支払わなければいけません。

    もちろん、社員などの労働者は、残業代をもらえず、ただ働きして泣き寝入りすることはありませんし、社長や経営陣は、残業代の未払いは違法であることを理解しなければいけません。

    裁判に発展すれば、未払い分と同等の「付加金」も追加され、2倍の金額を支払わなければならなくなる可能性があります。
    さらには、今回のようにメディアで全国に社名が報道されたり、取引先との信用、信頼は地に落ちてしまうでしょう。

    労働トラブルは、経営者にとっては不名誉なことですし、会社にとっては大損害になりかねません。

    昔の人は本当にいいことを言ったものです。
    会社の経営についても、「ただより高いものはない」のかもしれません。

    経営者の方には法令順守の徹底と、社員を守るという責任を今一度、自問自答して確認していただきたいと思います。
    「何を捨てるかで誇りが問われ、何を守るかで愛情が問われる」
    (スティーブ・ジョブズ/アメリカの実業家。アップル社の共同創立者のひとり)

    労働問題に関する相談は、こちらから⇒ http://roudou-sos.jp/

  • 社労士限定「労働法における企業側反論モデル」勉強会開催

    2015年02月12日

    勉強会

     

    2015年2月10日に、社会保険労務士限定の労働法勉強会を開催しました。

    内容は、「労働法分野における企業側反論モデル」です。

    労働問題は多くありますが、中には、反論のパターンが決まってくるものがあります。

    それを知っていれば、社労士が企業から相談を受けた時に、適切なアドバイスができます。

    そこで、企業側反論モデルに関する勉強会を開催しました。

    活発な意見交換が行われ、有意義な勉強会となりました。

    また、やります!

  • 「問題社員対応セミナ-」開催

    2015年02月02日

    問題社員

     

    今日は、経営者向けの労働法セミナーでした。

    タイトルは、「問題社員対応で間違えやすいポイント」です。

    問題社員対応の各種手段、証拠の作り方、などをお話させていただきました。

    まずは、しっかりとした就業規則を作って、そのとおり運用することが大切ですね。

  • セクハラの賠償金が1300万円!?

    2015年01月22日

    昨年11月、あるセクハラ裁判で異例の高額賠償金による和解が成立していたことがわかりました。

    「“数字未達なら彼女になれ” アデランス、社内セクハラ1300万円で和解」(2015年1月20日 産経新聞)

    かつら製造・販売の最大手「アデランス」の兵庫県内の店舗に勤務していた元従業員の女性が、大阪市内の店舗の店長だった男性従業員から繰り返しセクハラを受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、退職を余儀なくされたとして同社に計約2700万円の損害賠償を求めた訴訟で、同社が女性に解決金1300万円を支払うなどの内容で2014年11月28日、和解していたことがわかりました。

    報道によると、女性が兵庫県内で勤務していた2008年3月、大阪市内の店舗の店長だった男性従業員が指導目的で来店。
    「数字を達成できなかったら彼女になるか、研修もしくは転勤だ」と脅すなどし、無理やりキスをしようとしたり、体を触ったりするセクハラを繰り返したようです。

    女性が被害届を出そうとしたところ、同社の幹部から止められ精神的に不安定になり休職し、2010年1月にはPTSDと診断。
    同社は、いったん女性を特別休暇扱いとし、その後に給与の支払いを停止。女性は2011年9月に退職したということです。

    和解の内容は、会社が女性に和解金1300万円を支払う他、①同社は解決金の半額650万円について男性従業員に負担を求める、②男性従業員の在職期間中、原告が居住する京阪神地域を勤務地や出張先にしないよう努める、などとなっているようです。

    なお、このセクハラについては地元の労働基準監督署が労災認定し、休業補償給付などの支給を決定しているとのことです。
    会社がセクハラをした役員や社員を処分するのは当然ですが、セクハラに対する対応を間違ってしまうと、大変なことになってしまいます。
    では、どのような対応をとればいいのでしょうか?

    「男女雇用機会均等法」には、事業主がセクハラ対策として講ずるべき措置等が定められています。
    主なものは以下の通りです。

    〇事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に対してその方針を周知・啓発すること。
    〇相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること。
    〇相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、適正に対処すること。
    〇相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

    また、セクハラとなる言動には以下のようなものがあげられます。

    〇性的な事実関係を尋ねること
    〇性的な内容の情報を意図的に流布すること
    〇性的な冗談やからかい
    〇食事・デートなどへの執拗な誘い
    〇個人的な性的体験談を話すこと
    〇性的な関係を強要すること
    〇必要なく身体に触ること
    〇わいせつな図画(ヌードポスターなど)を配布、掲示すること
    〇強制わいせつ行為、強姦等

    事業者が上記のような講ずべき措置を怠った場合は、厚生労働大臣の行政指導(男女雇用機会均等法29条)の対象となるほか、勧告に従わなかった場合の企業名の公表(男女雇用機会均等法30条)、都道府県労働局長による紛争解決の援助の対象となる(男女雇用機会均等法16条)とされています。

    また、民事訴訟になってしまうと、被害者である社員は今回のように会社に対して責任の追及と賠償請求をすることができます。

    ちなみに、被害者の訴えによりセクハラが刑事事件になれば、行為者(加害者)は、傷害罪(刑法第204条)、強要罪(刑法第223条)、名誉棄損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)、場合によっては、暴行罪や強制わいせつ罪、強姦罪などに問われる可能性があります。

    さて、これらを踏まえ、社内でセクハラ問題があったときは、まず事業主の方は以下の3点について検討することが重要です
    ①職場において行われたものか
    ②労働者(被害者)の意に反するものか
    ③行われた言動が性的なものかどうか

    ただし、内容が内容だけに、慎重に事実確認を行う必要があります。

    まずは、被害者から事情聴取をすることになりますが、女性が被害者の場合には、女性上司が事情聴取するなど、精神的な配慮が必要となります。

    その後、加害者とされる社員から事情聴取をします。

    ここで事実関係が十分に認定できない場合には、他の社員などへの事情聴取となりますが、この事情聴取が原因で社内で情報が拡散し、被害者の精神的被害が拡大してしまうおそれがありますので、第三者への事情聴取については慎重な判断が必要です。

    そして、セクハラがあったことが確認できた時は、被害者の気持ちに配慮した人事的な措置を行うとともに、加害者に対する懲戒処分を検討することになります。

    あわせて、社内での再発防止措置を講ずる必要もあるでしょう。

    対応を間違うと、使用者責任で損害賠償金を負担しなければいけなくなります。

    従業員がやった行為なのに、会社が責任を問われるわけですね。
    「現場で起こったことだから」、「現場に任せていた」、は通用しないのです。

    日本はアメリカのような訴訟社会ではないですが、今後は労働問題に関する紛争が増え、より多様化・複雑化していく可能性があります。
    また、損害賠償金も高額化していく可能性もあります。

    今まで築いてきた会社の信頼や信用、また高額賠償金を失うことのないように、経営者の方は社内体制を整え、備えておく必要があるでしょう。

    労働問題に関する相談は、こちらから⇒ http://roudou-sos.jp/

     

  • 減給は自由にできません【労働】

    2014年12月28日

    社員の給料最初、会社と社員の合意で定められます。

    その後は、会社の給与規定などに基づき変動してゆくのが通常です。

    社員の給料が上がる時にはトラブルは発生しませんが、社員の給料を下げようとした時は、労使トラブルが勃発します。

    会社が、社員の給料を下げたいと考える理由としては、会社の経営状況による場合や、社員自身が原因である場合など様々です。

    今回は、社員の給料を下げる場面として、

    ①経営難を理由として給料を下げる場合
    ②人事考課・人事異動の結果として給料が下がる場合
    ③懲戒処分として減給をする場合

    に分けて説明したいと思います。

    ①経営難を理由として給料を下げる場合

    経営難を理由として社員全体の給料を下げる場合には、社員の同意なしには行えないのが原則です。

    労働条件を社員に不利益に変更するには、原則として社員の同意が必要となるためです。

    もっとも、会社が就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、変更後の就業規則を社員に周知させ、かつ、その内容が下記要素から考えて合理的である場合には許されます。

    (1)社員の受ける不利益の程度
    (2)労働条件の変更の必要性
    (3)変更後の就業規則の内容の相当性
    (4)労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情

    会社の存続自体が危ぶまれたり、経営危機による雇用調整が予想されるなどといった状況にあるときは、労働条件の変更による人件費抑制の必要性が極度に高い上、労働者の被る不利益という観点からみても、失職したときのことを思えばなお受忍すべきものと判断されます。

    そのような場合には、多数の労働者が反対している場合であっても、就業規則の変更により給料を下げることが許されるといえます。

    ②人事考課・人事異動の結果として給料が下がる場合

    まず、年度ごとの人事考課等の結果として給料の額が減額することについては、あくまで賃金の計算方法に過ぎず、人事考課制度の枠内で行うのであれば、裁量権の濫用に当たらない限りは問題なく行うことができます。

    次に、人事権の行使として、成績不振を理由として、部長が社員に降格する場合や、部長が係長に下がる場合など、人事権に基づく役職や職位の降格の場合には、雇用契約の上で使用者の当然の権限として認められるものであり、人事権の濫用にあたらない限り問題なく行うことができるといえます。
    ③懲戒処分として給料を下げる場合

    まず、懲戒処分として減給をする場合には、懲戒処分の前提として、次の要件が必要です。

    (1)就業規則に懲戒処分の規定があること
    (2)就業規則が社員に周知されていること
    (3)就業規則で定められる懲戒事由に該当する行為があったこと
    (4)当該処分が労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であること

    特に、減給は、労働者の生活への影響が大きいことから、十分な理由が必要となると考えるべきでしょう。

    さらに、減給処分が有効であったとしても、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えて減給をすることは法律上禁止されています。

    会社の側としては、もっと下げられるのではないかと考えられている方も多いと思いますので注意をしなければなりません。

    以上、社員の給料を下げる場面として3つに分けて説明をしてきました。

    どちらにしても、給料を下げることは、社員の生活に与える影響が大きく、後に紛争となるケースも少なくありませんので、専門家と相談をしながら慎重にすすめるとよいでしょう。

    労働相談は、こちらから。
    http://roudou-sos.jp/

  • 社労士限定の勉強会を開催します。

    2014年12月22日

    2015年1月16日(金)18時~19時30分に、社労士限定の勉強会を開催します。

    タイトルは、

    「固定残業代を極める~弁護士の解説セミナー」

    です。

    近時、固定残業代制度を採用する企業が急速に増えています。

    企業側としては、見た目の給与を高額にしつつ、時間外手当の増大を抑制できるというメリットがあります。

    労働者としても、能力のある労働者は効率よく仕事をして残業なしに帰っても、能力が低く残業をせざるを得ない労働者と同額の賃金を得ることができる、というメリットがあります。

    しかし、近時、裁判例では、この固定残業代制度が適用される要件を厳しく判断する判例が相次いでおり、

    また、最高裁平成24年3月8日判決のテックジャパン事件で補足意見が出されたこともあり、
    専門家の間でも有効性についての議論が分かれているところです。

    そこで、固定残業代制に関する判例を総ざらいするとともに、これが有効となるような要件について、勉強会をしたいと思います。

    当事務所は、社労士の先生方のリーガルスキルの向上に寄与し、労使トラブルを撲滅することによって、日本経済に貢献したいと考えています!奮ってご参加ください。

    定員20名でしたが、もう26名のお申し込みをいただいたので、定員30名に増員しました。

    お申し込みはお早めに。

    http://myhoumu.jp/seminar/roudou08.html

  • 労働セミナー2015年1月21日開催です。

    2014年12月20日

    IMG_0604

    【会社経営者の方へ】
    近年、社員が起こした労働トラブルによって、
    会社(経営者)が大きな損害をこうむるケースが増えています。

    残業代の請求、解雇トラブル、機密情報の流出などなど。

    そのなかでも、残業代請求は、近時増加しており、
    賃金体系をどうするか、労働時間管理をどうするか、
    そして、残業代請求に対してどう対処するか、
    などについて企業は頭を悩ましています。

    企業は労働時間を管理する義務があり、
    労働時間の把握を怠ると、裁判上不利に働きます。

    そこで、労働時間管理と残業代問題について、
    裁判例を分析しつつ、適切な制度設計を解説します。

    適切に対処しなければ、経済的な損失だけではなく、
    他の優秀な社員や今まで築き上げた
    社会的な信用まで失ってしまうかもしれません。

    労働時間の把握を怠ったために、
    何千万もの出費を余儀なくされるケースもあります。

    そこで、「労働時間管理と残業代問題」について
    弁護士解説セミナーを行います。

    【1月21日(水)開催 定員20名】

    本セミナーで労働時間管理、残業代問題、
    制度設計の知識を身につけておきましょう。

    労働時間管理と残業代問題 弁護士解説セミナー
    ⇒ http://myhoumu.jp/seminar/roudou07.html