学校の部活中に起きた重傷事故で2500万円損害賠償 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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学校の部活中に起きた重傷事故で2500万円損害賠償

2018年03月01日

学校事故で重傷を負ってしまう子供が後を絶ちません。
まさかの時、子供や親たちは、一体どうすればいいのでしょうか?

今回は、部活中の事故における損害賠償について解説します。

「部活中けがに2500万円、福島 喜多方市が賠償へ」(2018年2月27日 共同通信)

2015(平成27)年3月、福島県喜多方市の市立中学校で陸上部の部活動中、当時2年生の女子生徒2人が目にケガを負った事故について、市が損害賠償すると発表。
3月の市議会に議案を提出するとしている。

事故はゴムチューブを使用した筋力トレーニング中に発生した。
女子生徒2人がゴムチューブの片側を握って固定し、もう片方は2年生の男子部員が腰に巻いたまま前に走るトレーニングをしていたところ、伸びたゴムチューブが途中で切れ、勢いよく戻ってきた部分が女子生徒2人の顔面に当たった。
2人は視力が低下したり、視野が狭くなるなどの障害を負ったという。

市は、治療を終えた1人に2500万円、もう1人については治療を終えて損害額が確定したら賠償するとしている。

ゴムチューブは、市が2004(平成16)年に購入したもの。
事故については劣化が原因として、器具の管理責任を認めた。

報道内容からでは詳細はわかりませんが、喜多方市と被害者の間で示談が成立したということだと思います。

通常、学校の管理下(授業中、部活動中、課外授業中、休憩時間、始業前、放課後、通学中)における子供の事故では、学校が加入している日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われます。

ケガが軽い場合は、この給付金で賄うことができますが、今回のケースのように後遺障害が残るような重傷の場合、足りない部分について被害者本人や両親は損害賠償請求をすることができるわけです。

相手は、民間の学校の場合は教員個人や学校、国公立校の場合は国や地方自治体になります。

しかし、ここで和解に至らなかった場合は、被害者本人や両親は民事で訴訟を提起して裁判に進むことになります。

その際、まず争点になるのは担当教員の「注意義務違反」や「安全配慮義務違反」です。
これらの違反があったと認められれば、教員個人は不法行為に基づく損害賠償をしなければいけません。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

同時に、担当教員が所属する学校には、使用者として使用者責任に基づく損害賠償責任が発生します。

「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

さらに、学校は生徒に対して安全配慮義務を負担していたと考えられることから、債務不履行に基づく損害賠償責任も発生する可能性もあります。

今回のように国公立の学校での事故では、国や地方自治体に対して損害賠償請求をすることができます。

「国家賠償法」
第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

部活動で器具を使用する場合には、器具自体の危険性や器具の劣化等により生徒の身体に危険が生じないように器具の安全性を確認するとともに、使用方法も十分に指導する注意義務があるといえるでしょう。

みらい総合法律事務所では、学校事故の被害者をサポートしています。

被害者とそのご家族にとって、法律の問題は難しく、示談交渉を進めるにしても簡単にはいかないものです。

ご相談はこちらから⇒「弁護士による学校事故SOS