“隠れ倒産”が急増中! 経営者が取るべき選択とは? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
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“隠れ倒産”が急増中! 経営者が取るべき選択とは?

2014年05月31日

マスメディアでは、アベノミクスによる景気回復が盛んに伝えられています。

実際、そうした流れを背景に、企業の倒産件数は減少傾向にあり、東京商工リサーチが発表したデータによれば、2013(平成25)年の全国の企業倒産件数は1万855件で、前年比10.46%のマイナス。5年連続で前年を下回っています。

また、負債総額も約2兆7800億円で前年比27.44%のマイナスとなっていて、数字上では景気回復が見てとれます。

一方、企業に関係する数字で、この10年で急激に増えているものがあります。

企業の休廃業数です。

「企業の休廃業:中小の“隠れ倒産”10年で倍増」(2014年5月26日 毎日新聞)

報道によりますと、2013年の企業の休廃業(解散も含む)は2万8943件で、この10年で2倍に急増しているとのことです(東京商工リサーチ調べ)。

「隠れ倒産」とは、企業が債務超過などで倒産に至る前に余力を残しながら事業を断念し、自主的に会社を整理することです。

ではなぜ、隠れ倒産と呼ばれる企業の休廃業が急増しているのでしょうか?

主な原因には、①後継者不在問題 ②経営の先行き不安、があります。

①後継者不在問題
近年、特に中小企業の後継者難は大きな問題となっています。国内のおよそ2/3、65%以上の会社が後継者不在問題に直面しているというデータがあります。

後継者不在の原因はさまざまあります。後継者となるご子息がいないケース、ご子息はいても既にほかの仕事に就いている、もしくは起業しているケース、時代が変わり斜陽産業を子供に引き継がせることを断念しているケースなどです。

②経営の先行き不安
業界再編の波にさらされている、人口減少などにより成長が見込めないなど経営の先行き不安を感じている経営者が増えています。

また、中小企業の資金繰りを支援するための中小企業金融円滑化法が2013年3月で終了したことにより、今後、金融機関が融資姿勢を厳格化していけば、債務返済と資金繰りが一気に苦しくなってしまうという問題を抱える経営者もいます。

そうした不安を背景に、事業の先行きを見通せない中小企業の経営者が、従業員の将来を考え、また取引先や金融機関に迷惑を掛けないうちに事業を整理しようという意識が働き会社を休廃業していると考えられます。

好景気だといっても、当然すべての企業に恩恵があるわけではありません。

実際、業績や財務面が依然として改善されないままの企業は今後、休廃業を含め何らかの処置を必要とするタイミングが訪れると考えられます。

経営者、とくに創業者の中には「人生=会社」という方もいます。自分が創業し、苦労してここまで育てた会社を手放す、廃業することは、我が子を手放すような、自分の人生が終わりのような、それほどに思いつめている方もいます。

しかし、資金繰りの苦しみは、体験した人でなければわかりません。大きなストレスから夜眠れないのは当たり前で、体を壊してしまう方もいます。

以前、私の依頼者だったある会社の社長さんが破産手続きの準備中、自殺をしてしまったことがありました。

私は大変なショックを受け、助けられなかったことを後悔しました。

私のところには、会社の再生や廃業の相談に来られる経営者の方が多くいらっしゃいます。

そこで、まずお話しするのは、「目的」は何かということです。

会社は本来、手段であって目的ではないはずです。

経営を通して、自己実現したい、家族や社員を幸せにしたい、社会に貢献したい、お金儲けがしたいなど、目的は人それぞれですが、まずはその目的をご自身で見つめ直していただき、それに合わせた最適な方策をいっしょに考えていきます。

もし会社の廃業という道を選ばれる場合、次のような手順で進めていきます。

1.資産と負債の洗い出し
簿価ではなく清算価値として、自社が今どういう状況にあるのかをしっかりと把握する必要があります。
債務超過になっていないか? 超過金額はどれくらいか? 債務の保証人の状況はどうなっているか? 担保に入っている不動産や在庫などの状況は? など、棚卸しによる現状の再確認がスタートになります。
その上で、お金の流れやビジネスモデルを見極め、どのタイミングで事業をストップするのがベストかなど、スケジュールを立てていきます。

2.従業員の理解を得る
気をつけなければならないのが「人」の部分です。経営者が、きちんと従業員に説明を行い、理解を得ながら進めていくことが重要です。
従業員の整理などは下手をすると労働問題に発展しかねません。ここをおろそかにしてしまったために従業員が離反し、態度を硬化させたことで円滑に廃業を進められなかったケースもあります。

3.経営者保証を外す交渉を試みる
債務超過の問題は大きなネックになります。現実問題、多くの中小企業は債務が重いために廃業したくてもできない状況にあります。
中小企業の債務には多くの場合、経営者の連帯保証がついているからです。
しかし、2013年12月に公表された「経営者保証に関するガイドライン」が、2014年2月から適用開始となりました。
これを受けて、金融機関も徐々に態度を変えてきており、業績が好調な企業に対しては経営者保証を抜く、という対応をし始めています。
経営者として長期的に廃業の可能性を考えているなら、自社の状況を見極めながら、ベストのタイミングで金融機関との経営者保証を外す交渉を試みる必要があるでしょう。

無理なく円満に廃業するためには、時間をかけて、しっかりと準備をしていくことが大切です。

会社が傾き始めてからでは遅いのです。業績が堅調なときこそ、将来についてしっかりと考え、準備を進めていくべきです。

経営者の方の相談に乗っていて、いつも感じるのは、「もっと早く相談してくれていれば…」という思いです。

これは、廃業の場合だけでなく、事業承継や事業売却の場合にも同じことが言えます。

決して積極的に廃業を勧めるわけではありませんが、次世代に負債を背負わせてしまうくらいなら、必要に応じて自分の代で終わりにするという決断をするのも必要なことだと思います。

新たな人生を始めるためにも、経営者の方は、ひとりで悩まず、手遅れになる前に勇気を持って、早めの一歩を踏み出して相談していただきたいと思います。

詳しくはこちら→「弁護士による会社再生・廃業・破産SOS」
         http://www.sai-sei.biz/