弁護士 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 17
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • アイドルたちが書類送検!路上ライブは犯罪!?

    2014年10月13日

    1957年に出版された、アメリカ人作家ジャック・ケルアックの小説『路上』(原題:On the Road)は、ヒッピーたちから熱狂的に支持され、音楽や文学など、いわゆるカウンターカルチャーに大きな影響を与えたといわれています。

    主人公たちがアメリカ大陸を自由に放浪する様子は、当時の若者たちのあこがれでもあったのでしょう。

    路上が若者文化の発信場所のひとつなのは古今東西変わらず、日本でも1980年代初頭、原宿の歩行者天国(ホコ天)で「竹の子族」と呼ばれる若者たちが派手な衣装に身を包みステップを踏んで踊ることが大きなブームになりました。

    現代の日本でも、駅前や公園などで路上パフォーマンスをする若者たちがいますね。
    売れないアーティストやアイドルたちの中には、お金をかけずに自分たちのパフォーマンスを見てもらう手段ということで、路上ライブを積極的に行う人たちもいます。

    ところで先日、そんな路上ライブで10人が書類送検されるという事件が起きました。

    一体、彼らはどんな犯罪行為をしてしまったのでしょうか?

    「新宿駅前で無許可ライブ容疑、アイドルら10人書類送検」(2014年10月8日 朝日新聞デジタル)

    警視庁新宿署は8日、新宿駅前の路上でライブを無許可で行ったとして、関西を拠点とする女性アイドルグループの18歳~26歳のメンバー7人と、ものまねタレントの男2人、グループの責任者の男(24)の計10人を道路交通法違反(道路の不正使用)の疑いで書類送検しました。

    報道によると、このアイドルグループはこれまでにも9回、無許可でライブを開いて客を集め、CDを販売するなどして道路を不正に使用した疑いがあり、新宿署はライブの度に注意し、グループは2度と行わないとする誓約書を毎回書いていたとしています。

    今年に入り、新宿駅周辺での路上ライブに関する苦情が545件寄せられていることから、同署は取り締まりを強化したようです。
    さて、道路と交通に関する法律に「道路交通法」があります。

    1960年に施行された同法は、第1条に次のように規定しています。

    「道路交通法」
    第1条(目的)
    この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。
    今回の違反容疑は、道路の不正使用です。条文を見てみましょう。

    第77条(道路の使用の許可)
    1.次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長の許可を受けなければならない。
    警察署長の許可が必要な行為には以下のようなものがあります。

    〇道路での工事や作業
    〇道路での石碑や銅像、広告などの設置
    〇道路での露店や屋台などの出店
    〇一般交通に著しい影響を及ぼすような使用行為(祭礼行事、ロケーシヨン等)
    〇道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為

    これらに違反した者は、3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。

    また、各都道府県には「道路交通規則」というものがあります。
    東京都の道路交通規則にも許可が必要な行為が細かく定められています。

    〇祭礼行事、記念行事、式典、競技会、仮装行列、パレード、街頭行進など
    〇旗、のぼり、看板、あんどんなどを持って楽器を鳴らし、又は特異な装いをして、広告又は宣伝をすること
    〇車両等に広告又は宣伝のため著しく人目をひくように、装飾その他の装いをして通行すること
    〇ロケーション、撮影会その他これらに類する行為
    〇拡声器、ラジオ、テレビ、映写機等を備え付けた車両等により、放送又は映写をすること
    〇演説、演芸、奏楽、放送、映写その他の方法により、道路に人寄せをすること
    〇消防、水防、避難、救護その他の訓練を行なうこと
    〇交通の頻繁な道路で寄附を募集し、若しくは署名を求め、又は物を販売若しくは交付すること
    〇ロボットの移動を伴う実証実験又は人の移動の用に供するロボットの実証実験をすること

    路上ライブやパフォーマンスは、許可を取っていなければ犯罪になる可能性があるということです。

    ちなみに以前、道路でやってはいけない行為について解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒「走行中の車からポイ捨てすると犯罪!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1323

    若さと、その情熱から自己表現をしたい気持ちはよくわかります。

    警察も、そのためにいきなり逮捕するのではなく、9回も注意し、反省を促してきていました。

    日本は法治国家です。

    売れるようになりたい気持ちはわかりますが、あくまで法律の範囲内で工夫し、努力をしていかなければなりません。

  • 謝る人の2つのタイプ

    2014年10月13日

    人に迷惑をかけた時、損害を与えてしまった時は、その相手に謝る必要があります。

    しかし、謝ることが得意な人、進んでやりたいという人はあまりいないでしょう。

    謝ることは気持ちの良いものではありませんし、極度の緊張を迫られます。

    また、謝罪には常に相手がおり、その人が許してくれるかどうかはわかりません。

    最近、社会的に責任ある立場の人が、いわゆる「謝罪会見」で頭を下げる光景をよく見ます。

    会見を行うことによって、世間の怒りが緩和される成功例もたまにありますが、会見時の言動で余計に反感を買うことも多いようです。

    謝罪が失敗する理由、良い謝罪の仕方を考える際、まず「謝る」ということがどのような行為なのかということから考えなくてはなりません。

    人が謝る理由には、2つのタイプがあります。

    まず一つは、「謝らないと気がすまないから謝る」というタイプです。

    「謝りたい」という気持ちは、その人の誠実さを示しているようにも見えます。

    しかし、このタイプの謝り方は、相手が何について怒っているのか、ということを度外視し、自己満足の謝り方になりやすいという特徴があります。

    よく、深く頭を下げて謝っても相手が許してくれないとき、「ここまで謝ってるのになんだ!」「じゃあどうしろと言うんだ!」と「逆ギレ」する人がいます。言うまでもなく、こういった態度は相手の気持ちを逆なでします。

    最近の謝罪会見でも、席上で自分の感情を爆発させて謝罪しながら、記者から厳しい追求を受けると態度を変え「あなたにはわからないでしょうね」と言い放った方がいました。会見が逆効果になってしまう事例には、このパターンが多いような気がします。

    謝罪のもうひとつのタイプは、相手の傷付いた心を癒すため、相手の精神的なバランスを取り、心の不全感を補完するために謝るタイプです。

    私は弁護士として、交通事故の損害賠償に関する業務を行っています。

    交通事故の被害者の多くは、道を歩いていたところ、いきなり車にはねられて大怪我をしたり、大切な人を失ったりといった、不条理極まりない損害を受けています。精神的なショックも相当なものです。

    被害そのものは取り返しのつかないものです。しかし、交通事故の被害者の気持ちは、加害者が直接謝ったことで変わります。そして、いいかげんに謝った場合、火に油を注ぐことになります。

    被害が大きい場合は、一度謝っただけでは許してもらえないことがほとんどです。怒鳴られたり、追い返されたりすることもあります。

    ここで、上の1つめのタイプの謝り方なら、「俺が土下座すればいいのだろう」と謝罪に伺い、その場で怒鳴りつけられるようなことがあれば「ここまで謝っているのに」となるでしょう。

    しかし、相手の気持ちを慰謝することが目的で謝っている人は、一度や二度門前払いされても、相手の気持ちが癒されるまで何度でも謝罪するはずです。

    謝罪を繰り返すうち、次第に被害者の気持ちには変化が生じます。

    もし、誰かに謝らなくてはならない場面に直面した場合、自分本位の謝り方をしていないか、相手の気持ちになって考えられているかを、常に自分に問うべきですね。

    その姿勢が謝罪の態度に表れることで、被害者の心は少しずつ癒され、精神のバランスが回復して、許す気持ちが芽生えるのです。

     

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    http://www.mag2.com/m/0000143169.html

  • 会社で降格人事が認められる場合とは?

    2014年10月04日

    最近では、「出世したくない」と考える若いビジネスパーソンが増えているという話を聞きます。

    ライフスタイルや価値観の変化にともなって、会社での出世への考え方も多様化しているのでしょう。

    一方、大手企業の中には、管理職の年功序列の賃金制度を廃止する動きも出始めています。
    時代の大きな転換期である今、企業側も変化の真っ只中です。

    さて今回は、従業員の降格に関する相談にお答えします。

    Q)私は現在、中小企業の製造業の会社で取締役をしています。営業部門の部長職で、ことあるごとに私にかみついてくる従業員がいます。次の人事異動で職能資格・等級を引き下げ、降格させようと考えているのですが可能でしょうか?

    A)降格するについて、就業規則等労働契約上の明確な根拠を必要とします。また、著しく不合理な評価によってする場合には、人事権の濫用になる場合があります。

    「降格」には、3種類があります。

    「懲戒処分としての降格」「職位や役職を引き下げる降格(昇進の反対)」「職能資格制度上の資格・等級等を引き下げる降格(昇格の反対)」です。

    懲戒処分としての降格の場合は、就業規則に規定された降格の理由に該当する相当な理由が必要です。
    しかし、「労働契約法」第15条により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とされます。

    今回のケースでは、懲罰的な懲戒処分ではないので、次に人事異動としての降格の場合を考えてみます。

    終身雇用を前提に雇用した場合、原則として、会社は従業員に対して「人事権」を持っているため雇用後は、さまざまな経験させた上で、それぞれの能力に応じた職務に就かせることが予定されています。
    つまり、雇用した従業員をどのような職務につけるかについては会社が権限を持ち、会社は自由に降格をすることができるのです。

    ただし、その場合でも降格させることが社会通念上著しく妥当性を欠く場合には、会社が降格する権限を濫用して行使したとして、降格は違法となってしまいます。
    【降格の適法性の判断基準とは】
    従業員の役職を降格させる場合の適法性の判断基準を、次の3つのケースで考えてみます。

    ① 懲戒処分としての降格
    前述したように、降格をするには就業規則に規定された降格の理由に該当する場合であって、降格することが相当であることが必要です。

    労働契約法では、以下のように定義されています。

    「労働契約法」
    第15条(懲戒)
    使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
    なお、懲戒処分での降格と判断されると、人事異動としての降格よりも適法性の判断が厳しくなるので、裁判になった場合、当該降格が懲戒処分としてなされたものであるか否かが争われることが多くあります。
    ② 人事異動としての降格
    終身雇用を前提とし、能力に応じた職務に就かせることが予定されている従業員の場合、会社は従業員をどのような職務につけるかの権限を持つため、原則として、会社は自由に降格をすることができます。

    しかし、降格とすることが社会通念上著しく妥当性を欠く場合には、会社が降格する権限を濫用して行使したとし、降格が違法となってしまいます。

    社会通念上著しく妥当性を欠くか否かについては、使用者側の業務上・組織上の必要性の有無、およびその程度、能力・適性の欠如等の労働者側における帰責性の性質その程度、当該企業における降格の運用状況等の事情を総合考慮して判断されます。
    ③ 職能資格を下げる降格
    職能資格制度とは、従業員の技能・経験の積み重ねによって得た職務遂行能力を資格化して給与を決める制度です。

    職能資格制度では、従業員が会社の中で得た技能・経験の積み重ねによって上昇していくことが予定されているため、職務が変わっても資格は変わらず、給与が減ることは原則ありません。

    したがって、従業員の合意を得ずに職能資格を下げるには、就業規則で職能資格を下げることがあると定められているなど、労働契約上の明確な根拠が必要となります。

    しかし、労働契約上の明確な根拠がある場合であっても、降格が著しく不合理な評価によるものであり、社員に著しく大きな不利益となる場合には、権限の濫用として降格が無効となります。
    さて、最後に判例を見てみましょう。

    【判例】
    「医療法人財団東京厚生会事件」(東京地判 平9.11.18 労判728-36)
    勤務表の紛失等を理由として病院で行われた看護師長から平看護師への2段階の降格について、記録の紛失は一過性のものであり、管理職としての適性能力を否定するものとはいえないこと、近年この病院では降格がされたことが全くなかったこと、勤務表を紛失したことによって病院に損害が生じていないこと、などから降格を無効とした。
    「近鉄百貨店事件」(大阪地判 平11.9.20 労判778-73)
    勤務態度が悪いことなどを理由とした百貨店の部長待遇職から課長待遇職への降格について、裁判所は、降格によって給与が月に4万8000円も減ってしまったこと、降格が部長待遇職についてから2年という短い期間のうちになされたこと、勤務態度が悪くなってしまったのは、当該社員のこれまでの業績への配慮が足りなかった会社にも責任があること、勤務態度が改善されつつあること、などを理由として降格を無効とした。

    労働問題で困った場合、

    詳しくはこちら→「顧問弁護士相談SOS」
    http://www.bengoshi-sos.com/

  • 自転車での死亡事故が多発中!損害賠償金は一体いくら?

    2014年09月28日

    自転車による死傷事故が続発しています。注意してください!

    「自転車:女子高生が下り坂で衝突、歩行者が死亡 京都」(2014年9月18日 毎日新聞)

    京都府の府道で17日午後7時10分ごろ、歩いて横断していた女性(79)が府立高校2年の女子生徒(16)が運転する自転車と衝突。

    女性は頭を強く打ち、病院に救急搬送されたが約6時間後に急性硬膜下血腫などで死亡。
    女子生徒も転倒し、あごの骨にひびが入るなどの重傷とのことです。

    府警によると、府道は西から東に向かう下り坂で、女子生徒はクラブ活動の帰りに坂を下っている途中で衝突したとみられ、「ブレーキをかけたが間に合わなかった」と話しているようです。

    府道は西から東に向かう下り坂。
    散歩が日課の女性は当日、横断歩道や信号のない場所を横断していたようで、府警は女子生徒が前方をよく見ていなかった可能性もあるとして、重過失致死罪などの容疑で調べているとのことです。
    「自転車同士が衝突 高齢の女性死亡、男子高校生重傷 旭川の歩道」(2014年9月16日 北海道新聞)
    旭川市の道道の歩道上で、男子高校生(16)の自転車と、70代とみられる女性の自転車が正面衝突。

    女性は頭を強く打ち、脳挫傷のため搬送先の病院で約6時間後に死亡。
    男子高校生は鼻の骨を折る重傷を負ったということです。

    道警によると、現場は道路の片側のみにある平たんな歩道で、歩道幅は約2メートル。
    事故当時はすでに薄暗く、2人の自転車はともに無灯火だったとみられ、自転車のブレーキ痕はなかったということです。
    以前、子供が起こした交通事故などの高額賠償金について解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒「子供が起こした事故の高額賠償金、あなたは支払えますか?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1217
    交通事故の加害者には3つの責任が科せられます。
    「刑事責任」「民事責任」「行政責任」です。

    京都府の事件を例にとると、刑事では「重過失致死罪」に問われ、民事では損害賠償が発生します。

    法定刑は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。

    重過失とは、どんな結果となるのか容易にわかる場合や著しい注意義務違反のために、起こる結果を予見・回避しなかったことをいいます。

    また、未成年者の損害賠償責任について法的には、その未成年者に物事の是非善悪を理解する能力がある場合には、その未成年者本人が賠償義務を負い、その能力がない場合には親などが責任を負う、とされています。

    「その能力」は、11~12歳くらいが境界線とされているので、今回の事故での女子生徒は16歳ですから本人が損害賠償をしなければいけません。

    では、その金額は一体いくらになるでしょうか?
    おおよその概算で計算してみます。

    今回のケースは、ご高齢の方でしたが、ご高齢の場合、条件次第で金額にばらつきが出てしまうので、ここでは、専業主婦の女性(30)が、自転車事故で死亡してしまった場合を計算します。

    そうすると、なんと、概算で7,400万円もの賠償金を支払わなければならなくなります。

    自転車の危険性を認識せず、注意を怠ってしまったばかりに、人を死亡させてしまったことで約7,400万円もの損害賠償金を支払わなければいけないのです。

    現状、この女子生徒に支払い能力があるとは考えられないので、親が7,400万円もの損害賠償金を支払うことになるでしょう。

    一般的な家庭にとっては大変な金額です。
    簡単に支払えるものではないですね。

    仮に、この親が自己破産してしまった場合、被害者の女性の遺族は賠償金を回収できなくなってしまいます。

    このブログでは何度も書いてきましたが、交通事故では被害者も加害者も、お互いが不幸な結果になってしまいます。

    自転車は手軽で便利なものですが、一歩間違えば凶器にもなることを大人も子供も、今一度認識してほしいと思います。

    また、交通事故は、ある日突然起きるものですから、まさかの時の備えとして自転車保険への加入などを検討するべきだと思います。

  • 薬を飲んだだけで「危険運転致死傷罪」!?

    2014年09月25日

    飲酒運転が、もちろん犯罪であることは誰でも知っているでしょう。

    また、危険ドラッグに関する報道は最近特に多いので、使用が疑われる運転が発覚した場合、事故を起こしていなくても現行犯逮捕されることを知っている人も増えていると思われます。

    詳しい解説はこちら⇒「脱法ハーブで危険運転致死傷罪か!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1530

    「危険ドラッグで自動車運転しただけで現行犯逮捕です」
    https://taniharamakoto.com/archives/1592

    では、市販薬を服用して自動車を運転した場合はどうでしょうか?

    先日、薬物による危険運転致傷容疑で書類送検されるという事故が起きました。

    ドラッグストアで普通に買えるクスリを飲んで起こした自動車事故で書類送検とは、一体どういうことでしょうか?

    「鎮静剤12錠飲み運転、追突事故…女を書類送検」(2014年9月18日 読売新聞)

    宮崎北署は、鎮静剤を大量に服用し、正常な運転が困難な状態で車を運転していたとして、宮崎市在住の女を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)容疑で宮崎地検に書類送検しました。

    報道によると、容疑者の女は6月16日午後1時10分頃、同市の市道で乗用車を運転中、薬物の影響で正常な運転が困難になり、赤信号で停車していた軽乗用車に追突。
    男性(41)に首の捻挫など6日間のけがを負わせた疑いとのことです。

    女は運転前に、「1回1錠、1日3錠まで」と服薬方法が書かれた市販の鎮静剤を12錠飲んでいたようで、男性の110番で捜査員が現場に駆けつけた際、運転席で意識がもうろうとしていたということです。
    鎮静剤を一度に12錠も服用するとは、やはり飲みすぎです。
    今回の事故、まさにそこがポイントとなります。

    もちろん、鎮静剤を飲んで自動車事故を起こしただけでは「自動車運転死傷行為処罰法」の「危険運転致死傷罪」には該当しません。

    鎮静剤を大量に飲むことによって意識がもうろうとなり、“正常な運転が困難”になることを“認識しながら”運転したかどうかが問題となります。

    「自動車運転死傷行為処罰法」
    第2条(危険運転致死傷)
    次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。

    1. アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
    第5条(過失運転致死傷)
    自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
    「危険運転致死傷罪」と「過失運転致死傷罪」の違いは、「故意」か「過失」が問題になります。

    現段階では書類送検であり、まだそこまで認定されているわけではないので、今後の捜査次第ですが、容疑者がこれまでも12錠飲んで、意識がもうろうとなっていたにも関わらず、あえて今回も運転したなら危険運転致傷罪が適用される可能性があります。

    一方、今回初めて大量に飲んだので効き目がわからず、自分では正常に運転できる、と思っていた場合には、過失運転致傷罪が適用される可能性があります。

    いずれにしても、クスリは使用上の注意をよく守って服用しなければいけません。

    自分の身体のために飲むクスリですが、自動車を運転するときは要注意ですね。

    自動車を運転するときは、「クスリはリスク」なのです。

    逆から読んでも「クスリはリスク」ですから、くれぐれも気をつけなければなりませんね。(;´Д`)アウ…

  • 転勤命令は拒否できるか?

    2014年09月18日

    先月、作家の村上春樹さんがイギリスで開催されたイベントで対談をしたというニュースがありました。

    世界でも人気のある村上さんが、公の場で語るのは異例のことだというので、イギリスのファンの注目も集めたようです。

    その対談で、作家になった理由を尋ねられた村上さんは、こう答えて会場を沸かせたそうです。

    「団体に所属する必要もないし、会議に出る必要もなく、上司を持たなくてもいいからだ」

    実際、会社員は組織に属していることで受ける恩恵ももちろんありますが、会社員ならではの厳しい現実もあるようです。

    同時に、経営側には経営側の論理があります。

    今回は、ある会社の経営者からの「転勤命令」に関する質問にお答えします。
    Q)私は、食品メーカーを経営している者です。先日、ある従業員に転勤命令を出したところ、拒否されました。面談してみると、理由は何点かあるらしいのですが、大きいのは親の介護問題と子どもの病気だといいます。母親の在宅介護があり、おまけに子どもの身体が弱く、ぜんそくの発作を繰り返すようで、こんな状態で妻にすべてを押しつけたくないし、現実問題、転勤すれば生活が破綻してしまうといいます。従業員の事情は理解したのですが、今後、転勤命令を出すことはできないのでしょうか? また、懲戒処分を下すことはできるのでしょうか?

    A)従業員の同意を得ていなくても、「就業規則」や「労働協約」に「転勤を命じることができる」等の規定があれば、原則として、会社は転勤を命じることができます。

    ただし、従業員を採用する時点で就業場所を限定、固定する約束があれば、転勤させるには従業員の同意が必要になるでしょう。
    よって、会社が転勤を命じることができる場合には、会社は転勤を拒否した社員に対して懲戒処分を下すことができます。
    しかし、一定の場合には、転勤の命令が人事権の濫用と判断され、違法となることがあります。
    【社員が転勤を拒否できる場合とは】
    若手社員なら、身軽に全国どこへでも転勤しやすいという面もありますが、年齢を重ね家族やマイホームを持つと、やはり転勤は避けたいと考える人は多いでしょう。

    では、どのような場合に社員は転勤を拒否することができるのでしょうか?

    〇雇用契約時に、勤務地限定などの規定がある場合
    〇転勤命令が会社の人事権の濫用になる場合

    会社には人事権の裁量があり、また、労働基準法には転勤命令の有効・無効についての直接的な取り決めはないため、雇用契約時に勤務地限定社員として採用した場合を除いて、原則、会社は社員に対して転勤命令を出すことができます。

    しかし、問題は人事権の濫用となる場合です。
    具体的には以下のようなものがあげられます。

    ① 業務上の必要性が認められない場合
    ② 不当な目的で行われる場合
    ③ 労働者に著しい不利益を負わせる場合

    ②の場合には、労働組合の活動をした、上司の不正を指摘した、成績不良、社内のいじめ、などで嫌がらせのために行うものがあげられます。

    さて、質問者の場合、③のケースが考えられます。
    実際、老親の介護や子供の育児などに支障をきたすという理由で、社員が転勤拒否することで労働紛争に発展する例が近年、増加しています。
    【判例】
    社員が転勤命令を拒否できるかどうかについて、過去の判例には以下のようなものがあります。

    「東亜ペイント事件」(最二小判 昭61.7.14 労判477-6)
    転勤命令を拒否した従業員を懲戒解雇した件で、第一審・第二審とも転勤命令は権利の濫用として、転勤命令と懲戒解雇を無効としたが、最高裁では一転、転勤命令には業務上の必要性があり、従業員が受ける不利益は通常甘受すべき程度のものであるとして、会社の権利濫用には当たらないとした。

    「ケンウッド事件」(最三小判 平12.1.28 労判774-7)
    社員が配転により通勤時間が1時間長くなり、保育園児の子供の送迎等に支障が生じるとしても、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益とまではいえないとした。

    「北海道コカ・コーラボトリング事件」(札幌地決 平9.7.23 労判723-62)
    近くに住む両親と、病気の子供2人の面倒を妻と2人でみていた従業員に対する転勤命令について、会社側の業務上の必然性は認めたものの、従業員は一家で転居することは困難であり、単身赴任すると妻が一人で子供と両親の面倒をみることになり、転勤は従業員に対して著しい不利益を負わせるものと認めた。
    【会社が取るべき対応とは】
    「育児介護休業法」が2001年に改正され、労働者の配置の配慮に関する項目が追加されています。

    「育児介護休業法」
    第26条(労働者の配置に関する配慮)
    事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。
    また、懲戒等による従業員の解雇に関しては、会社の業務上必要なもので、かつ妥当な処分かどうか慎重な対応が必要です。

    「労働契約法」
    第16条(解雇)
    解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
    会社としては、認められる要望かどうかはともかく、まずは本人の言い分をよく聞く必要があります。
    そのうえで、転勤することで従業員の私生活上に著しい不利益が発生するようであれば、代わりの人員の有無など再検討するべきでしょう。

    また、拒否の理由が認められないようなものであれば、再度、従業員との話し合いなどの場を設けて、人事異動命令に応じるよう説得することになります。

    なお、労働紛争に発展しないよう、事前に専門家に相談することも「転ばぬ先の杖」として検討してみることをお勧めします。

    ご相談はこちら→「顧問弁護士相談SOS」
    http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/

  • TBSテレビ「噂の東京マガジン」に出演しました。

    2014年09月15日

    2014年9月14日放送のTBSテレビ「噂の東京マガジン」に出演しました。

    内容は、ある市が行った区画整理事業に関してです。

    行政は住民に対するサービスですから、住民の納得を得ながら事業を遂行してほしいと思います。

  • アイドルとつきあって800万円の損害賠償請求!?

    2014年09月15日

    NHKの「朝の連続テレビ小説」(朝ドラ)の影響で、最近、道ならぬ恋が話題になっているようですが、アイドルとファンが、内緒でつきあっていたことが発覚して、アイドルグループの運営会社が損害賠償請求をしているという報道がありました。

    一体、何がどうなったのでしょうか?

    「アイドルと交際、ファンに損害賠償」(2014年9月12日 日刊スポーツ)

    アイドルグループ「青山☆聖ハチャメチャハイスクール」の中心メンバーだった2人が、突然、グループを脱退。
    グループの運営会社はメンバー2人とその親権者、さらには交際相手であるファン2人に対して損害賠償請求をしているようです。

    先月、都内で開催されたファンイベントで運営会社のプロデューサーは、「重大な契約違反があった。2人はファンと交際していた」などと理由を説明し、相手の実名まで暴露。
    会社は、823万2400円の損害賠償を求める内容証明書を交際相手であるファン2人に送付したということです。

    プロデューサーは、「メンバー2人の親権者は“ファンと恋愛関係にならない”“ 職場放棄をしない” などの項目が書かれた契約書にサインしていた。他のメンバーやファン全員を裏切り、許されることではない」と発言。

    また、請求額については、「2人は契約が1年残っていた。稼ぐはずだったであろう収益と、処分することになったグッズ、慰謝料などを含めた金額」と説明。
    提訴も含めた今後の対応は検討中、としているようです。

    一方、ファン側も弁護士を雇う意思を見せている、ということです。

    今回は、アイドルとファンに請求は別に考えなければなりません。

    まず、契約であと1年間の活動期間があるにもかかわらず、正当な理由なくアイドルが脱退した、ということであれば、アイドルには損害賠償責任が発生する可能性があります。

    運営会社は、活動計画をたて、プロモーション活動に投資をし、アイドルがその後活動することによって投資を回収するものですから、正当な理由のない脱退は許されるものではありません。

    しかし、交際を理由として、運営会社側から契約解除したのであれば、法的に見ると、無理がある請求だと思います。

    まず、アイドルと運営会社の契約で交際禁止規定があるそうですが、交際は、本人の「精神的自由」と「行動の自由」、そして「婚姻の自由」に関わるものであり、「基本的人権にかかわる自由」です。

    よって、この契約は本人の自由意思が最大限尊重されるべき事項に制限を加えるものであって、当然に有効、というわけではなく、その有効性は限定的に解釈されることになります。(クラブ従業員とコンサルタントの関係につき、東京地裁平成22年10月15日判決)

    確かに、アイドルがファンと交際することで、人気が落ちることはあり得ることなので、ただちに禁止規定が無効とは言えないでしょう。

    しかし、人気が落ちるのは、ファンであっても、ファンでなくても同じですね。

    ファンと交際しても広く知られることとならなければ人気に影響することはなく、アイドルと運営会社との関係を破壊するほどの事由にはならず、契約解除までは認められないものと考えます。

    したがって、運営会社側が交際を理由に一方的に契約解除をしたのであれば、その契約解除は無効であり、損害賠償も認められないでしょう。

    次に、今回、ファンの2人にも損害賠償を求めていますが、ファンは運営会社と契約関係になく、「交際しない義務」を負っていませんから、アイドルを無理矢理脱退させた、などの悪質な事情がない限り、損害賠償は認められないと思われます。

    ファンの側としては、びっくりですね。

    また、交際相手であるファン2人も弁護士をつける意思があるようなので、実名を暴露したことが、交際相手の「プライバシーの侵害」として、逆に運営会社が損害賠償請求を受ける結果となる可能性もあります。

    アイドルやタレントは、私生活を切り売りすることがあるといっても、私人のプライバシーを暴くことに関しては、慎重な対応が求められるところです。

  • 会社の経費で飲みに行ったら犯罪!?

    2014年09月09日

    会社の経費が余ったから、同僚や後輩を誘って、そのお金で飲みに行っった経験のある人、いませんか?

    最近、ある警察署で、そんな行為が「事件」として問題になったようです。

    「捜査諸雑費で同僚や部下と飲食、警部補書類送検」
    (2014年9月4日 読売新聞)

    捜査諸雑費を私的に流用したとして、山梨県警は韮崎署の男性警部補(56)を業務上横領容疑で甲府地検に書類送検し、同日付で停職6ヵ月の懲戒処分にしたと発表しました。

    県警によると、男性警部補は2009年3月~2011年3月にかけて当時勤務していた南甲府署で3回、また、2014年3月に南アルプス署で1回の計4回、捜査諸雑費として支給された現金(計1万868円)を同僚や部下との飲食代に流用して横領した疑い、としています。

    今年4月、県警会計課監査室が行った監査で発覚したようで、男性警部補は容疑を認めており、横領した全額を返済、依願退職したとのことです。
    以前、「領収書の改ざん」について解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1615

    会社に提出する領収書を勝手に改ざんして、使った分以上のお金を手に入れた場合、「詐欺罪」(刑法第246条)や「私文書偽造罪」(刑法第159条)になる可能性があり、さらに「民法」では損害賠償請求され、会社からは懲戒処分を受ける可能性もあるというものでした。

    さて今回は、警察の経費を業務以外の飲み代に使ってしまった場合のケースですが、これはなにも警察官がやったから書類送検されたわけではありません。

    一般の会社の社員がやっても同じ罪に問われる可能性があるのです。

    営業経費として認められているからといって、仲間だけで飲みに行って、会社の領収証をもらって、営業経費として申請し、飲食代金を会社から受け取る、というようなことをしていませんか?

    ドキッとした人もいるでしょう。

    詐欺罪になる可能性があります。

    会社としては、社員が営業として取引先などを接待していると思って飲食代金を支払うのですが、仲間だけで飲みに行くことは、会社を騙していることになるためです。

    今回は、詐欺罪ではなく、「業務上横領罪」です。

    どんな犯罪でしょうか。

    では、条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第253条(業務上横領)
    業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
    ちなみに、業務上ではない「横領罪」は第252条にあり、こちらは5年以下の懲役ですから、業務上のほうが罪は重いということになります。

    いずれにしても、罰金刑がなく懲役刑のみであることから、横領罪は重い罪だと言えますね。

    自分が占有しているお金を私的に流用して横領した、ということなので、詐欺罪ではなく、業務上横領罪になったわけです。

    ところで、お金だけでなく会社の備品、たとえばボールペンやハサミ、ホチキスなどを家に持って帰るとどうなるでしょうか?

    これは、「業務上横領罪」や「窃盗罪」に問われる可能性があります。

    さらに、会社のお金やものを横領すると、領収書の改ざんと同様に、「民法」第703条(不当利得の返還義務)、第709条(不法行為による損害賠償)により会社から損害賠償請求され、さらには懲戒処分を受ける可能性があることも覚えておいてください。

    ほんの出来心でやってしまったことで、それまでのキャリアも、職も誇りもすべて失ってしまう恐れがあります。

    「これくらいはいいだろう」とか「みんなやってるから大丈夫だろう」と安易に行動すると、後で後悔することになります。

    小さなことだと感じるかもしれませんが、会社は法律に基づいて動いています。

    会社のものと自分個人のものとは、厳格に区別して取り扱うことが大切です。

  • 放火は殺人より罪が重い!という都市伝説の真相は!?【放火罪】

    2014年09月08日

    「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があります。

    徳川幕府の江戸時代、江戸の町は木造家屋の密集地域のため火事が起きると延焼しやすく、たびたび大火事になることがありました。

    そうした現場での「火消し」たちの活躍が華々しかったことと、江戸っ子は気が早く、派手な喧嘩がよく起きたことから、こう言われたといいます。

    「粋(いき)」をよしとする江戸っ子たちの美意識や遊び心が感じられる言葉ですが、実際の火事の現場では華などとはいっていられません。

    人命に関わる可能性が高いのですから、地域住民たちの不安や心配は大きいでしょう。

    「一晩に不審火20件、埼玉の2市で…同一犯か」(2014年8月29日読売新聞)

    28日の夜から29日未明にかけて、埼玉県ふじみ野市と川越市で民家の自転車やゴミなどが焼けるぼやが合計で20件も発生しました。

    報道によると、28日午後10時半頃、ふじみ野市の住宅で自転車のかごに入っていたゴミが燃えてから、29日午前0時50分頃までに半径1.2キロ内で15件のぼやが発生。

    さらに、同1時5分頃には川越市の民家でゴミが燃えるなど、1時間に市内で5件のぼやがあったということです。

    いずれの現場も火の気はなく、住民が消し止め、ケガ人はなかったようですが、埼玉県では近隣の富士見市と三芳町でも16日から17日にかけて、19件の不審火が発生していることから、県警は関連を調べているようです。
    歴史上、有名な放火事件といえば、三島由紀夫の小説『金閣寺』のモデルになった「金閣寺放火事件」(1950年)や、井原西鶴の浮世草子『好色五人女』(1686年)の中に収録されている「八百屋お七」の放火事件などがあります。

    恋人に会いたい一心で放火事件を起こした八百屋の娘・お七は、捕えられた後、火あぶりの刑に処されます。

    諸説さまざまあるようですが、実話を西鶴が脚色したといわれているようです。

    ところで、放火罪は殺人罪より刑罰が重いということが都市伝説のようにいわれているようですが、実際、法的にはどうなのでしょうか?

    放火罪は、「刑法」では「放火及び失火の罪」といい、第108条(現住建造物等放火罪)から第118条(ガス漏出等致死傷罪)に規定されます。

    放火や失火、延焼、未遂、予備、火薬の爆破、ガスの漏出などについて定められる犯罪で、「現住建造物等放火罪」、「非現住建造物等放火罪」、「建造物等以外放火罪」などがあります。
    条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第108条(現住建造物等放火罪)
    放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
    この第108条が最も重い量刑で、最高刑は死刑と定められています。
    これは現行法上、「殺人罪」(第199条)と同じ法定刑である重罪です。

    一般的に、殺人に比べ放火の方が犯人の罪の意識が弱いと思われますが、ではなぜ、殺人と同じ刑なのでしょうか?
    それには以下のような理由があります。

    〇日本では古来より木造建築の多い生活様式のため、火事が起きやすく延焼しやすく被害が拡大しやすい
    〇火事によって、現実に居住している人を死に至らしめる可能性が極めて高い
    〇延焼により、不特定多数の生命を危険にさらすおそれがある

    火の力は、時として人間が制御できなくなるほど強大な力で多くの人を死に至らしめる可能性の高いものです。

    そうした「火」を用いて、たとえ殺人を犯すつもりはなくても放火をすることは、最悪な結果を引き起こす可能性がある悪質性を持っているために殺人と同等の重罪である、ということです。
    冒頭の都市伝説の件について解説しておきます。

    2004年の刑法改正以前、殺人罪は「死刑又は無期若しくは3年以上の懲役」でした。

    一方、放火罪は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」で、より重い量刑となっていました。

    そのため、放火は殺人より罪が重い、という部分が一人歩きした結果、都市伝説のように話が広まったのだと思います。

    2004年の刑法改正により、殺人罪と放火罪の法定刑が同じになったので、今では、「放火と殺人は同罪である」という都市伝説になるでしょう。

    ニュースを見ていると、たまに「気分がムシャクシャしたので、火をつけた」などと言っている犯人がいますが、それどころでは済まされない重罪です。

    この場合、法定刑で言えば、「気分がムシャクシャしたので、人を殺した」と同じだということを肝に銘じておかなければなりません。

    人は、火を使いこなすことによって文明が始まりました。

    火をつけることによって人生を閉じることのよう気をつけたいものです。