危険運転致死傷罪 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • 未熟運転で危険運転致死罪が初適用!

    2015年10月16日

    無免許で、運転技術が未熟であるにも関わらず、自動車を運転して交通死亡事故を起こした少年に対し、危険運転致死罪(未熟運転容疑)が初適用という報道がありました。

    この記事の詳細はこちら 

  • TBSテレビ「ニュース23」に出演

    2015年09月10日

    2015年9月10日に放送された、TBSテレビ「ニュース23」に出演しました。

    内容は、交通事故で、危険運転致死傷罪の適用について、検察が慎重になってしまう理由などについてコメントしました。

  • 葉山ひき逃げ交通事故で危険運転致死傷罪が適用か?

    2015年08月27日

    8月23日午後5時10分頃、神奈川県葉山町で発生した3人死傷のひき逃げ事故の続報が入ってきました。

    「危険運転致死傷適用へ 葉山ひき逃げ死傷事件」(2015年8月26日 神奈川新聞)

    神奈川県警は、葉山町の県道で男女12人の歩行者の列に突っ込み、3人を死傷させた事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失致死傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で送検した会社員の男(20)を、より量刑の重い危険運転致死傷容疑で立件する方針を固めたようです。

    県警によると、事故直前、男が運転する車が追い越しをしたり、高速度で走行していたことを複数の目撃者が証言。
    同時に、現場の道路形状やタイヤ痕、周辺の監視カメラの映像などを分析してスピードの特定を進めているということです。

    先日、解説したように、飲酒による人身事故に危険運転致死傷罪を適用するには、「酒に酔って正常な運転ができない状態」で運転したことを検察側が立証しなければいけないのですが、今回これは難しいと思われます。

    そこで検察は、危険運転致死傷罪の成立要件である、「進行を制御することが困難な高速度での走行」もしくは、「人又は車の進行を妨害する目的で走行中の自動車の直前に進入・接近し、重大な危険を生じさせる速度で運転」の容疑に切り替えて立件するということだと考えられます。

    今回の事故現場のことはよくわかりませんが、スピードオーバーについては、自動車を「制御するのが困難なほどの高速度」が要件ですから、直線道路だと、なかなか適用が難しいことになります。

    追い越しのうえでの故意による「割り込み」という危険運転行為については、

    急な割り込みに対して相手が自車との衝突を避けるために急ハンドルを切るなどの回避行為をするときに、重大な事故が発生しやすいことに着目したものです。

    なお、「重大な危険を生じさせる速度」とは、自車と相手が衝突すると重大な事故になる可能性の高い速度のことで、立法時の答弁では、20~30キロ程度出ていれば、状況によってはこの要件が適用されると解釈されています。

    実際、男はどのくらいのスピードを出していたのか。
    警察の分析結果が待たれます。

    交通事故を弁護士に相談すべき理由

  • 葉山のひき逃げ交通事故は発覚免脱罪?

    2015年08月24日

    2015年8月23日夕方、神奈川県葉山町で海水浴帰りの男女3人がひき逃げされ死傷した事件がありました。

    男性一人が死亡したほか、女性が意識不明の重体、男性一人も大けがをしました。

    逮捕された男性からは、アルコールが検出されましたが、「事故を起こして自宅に戻ったあと、怖くなって酒を飲んだ」と説明しているということで、警察は友人らから話を聴くなどして当時の状況を詳しく調べています。
    酒を飲んで人身事故を起こした、ということであれば、当然「危険運転致死傷罪」が疑われますが、危険運転致死傷罪に問うことができるためには、事故を起こす時に、「酒に酔って正常な運転ができない状態」で運転したことを検察側が立証しなければなりません。
    それは、今回、難しいでしょう。
    しかし、法律では、酒に酔って自動車の運転に支障が生じるおそれがある状態で事故を起こし、その発覚を防ぐために酒を飲んだような場合には、「発覚免脱罪」として、罪を問われます。
    危険運転致死傷罪(死亡)の場合が最高懲役20年に対し、発覚免脱罪は、最高懲役12年です。
    しかし、発覚免脱罪は、たいてい「ひき逃げ」が加わります。
    発覚免脱罪に「ひき逃げ」が加わると、最高懲役18年になります。
    今回は、おそらく危険運転致死傷罪の適用は難しいでしょう。
    しかし、事故前に相当程度飲酒したことが認定できるのであれば、この「発覚免脱罪」と「ひき逃げ」の併合罪で、最高懲役18年、の適用が可能となるかもしれません。
    警察および検察の捜査を待ちたいと思います。
  • ABC朝日放送テレビ「キャスト」出演

    2015年07月13日

    2015年7月13日放送のABC朝日放送テレビ「キャスト」に出演しました。

    内容としては、交通事故における危険運転致死傷罪と、過失運転致死傷罪の線引きをどうするか、という問題です。

  • 危険運転致死傷罪の量刑一覧(飲酒、危険ドラッグ、てんかん、無免許等)

    2015年07月08日

    「危険運転致死傷罪ファイル001」
    【事故の概要】
    2014年6月、京都府福知山市で高校1年の男子生徒が飲酒運転の車に約1キロ引きずられ、ひざ骨折などの重傷を負った事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)罪に問われた被告の男(61)の判決公判が2015年3月27日、京都地裁で開かれた。
    弁護側は、「酩酊しており心神喪失状態だった」と主張。しかし裁判長は、被告が事故直前まで、ほぼ交通規則通りに運転していたことなどから、「是非善悪を弁識し行動する能力を完全に有していた」と退けた。また、飲酒の影響で、「引きずっている間に異常に気づき、停止することさえもできなかった」、「飲酒し、正常な運転が困難な状態を招いた責任は相当に重い」、「動機は自己中心的かつ身勝手というほかない」と結論づけた。

    【判決】
    懲役4年6ヵ月(求刑懲役6年)

    【参考】
    「福知山の男子高校生引きずり判決 被告に懲役4年6月」(産経WEST)
    http://www.sankei.com/west/news/150327/wst1503270082-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル002」
    【事故の概要】
    2014年7月、東京都・赤羽で危険ドラッグを吸って車を運転し、2人にケガをさせ、自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致傷)の罪に問われた被告(男・39歳)の判決が2015年3月23日、東京地裁であった。

    【判決】
    懲役1年4ヵ月・執行猶予4年(求刑懲役1年4ヵ月)

    【参考】
    「危険ドラッグ吸い事故、有罪 東京地裁」(朝日新聞)
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11666199.html
    「危険運転致死傷罪ファイル003」
    【事故の概要】
    札幌市で2014年11月、危険ドラッグを吸って車を暴走させ、歩道にいた女子高生をはねて重傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反の危険運転致傷などの罪に問われた札幌市の会社員の男(26)に対する判決が2015年3月17日、札幌地裁で言い渡された。
    裁判官は、事故前の2014年10月にも被告が危険ドラッグを使用して自損事故を起こしていたことをあげて、「危険性を実感しながら絶縁せず、町中で車の運転中に使用した。刑事責任を厳しく問われるべきだ」と指摘。そのうえで、「危険ドラッグへの親和性が高く、危険をいとわない被告には刑の執行を猶予するまでの情状が認められない」と結論づけた。

    【判決】
    懲役3年(求刑懲役4年)

    【参考】
    「危険ドラッグ事故で実刑判決 「刑猶予、認められない」(産経デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/150317/evt15031716190031-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル004」
    【事故の概要】
    福岡市・天神で2014年2月、危険ドラッグを吸って乗用車で暴走し歩行者ら12人に重軽傷を負わせたとして自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)の罪に問われた被告の男(37)の公判が、福岡地裁で2015年2月13日に行われた。
    「被告は目の焦点が合わず、問いかけても応えられない状態だった。極めて危険性が高く、死者が出なかったのは不幸中の幸い」と裁判官は指摘。そのうえで、重篤な後遺症を負った被害者がいないことや、ほとんどの被害者と示談が成立していることなどをあげ、執行猶予付き判決を言い渡した。

    【判決】懲役1年6ヵ月・執行猶予3年(求刑懲役1年6ヵ月)

    【参考】
    〇「危険ドラッグ暴走に有罪 福岡地裁「極めて危険」」(朝日新聞デジタル)
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11600853.html
    「危険運転致死傷罪ファイル005」
    【事故の概要】
    ミニバイクに乗っていた65歳の女性が乗用車に約1・3キロ引きずられ死亡した、2014年7月、埼玉県川口市で起きた事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われた元同市職員の男(26)の判決公判が2015年1月29日に行われた。
    裁判長は、被告が大量の飲酒で極めて危険な運転を行い、女性をはねたことに気づきながら逃走し、悪質な飲酒運転の隠蔽工作を行ったと指摘。「危険運転致死傷の事案の中では重い部類」とする一方、被告が反省の言葉を述べたこと、前科がないことなどを情状酌量の理由としてあげた。

    【判決】
    懲役10年(求刑懲役15年)

    【参考】
    「飲酒ひき逃げ死亡で地裁判決 元川口市職員に懲役10年 埼玉」(産経ニュース)
    http://www.sankei.com/region/news/150130/rgn1501300044-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル006」
    【事故の概要】
    制限速度を約30キロ超えるスピードで車を運転し、同乗者3人が死傷する事故を起こしたとして、危険運転致死傷罪に問われた無職の少年(19)の裁判員裁判が2014年12月8日、長崎地裁で開かれた。
    事故が起きたのは、2014年4月19日午前1時25分頃。長崎県島原市の制限速度60キロの市道で、乗用車を時速93キロで運転し、車は道路の起伏ではね上がり左側にあった自動販売機に衝突した。
    裁判長は、「結果は重いが、勾配の変化による浮遊感を同乗者全員と楽しむ目的で車を走行させており、経緯には酌むべき点がある」と指摘した。

    【判決】
    懲役3年以上、5年以下(求刑懲役5年以上、10年以下)

    【参考】
    「危険運転の19歳に実刑」(産経ニュース)
    http://www.sankei.com/affairs/news/141208/afr1412080019-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル007」
    【事故の概要】
    2014年8月3日午後、北海道石狩市で、酒気帯び運転で5人に重軽傷を負わせる事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)などの罪に問われた札幌市の被告の男(30)の公判が2014年11月27日、札幌地裁で開かれた。
    被告は制限速度50キロの国道を118~126キロで乗用車を運転中、隣の車線にいた乗用車に後ろから衝突。札幌市の男性と家族4人に胸の骨を折るなどの重軽傷を負わせた。
    検察側は6日の論告で、「日頃から速度違反と飲酒運転を繰り返し、規範意識に欠けている」と指摘。弁護側は、「反省して車を運転しないと誓い、被害者に謝罪した」として、懲役2~3年の実刑が相当と主張していた。

    【判決】
    懲役4年6ヵ月(求刑懲役5年)

    【参考】
    「危険運転で懲役4年6月 北海道の5人重軽傷事故で札幌地裁」(産経デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/141127/evt14112711230010-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル008」
    【事故の概要】
    2014年3月9日未明、飲酒後に無免許で乗用車を運転し、水戸市の県道のカーブで対向車線にはみ出し、33歳の会社員の男性が運転する軽乗用車に衝突、死亡させたとして危険運転致死罪などに問われた元少年(20)の裁判員裁判が2014年10月17日、水戸地裁で開かれ判決が言い渡された。
    裁判長は、「高濃度のアルコールを保有した状態で制限速度の約2倍の高速度で走行し、悪質で危険」と指摘。「以前から無免許運転や飲酒運転を繰り返しており、強い非難に値する」と述べた。

    【判決】
    懲役8年(求刑懲役9年)

    【参考】
    「飲酒死亡事故の元少年、危険運転致死罪で懲役8年 水戸地裁」(産経デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/141017/evt14101718010038-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル009」
    【事故の概要】
    飲酒運転でひき逃げしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)と道路交通法違反の罪に問われた別府市の会社員の男(29)に対する判決が、2014年10月7日に大分地裁であった。
    被告の男は、2014年6月24日未明、同市の県道で飲酒のため運転に支障が生じる恐れがある状態で軽乗用車を運転し、市内の会社員(当時19歳)が運転する軽乗用車と衝突。首などに14日間のケガをさせたうえ、救護などをせず逃げた。
    裁判長は、5時間にわたってビールを約2リットル、焼酎を約1合半飲んだこと、駐車場を出る際に精算作業に手間取ったうえ、約2分後には居眠りして事故を起こしたとして、「アルコールのため居眠りし、正常な運転が困難になったのは明らか」と指摘した。

    【判決】
    懲役1年6ヵ月・執行猶予4年(求刑懲役1年6ヵ月)

    【参考】
    飲酒ひき逃げ:危険運転致傷罪、初適用し男有罪−−大分地裁判決 /大分」(毎日新聞)
    http://mainichi.jp/area/oita/news/20141008ddlk44040360000c.html
    「危険運転致死傷罪ファイル010」
    【事故の概要】
    京都市で2013年10月2日の夕方、飲酒運転の車が小学2年の男子児童ら3人をはねて死傷させた連続ひき逃げ事件で、危険運転致死傷罪や道路交通法違反(ひき逃げ)の罪などに問われた被告の男(60)に対する裁判員裁判の判決が2014年9月19日、京都地裁であった。
    被告の男はカップ酒数本を飲んで軽トラックを運転し、同市中京区の市道で自転車に乗っていた主婦(61)をはねて逃走。さらに約160メートル東で、祖父(67)が運転する自転車の後ろに乗っていた小学2年をはねて、児童は頭を強く打って死亡、祖父は重傷を負った。
    弁護側は公判で、「被告は事故に気づかなかった」と主張。しかし、裁判長は、「車のフロントガラスの破損状況などから、ぶつかったときの強い衝撃に気づいたはず」と退け、「人命を軽視し、思慮の浅い態度は厳しい非難に値する」と指摘した。

    【判決】
    懲役12年(求刑懲役13年)

    【参考】
    「京都・中京のひき逃げ:3人死傷 危険運転、懲役12年−−地裁判決」(毎日新聞)
    http://mainichi.jp/area/news/20140920ddn041040015000c.html
    「危険運転致死傷罪ファイル011」
    【事故の概要】
    2014年6月7日、札幌市内で無免許のまま乗用車を運転中、持病のてんかんを発症し意識不明の状態に陥り人身事故を起こしたとして自動車運転死傷処罰法違反(無免許危険運転致傷)の罪に問われた被告の男(27)の判決が2014年9月2日、札幌地裁であった。
    事故は、被告が車線をはみ出して対向車と衝突し、運転していた男性が腰の骨を折る重傷を負ったもの。
    裁判官は、「持病を有する状態での運転は相当程度危険性が高い。それを認識していたのに運転したことは、強く非難される」と指摘。
    法務省によると、特定の病気の影響による交通事故での危険運転致傷罪の成立は全国初とのこと。

    【判決】
    懲役1年10ヵ月(求刑懲役2年)

    【参考】
    「“危険運転”初の判決 てんかん発症、人身事故 札幌地裁
    」(朝日新聞デジタル)
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11330404.html
    「危険運転致死傷罪ファイル012」
    【事故の概要】
    高松市の県道交差点で、車を暴走させて自損事故を起こし同乗者2名が死亡、1人に重傷を負わせた事故で危険運転致死傷罪に問われていた運転手の男(33)の裁判員裁判が、2013年1月31日、高松地裁であった。
    事故があったのは、2010年4月29日の夜。真ん中が隆起している交差点に法定速度(時速60キロ)を超える145キロで進入し、対向車線に飛び出して鉄柱に衝突した。
    被告側は、「スピードと事故との因果関係はない」と主張したが、裁判長は、「2人の命が奪われた結果は甚大で、被告に反省も認められない」と指摘。現場の状況や証言などから、危険運転致死傷罪は成立するとした。

    【判決】
    懲役7年(求刑懲役10年)

    【参考】
    「危険運転の男に有罪判決」(西日本放送)
    http://www.rnc.co.jp/news/index.asp?mode=3&nwnbr=2013013111&word=%82%C8%82%C7&page=253
    「危険運転致死傷罪ファイル013」
    【事故の概要】
    仙台市で2014年11月、飲酒運転で道路工事現場に突っ込み4人を死傷させたとして、危険運転致死傷罪に問われた元会社員の男(21)の裁判員裁判が、2013年5月29日に仙台地裁であった。
    弁護側は、より法定刑の軽い自動車運転過失致死傷罪などの適用を求めていたが、裁判長は、「時速75キロで13秒間も全く前を見ずに運転するのは異常で、原因はアルコールの影響以外に考えられない」と指摘。危険運転致死傷罪が成立するとした。

    【判決】
    懲役14年(求刑懲役18年)

    【参考】
    「危険運転罪で懲役14年 仙台地裁、4人死傷事故」(共同通信)

    http://www.47news.jp/CN/201305/CN2013052901001315.html

     

    「危険運転致死傷罪ファイル014」
    【事故の概要】
    2009年3月25日午前8時10分頃、山口県防府市の市道で、時速80キロで乗用車を運転し、中央線をはみ出して53歳の女性が運転する軽乗用車に衝突。女性を死亡させ、同乗していた長女(29)に重傷を負わせたとして危険運転致死傷の罪に問われた防府市内の少年(19)の判決公判が2010年1月20日、山口地裁であった。
    裁判長は、運転中の少年に同乗者がスピードの出し過ぎを指摘した点や、少年が事故現場のカーブの形状などを知っていた点などをあげ、「制御困難な速度の認識があった」、「運転態様は無謀かつ危険」と指摘。「被害者側には何の落ち度もなく突如生命を奪われた。遺族の処罰感情が極めて厳しいのも当然」とした。
    なお、本裁判は山口県内で初めて被害者参加制度が適用されたもので、公判では亡くなった女性の次女が少年に対して意見を述べた。

    【判決】
    懲役3~6年の不定期刑(求刑懲役4~7年の不定期刑)

    【参考】
    「県内初の被害者参加裁判 少年に3-6年不定期刑」(山口新聞)
    http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2010/0121/7.html
    「危険運転致死傷罪ファイル015」
    【事故の概要】
    埼玉県熊谷市で2008年2月17日、2人が死亡、6人が重軽傷を負う飲酒運転事故を起こしたとして、危険運転致死傷罪に問われた元トラック運転手の男(34)の控訴審判決が2009年11月27日、東京高裁であった。
    被告の男は、約5時間にわたってビールや焼酎を飲み、乗用車で熊谷市内の県道を時速100キロ以上で運転。対向車2台に衝突し、自営業の男性(当時56歳)と妻(同56歳)を死亡させ、6人に重軽傷を負わせた。
    検察側は遺族の意向も踏まえ、懲役20年を主張。弁護側は、刑を軽くするよう求めていた。
    裁判長は、「遺族らの厳しい処罰感情は当然」としながらも、「被告は対人無制限の任意保険に加入しており、遺族に対する損害賠償が担保されている」などと指摘。一審判決を支持、検察、弁護側双方の控訴を棄却した。

    【判決】
    懲役16年(求刑懲役20年)

    【参考】
    飲酒運転の男、二審も懲役16年 8人死傷事故で東京高裁」(共同通信)
    http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009112701000721.html
    「危険運転致死傷罪ファイル016」
    【事故の概要】
    2006年2月25日未明、愛知県春日井市内の交差点に赤信号を無視して時速70~80キロで進入し、タクシーの側面に衝突。運転手の男性と乗客の自衛隊員の男性3人、合わせて4人を死亡させるなどして危険運転致死傷罪などに問われた元会社員の男(29)に対して、1審名古屋地裁は危険運転致死傷罪ではなく、予備的訴因の業務上過失致死傷罪を適用し、懲役20年の求刑に対し懲役6年の判決を言い渡した。
    2007年12月25日、その控訴審判決が名古屋高裁で開かれ、裁判長は、「危険で乱暴な運転をしていた被告は信号表示を意に介することなく、交差点に進入。重大な交通の危険を生じさせる速度で赤信号をことさらに無視した」と指摘。そのうえで、「被害者が受けた肉体的、精神的苦痛は甚大で、遺族の悲しみは深い。被告は十分な慰謝の措置を講じず、自己の責任を軽減することに終始した」などと述べ、1審判決を破棄、被告に危険運転致死傷罪を適用し、懲役18年を言い渡した。
    その後、2009年6月2日の最高裁第1小法廷での上告審で、裁判長は被告側の上告を棄却し、名古屋高裁判決が確定した。

    【判決】
    懲役18年(求刑懲役20年)

    【参考】
    「4人死亡事故で懲役18年 名古屋高裁、危険運転罪を適用」(共同通信)
    http://www.47news.jp/CN/200712/CN2007122501000281.html
    「危険運転致死傷罪ファイル017」
    【事故の概要】
    2005年10月17日午前、横浜市都筑区のサレジオ学院前で制限速度40キロのカーブを曲がり切れず、歩道にいた高校1年の男子生徒らの列に突っ込み、2人が死亡、7人が重軽傷を負った事故で危険運転致死傷罪に問われた被告の男(25)の控訴審判決が2007年7月19日、東京高裁であった。
    弁護側は、「1審が認定した100キロ以上の速度は出ておらず、危険運転致死傷罪に該当しない」として業務上過失致死傷罪の適用を主張。検察側は求刑通り懲役20年の判決を求めていた。
    1審の横浜地裁判決では、車両の破損状況などから時速100キロ以上と認定。「他者の生命身体に対する配慮を欠いた極めて無謀で悪質な犯行」と批判し、懲役16年の判決。
    2審では、1審の横浜地裁判決を支持し、弁護側、検察側双方の控訴を棄却した。

    【判決】
    懲役16年(求刑懲役20年)

    【参考】
    「元警備員、2審も懲役16年 横浜の高校生9人死傷事故」(共同通信)
    http://www.47news.jp/CN/200707/CN2007071901000203.html
    「危険運転致死傷罪ファイル018」
    【事故の概要】
    千葉県松尾町(現山武市)で、同窓会帰りの男女が飲酒運転の車にひき逃げされ、4人が死亡、4人が重軽傷を負い、被告の男(33)が危険運転致死傷罪などに問われた事故について、2007年3月5日、最高裁第2小法廷は上告を棄却する決定をした。
    事故が起きたのは2005年2月5日。免許停止中の被告の男が日本酒5~6合などを飲み、酩酊状態で乗用車を運転。午後9時15分ごろ、同窓会を終えて飲食店から出た8人(当時59歳)をはねて現場から立ち去り、駐車中の別の乗用車を盗んで逃げた。
    1、2審では被告に対し、懲役20年を言い渡していた。

    【判決】
    懲役20年(求刑懲役20年)

    【参考】
    「危険運転、懲役20年確定へ 千葉の同窓会帰り8人死傷」(共同通信)

    http://www.47news.jp/CN/200703/CN2007030601000567.html

     

    「危険運転致死傷罪ファイル019」
    【事故の概要】
    北海道小樽市で、女性3人が死亡、1人が重傷を負った飲酒ひき逃げ事件で、自動車運転処罰法違反の罪などに問われた札幌市の被告の男(32歳)の裁判員裁判が2015年7月9日に開かれ、札幌地裁は求刑通り懲役22年の判決を言い渡した。
    事件が起きたのは2014年7月13日夕方。被告の男は酒の影響で前方注視が困難な状態でRVを運転。市道を歩いていた岩見沢市の会社員の女性(当時29歳)ら3人をはねて死亡させ、1人に重傷を負わせて逃走した。
    裁判長は、「被告は時速50~60キロで車を走行させながら、15秒~20秒程度、スマートフォンを見るため下を向いていた。“よそ見”というレベルをはるかに超える危険極まりない行動だ」と指摘。飲酒の影響による脇見運転が事故原因と認定し、自動車運転処罰法違反のうち、危険運転致死傷罪を適用した。
    その後、被告の男は2015年7月23日、1審札幌地裁の裁判員裁判判決を不服として札幌高裁に控訴したが、同年12月8日、札幌高裁は被告の控訴を棄却する即日判決を言い渡し、求刑通り懲役22年とした1審の札幌地裁の判決を支持した。

    【判決】
    懲役22年(求刑懲役22年)

    【引用】
    「飲酒ひき逃げで4人死傷の海津被告、2審も懲役22年」(2015年12月8日 産経新聞デジタル)

    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/151208/evt15120812040019-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル020」
    【事故の概要】
    2014年9月11日午前10時50分ころ、34歳の男が札幌市南区の道道で睡眠導入剤の影響で前方注視が困難な状態であるにも関わらず車を運転して対向車線にはみ出し、大雨被害の復旧作業に当たっていた4人をはね、当時62歳の男性1人が死亡、3人に重軽傷を負わせた事件の裁判が2015年7月15日に開かれた。
    自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた札幌市の被告の男(34)に対し札幌地裁は、懲役4年6月(求刑懲役6年)の判決を言い渡した。
    弁護側は「服用から運転まで一定の時間が経過し、服用時点で運転する意思はなかった。危険運転致死傷罪は成立しない」と主張。しかし、裁判長は、「カーブでふらつくなどし、被告は自分の異常な運転が睡眠導入剤の影響だとわかっていたはずだ」と指摘した。

    【判決】
    懲役4年6月(求刑懲役6年)

    【引用】
    「睡眠剤事故で懲役4年6月 札幌地裁、危険運転を認定」(2015年7月15日 産経新聞デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/150715/evt15071518040019-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル021」
    【事故の概要】
    千葉市緑区の片側2車線の市道で、制限速度を超えた速度で乗用車を運転中、左車線をオートバイで走行していた男性(当時45歳)を妨害するため接近するなどして、男性をガードレールに衝突させ、死亡させた被告の男(37)に対する裁判員裁判の判決公判が2015年8月10日、千葉地裁で開かれた。
    危険運転致死罪と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪で求刑8年のところ、裁判長は「極めて危険で人命を軽視する運転。強い非難に値する」として、懲役7年の実刑を言い渡した。
    検察側は、「バイクの存在を認識したうえで幅寄せをしたことが認められる」と指摘。弁護側は「車線変更をしただけで、走行を妨害するつもりはなかった」として無罪を主張していた。
    事件が起きたのは、2014年4月28日午前7時ころ。接触を伴わない交通事故での危険運転致死容疑での立件は全国でも珍しく、司法判断は注目を集めていた。

    【判決】
    懲役7年(求刑懲役8年)

    【引用】
    「「人命軽視の運転」 車で走行妨害の被告に懲役7年 千葉地裁」(2015年8月11日
    産経新聞デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/150811/evt15081108320016-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル022」
    【事故の概要】
    飲酒運転でパトカーから逃走中、赤信号を無視して死亡事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)などの罪に問われた東京都葛飾区の被告の男(23)の裁判員裁判が2015年9月11日、東京地裁で開かれた。
    事件が起きたのは、2014年12月。交差点に進入して女子大生(当時21歳)をはねて死亡させた。
    被告は、「赤信号に気づかなかった」として危険運転致死罪には当たらないと主張。裁判長は、「飲酒運転を恐れての事故できわめて身勝手だ」、「交通規制を気に掛けず、何としても逃げようとする強い意図があった」として、懲役9年(求刑懲役10年)の判決を言い渡した。

    【判決】
    懲役9年(求刑懲役10年)

    【引用】
    「危険運転致死、懲役9年 飲酒逃走「極めて身勝手」」(2015年9月11日 共同通信)
    http://www.47news.jp/smp/CN/201509/CN2015091101001710.html
    「危険運転致死傷罪ファイル023」
    【事故の概要】
    2014年10月30日、茨城県かすみがうら市の国道354号で無免許運転をして、6人を死傷させる事故を起こしたなどとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)や強盗などの罪に問われた被告の男(25)の裁判員裁判が、2015年9月17日、水戸地裁で開かれた。
    判決によると、被告の男は2014年9月~2015年1月、仲間と鉾田、潮来、鹿嶋市の事務所などで窃盗や強盗を繰り返し、2015年10月30日、乗用車を無免許運転し、前の車を追い抜こうとして対向車と衝突。同乗していた当時14~26歳の男女3人を死亡させ、対向車に乗っていた男性2人を含む計3人にケガを負わせた。
    裁判長は、「運転は無謀かつ相当危険で結果は極めて重大。強盗、窃盗は実行役で被害も多額」、「遺族への対応も誠実とは言い難い」として、懲役15年(求刑懲役16年)の判決を言い渡した。

    【判決】
    懲役15年(求刑懲役16年)

    【引用】
    「無免許運転、6人死傷させた男に懲役15年判決」(2015年9月18日 読売新聞)
    http://www.yomiuri.co.jp/national/20150918-OYT1T50091.html
    「危険運転致死傷罪ファイル024」
    【事故の概要】
    2014年5月14日、長野県中野市の県道で、無免許のうえ危険ドラッグを使用して、時速126キロを超えるスピードで乗用車を運転し、対向車線を逆走して車に次々と衝突し、1人を死亡させ、2人に重軽傷を負わせたとして危険運転致死傷などの罪に問われた当時19歳の元少年(21)の裁判員裁判の判決公判が2015年11月20日、長野地裁で開かれた。
    公判で元少年側は、「危険ドラッグを使っても事故を起こすとは思わなかった」などと主張。裁判長は、「同乗者が危険ドラッグを使用して手足が硬直し、事故を起こす危険があるのを目にしているのに運転を継続した責任は重大だ」と述べ、懲役13年(求刑懲役15年)を言い渡した。
    死亡した中野市の男性(当時25歳)は、事故の3週間前に妻と入籍し、約4ヵ月後には挙式と披露宴を計画していたことから、裁判長は「突然の事故で人生を奪われた。その無念の情は察するにあまりある」と述べた。

    【判決】
    懲役13年(求刑懲役15年)

    【引用】
    「危険ドラッグ暴走で3人死傷 元少年に懲役13年判決 長野地裁」(2015年11月21日 産経新聞デジタル)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/151121/evt15112100350001-n1.html

     

    「危険運転致死傷罪ファイル025」
    【事故の概要】
    2015年8月23日、神奈川県葉山町で海水浴客の列に乗用車で突っ込み、歩行者3人を死傷させて逃げたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)に問われた会社員の男(20)に対し、横浜地裁は2016年5月24日、懲役11年(求刑・懲役12年)の判決を言い渡した。
    判決によると、被告の男は葉山町一色の制限速度が時速40キロの県道を、乗用車で時速78キロで走行。歩いていた海水浴客の列に突っ込み、1人を死亡させ、2人に重傷を負わせたという。
    裁判長は、「落ち度のない3人を死傷させた結果は極めて重く、事故を起こした経緯は身勝手で酌量の余地はない」と述べ、被告が飲酒した直後に運転していたことを隠そうと、帰宅後に飲酒したように装ったと認定した。

    【判決】
    懲役11年(求刑・懲役12年)

    【参考】
    「<葉山3人死傷ひき逃げ>懲役11年判決…横浜地裁」(2016年5月25日 毎日新聞)
    http://mainichi.jp/articles/20160525/ddm/041/040/166000c
    「危険運転致死傷罪ファイル026」
    【事故の概要】
    車を運転中に持病のてんかんの発作で意識を失い、車に追突して男性に軽傷を負わせたとして自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)に問われた山形県寒河江市の会社員の男(38)に対し、山形地裁は2016年6月1日、懲役10月、執行猶予3年(求刑・懲役10月)の判決を言い渡した。
    判決によると、被告の男は事故前日に深夜まで飲酒し、当日朝に抗てんかん薬を飲み忘れたまま、2014年11月18日昼頃、正常な運転に支障が生じる恐れがある状態で軽乗用車を運転。約10分後、寒河江市内の県道を時速約40キロで走行中に発作で意識を失い、信号待ちの車に追突し、運転していた60歳代男性に軽傷を負わせたという。

    【判決】
    懲役10月、執行猶予3年(求刑・懲役10月)

    【参考】
    「てんかん発作で追突、けが負わせる…有罪判決」(2016年6月2日読売新聞)
    「危険運転致死傷罪ファイル027」
    【事故の概要】
    東京・池袋の繁華街で、危険ドラッグを吸って車を運転し、7人を死傷させたとして自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)に問われた被告の男(39)に対し、東京高裁は2016年6月8日、懲役8年(求刑・懲役10年)とした1審・東京地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。
    被告側は、「危険ドラッグを使って意識障害に陥った経験はなく、運転に支障が出るとは思わなかった」と訴えたが、高裁判決は、過去に繰り返し使用し嘔吐などの症状があったと認めて主張を退けた。
    判決によると、2014年6月、被告の男は危険ドラッグを吸って車を運転し、JR池袋駅近くで7人をはね、中国籍の女性(当時30歳)を死亡させるなどしたという。

    【判決】
    懲役8年(求刑・懲役10年)

    【参考】
    「池袋暴走7人死傷 高裁も懲役8年判決」(2016年6月8日 毎日新聞)
    http://mainichi.jp/articles/20160609/k00/00m/040/057000c
    「危険運転致死傷罪ファイル028」
    【事故の概要】
    さいたま市浦和区で、自転車の女性(当時41歳)を飲酒運転の車でひき逃げして死亡させたとして、危険運転致死と道交法違反の罪に問われた被告の男(24)の裁判員裁判の判決公判が2016年9月6日、さいたま地裁で開かれ、裁判長は、懲役8年(求刑・懲役12年)を言い渡した。
    事件が起きたのは、2015年11月28日未明。被告の男は飲酒した状態で、友人(懲役3年保護観察付き執行猶予5年)の車を運転し、前方を走っていた浦和区の女性をはねて死亡させ、車を道路上に放置したまま逃走した。
    判決では、飲酒の影響で仮睡状態に陥っていたにもかかわらず、車の運転を中止しなかった点に触れ、「何ら落ち度のない被害者の生命を突如奪い、厳罰を望む遺族の心情は当然」とした。また、被告の男は友人と常習的に飲酒運転を繰り返していたことから、「安易に考えていたことは否めず、経緯や動機に酌むべき事情はない」と述べたうえで、罪を認めて反省の態度を示している点などを踏まえ、懲役8年が相当とした。
    【判決】
    懲役8年(求刑・懲役12年)

    【参考】
    「飲酒ひき逃げに懲役8年…さいたまの劇団員女性死亡“安易に考えた”」(2016年9月7日 埼玉新聞)
    「危険運転致死傷罪ファイル029」
    【事故の概要】
    大阪府東大阪市で、てんかんの発作で意識障害に陥ったまま自動車を運転し、歩行者ら3人を死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた被告の男(51)の判決公判が2017年2月17日、大阪地裁で開かれ、「てんかん発作で、正常な運転ができない恐れがあると認識していた」と危険運転罪の成立を認め、懲役10年(求刑・懲役12年)を言い渡した。
    判決によると、2015年3月、被告の男は運転中に発作で意識を失ったまま赤信号の交差点に時速108キロで進入。歩行していた当時37歳と41歳の男性2人を死亡させ、衝突した乗用車の男性に高次脳機能障害などを伴う重傷を負わせたという。
    公判で弁護側は、「薬を服用して体調管理をしていた。てんかん発作は予測できなかった」と無罪を主張。一方、裁判長は被告が走行中、胸のむかつきなど、てんかん発作の前兆を感じて車を停止させることも可能だったのに運転を続けたと指摘し、「危険運転の故意が認められる」と認定。
    また、事故前にも、てんかん発作で複数回意識を失ったことがあったのに、運転免許証の更新時に「意識喪失の経験がない」と虚偽記載を繰り返し、主治医にも車を運転していることを告げていなかった点を重視。「本来は専門医の指導のもとで安全な運転をすべきだった。事故は起きるべくして起きた結果といえ、強い非難を免れない」と厳しく批判した。
    【判決】
    懲役10年(求刑・懲役12年)

    【参考】
    「てんかん発作で危険運転、懲役10年判決 3人死傷事故で大阪地裁」(2017年2月17日 産経新聞)
    http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/170217/evt17021715290018-n1.html
    「危険運転致死傷罪ファイル030」
    【事故の概要】
    大阪府八尾市の国道170号で7人が死傷した交通事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)などに問われた八尾市の会社員の男(45)の裁判員裁判の判決が2017年3月3日にあり、大阪地裁は懲役11年(求刑・懲役12年)の実刑を言い渡した。
    事件が起きたのは2015年1月4日。被告の男は、乗用車を運転中に対向車線にはみ出し、対向車線を走行していた乗用車と衝突。この車に乗っていた東大阪市の男性(当時80歳)ら2人を死亡させ、5人に重軽傷を負わせた。
    事故当時、被告の男は制限速度が時速50キロだったのに対し、時速163キロで走行しており、裁判長は、「制御するのが困難になる危険な走行で悪質だ」と指摘した。

    【判決】
    懲役11年(求刑・懲役12年)

    【参考】
    「163キロで暴走し7人死傷、被告に懲役11年」(2017年3月4日 読売新聞)
    「危険運転致死傷罪ファイル031」
    【事故の概要】
    神戸市中央区のJR三ノ宮駅前で、無職の男(64)が運転する乗用車が暴走して、歩行者5人に重軽傷を負わせて自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)罪に問われた事故の裁判が2017年3月29日に神戸地裁であり、懲役3年、保護観察付き執行猶予4年(求刑懲役4年)が言い渡された。
    事件があったのは、2016年5月3日午前11時5分頃。被告の男はJR三ノ宮駅北側のロータリーを車で走行中、てんかんの発作で意識を失い暴走させ、歩行者5人をはねて重軽傷を負わせたという。
    弁護側は、被告がてんかんの診断を受けたことがないことなどから、「病気により運転中に意識を失う危険を認識できなかった」と無罪を主張。
    一方、裁判長は、被告が過去に意識障害に陥り、医師からてんかんを疑われたことや、2015年にも意識喪失による追突事故を起こしていたことなどから、「何らかの病気で、正常な運転に支障が生じる恐れを認識していた」と判断。「家族らからの警告を真摯に受け止めず運転を繰り返して事故を発生させ、認識の甘さは厳しく非難されるべきだ」と述べた。

    【判決】
    懲役3年、保護観察付き執行猶予4年(求刑懲役4年)

    【参考】
    「危険運転、男に有罪=三ノ宮駅前暴走事故-神戸地裁」(2017年3月29日 時事通信)
    http://www.jiji.com/jc/article?k=2017032901166&g=soc

     

    自動車運転死傷行為処罰法の詳しい解説は、こちら

    【1】自動車運転死傷行為処罰法成立までの経緯解説
    https://taniharamakoto.com/archives/1234

    【2】自動車運転死傷行為処罰法の内容解説
    https://taniharamakoto.com/archives/1236

  • 北海道の4人死亡事故に危険運転致死傷罪を適用できるか?

    2015年06月12日

    6月6日、北海道砂川市の国道12号で起きた交通事故で、運転していた会社員の男性とその家族、計4名が死亡しました。

    捜査が進むにつれ、事故の全容が徐々にわかってきていますが、今回は、この衝突事故において「危険運転致死傷罪」の適用があるかどうか、について検討したいと思います。

    「北海道4人死亡事故:飲酒は複数の店か 100キロ超走行」(2015年6月11日 毎日新聞)

    車2台が衝突するなどして一家4人が死亡した北海道砂川市で起きた事故で、死亡した長男(16)を車で引きずって逃げたとして、道交法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕された男が、事故前、砂川市内の複数の飲食店で飲酒していたとみられることが関係者への取材でわかったようです。

    また、事故現場近くの防犯カメラの映像を解析したところ、死亡した家族の乗った軽ワゴン車に衝突した乗用車と、ひき逃げをしたトラックが法定速度(時速60キロ)を上回る時速100~110キロで走行していたとみられることもわかったようです。

    北海道警砂川署は、容疑者の男が飲酒運転とスピードオーバーをしていた可能性があるとみて、事故前の行動を含め捜査しているということです。
    この事故について、まずは時系列で概要をまとめておきます。

    ・6月6日午後10時35分ころ、北海道砂川市の国道12号の交差点付近で、乗用車と軽ワゴン車の出会い頭の衝突事故が発生。
    ・7人が病院に搬送され、軽ワゴンを運転していた男性(44)と妻(44)、長女(17)が死亡。次女が重体。乗用車に乗っていた3人もケガをした。
    ・その後、現場から800メートル離れた路上で、長男(16)が死亡しているのが発見される。衝突事故で車外に投げ出された後、別の車に引きずられたとみて、ひき逃げの疑いで捜査が進められる。
    ・7日午前、ひき逃げをしたとして、男(26)が出頭。男は事故を起こした乗用車の後ろをピックアップトラックで走行していた。
    ・8日、道警砂川署は衝突現場に両方の自動車のブレーキ痕がないことから、どちらかが信号無視をした可能性があるとして捜査を続行。なお、乗用車は炎上、軽ワゴン車は現場から約60メートル飛ばされていた。
    ・現場付近の防犯カメラの映像から、乗用車と後続のトラックが猛スピードで走行していたことと、乗用車の進行方向側が赤信号だった可能性が判明。
    ・9日、ひき逃げをしたトラックが蛇行運転をしていた疑いが浮上。トラックに引っかかった被害者を振り落とそうとしていた可能性もあるとみて捜査を継続。なお、トラックの運転手と乗用車の運転手は幼なじみの友人であることが判明。
    ・出頭した男を、道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕。現場から立ち去った理由について、「任意の自動車保険に加入していなかった」と供述。
    また、事故前に同乗者と居酒屋でビールを飲んだと話したことから、飲酒の検知を避けるために逃げた可能性もあるとみて、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)容疑等での立件も視野に捜査。
    ・11日、乗用車に乗っていた3人とトラックに乗っていた2人、計5人が事故当日の夜、居酒屋で飲食していたことが判明。また、砂川署は容疑者の男を札幌地検岩見沢支部に送検した。同署は、乗用車を運転していた男性(27)ら3人のケガの回復を待って事情を聴く方針。
    では、現段階で判明していることから考えていきます。

    1.「危険運転致死傷罪」と「過失運転致死傷罪」の違いとは?
    2014年5月20日に施行された「自動車運転死傷行為処罰法」の中でもっとも重い罪が危険運転致死傷罪です。
    これは、以下の6つの行為を「故意」に行うことで成立します。
    ①アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状態で走行
    ②進行を制御することが困難高速度で走行
    ③進行を制御する技能を有しないで走行
    ④又は車の通行を妨害する目的で走行中の自動車の直前に進入その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転
    ⑤赤色信号等を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転
    ⑥通行禁止道路を進行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転

    最高刑は懲役20年です。

    一方、過失運転致死傷罪は、前方不注視や後方確認義務違反などの「過失」によって自動車事故で人に怪我をさせたり死亡させたりした場合に成立します。
    法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。

    詳しい解説はこちら⇒「自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(2)」
    https://taniharamakoto.com/archives/1236
    2.容疑者に危険運転致死傷罪を適用することはできるか?
    前述の通り、故意か過失かによって刑の重さは格段に違ってきます。
    まずは、ひき逃げをした容疑者のケースから見ていきます。

    今回の事故では、報道内容から危険運転致死傷罪の要件である、①飲酒運転、②スピードオーバーでの走行、⑤赤信号の無視、という可能性が指摘されています。
    また、ひき逃げをしていることから、アルコールの発覚免脱罪の可能性もあります。

    ところで、すでに容疑者は、道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕されていますが、「引きずっていることを知らなかった」と供述しているようです。
    しかし、蛇行運転をしていることから、仮に引きずった認識がなく蛇行運転をしたならば、飲んでいた量が「ビールジョッキ一杯」ではなく、大量に飲酒していたために「正常な運転が困難だった」となっていた可能性も視野に入ってくるでしょう。

    となると、危険運転致死傷罪と、ひき逃による道路交通法違反(救護義務違反)の併合罪となる可能性があります。

    また、飲酒の量が証明できず、危険運転致死傷罪に問うことができなくても、飲酒事故の発覚を免れるために逃げた、ということができれば、発覚免脱罪とひき逃げの併合罪で、最高刑18年の懲役、という可能性もあります。

    仮に引きずっている認識があり、振り払うために蛇行運転していたなら、「未必の故意」による殺人罪の目も出てくることになります。

    未必の故意とは、ある行為が犯罪の被害を生むかもしれないと予測しながら、それでもかまわないと考え、あえてその行為を行う心理状態をいいます。

    つまり、今回の事故では、容疑者が被害者を引きずることで死亡するかもしれないことをわかっていながら、蛇行運転をして振り払おうとしたかどうかの判断、ということになります。
    3.追突した乗用車の運転手の罪はどうなる?
    では、4人が死亡した軽ワゴン車に衝突した乗用車の運転手の罪はどうなるでしょうか?

    警察は、運転手ら3人の回復を待って事情聴取をするとしていますが、現段階でわかっているのは、飲酒運転、スピードオーバー、赤信号無視の可能性です。

    赤信号による交差点進入が立証できれば、危険運転致死傷罪が成立する可能性が高いでしょう。

    今回の事故現場は、約29キロの直線が続く「日本一長い直線道路」として知られ、とくに夜間はスピードを出す車が多く、これまでも度々、交通事故が起きていたようです。

    道警交通企画課によると、北海道内で4人以上が亡くなった事故は1990年以降、約20件あり、その4割が直線の国道で起きているようです。

    また、法定速度を30キロオーバーした場合の致死率は、そうでない場合と比較して63倍にもなるという分析結果があるとのことです。

    現代において、自動車は日常生活に欠かせない便利なものですが、同時に人の命を奪う凶器にもなりうることを今一度認識して、ドライバーのみなさんには安全運転に努めていただきたいと思います。

    交通事故の弁護士相談について
     

  • 薬を飲んだだけで「危険運転致死傷罪」!?

    2014年09月25日

    飲酒運転が、もちろん犯罪であることは誰でも知っているでしょう。

    また、危険ドラッグに関する報道は最近特に多いので、使用が疑われる運転が発覚した場合、事故を起こしていなくても現行犯逮捕されることを知っている人も増えていると思われます。

    詳しい解説はこちら⇒「脱法ハーブで危険運転致死傷罪か!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1530

    「危険ドラッグで自動車運転しただけで現行犯逮捕です」
    https://taniharamakoto.com/archives/1592

    では、市販薬を服用して自動車を運転した場合はどうでしょうか?

    先日、薬物による危険運転致傷容疑で書類送検されるという事故が起きました。

    ドラッグストアで普通に買えるクスリを飲んで起こした自動車事故で書類送検とは、一体どういうことでしょうか?

    「鎮静剤12錠飲み運転、追突事故…女を書類送検」(2014年9月18日 読売新聞)

    宮崎北署は、鎮静剤を大量に服用し、正常な運転が困難な状態で車を運転していたとして、宮崎市在住の女を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)容疑で宮崎地検に書類送検しました。

    報道によると、容疑者の女は6月16日午後1時10分頃、同市の市道で乗用車を運転中、薬物の影響で正常な運転が困難になり、赤信号で停車していた軽乗用車に追突。
    男性(41)に首の捻挫など6日間のけがを負わせた疑いとのことです。

    女は運転前に、「1回1錠、1日3錠まで」と服薬方法が書かれた市販の鎮静剤を12錠飲んでいたようで、男性の110番で捜査員が現場に駆けつけた際、運転席で意識がもうろうとしていたということです。
    鎮静剤を一度に12錠も服用するとは、やはり飲みすぎです。
    今回の事故、まさにそこがポイントとなります。

    もちろん、鎮静剤を飲んで自動車事故を起こしただけでは「自動車運転死傷行為処罰法」の「危険運転致死傷罪」には該当しません。

    鎮静剤を大量に飲むことによって意識がもうろうとなり、“正常な運転が困難”になることを“認識しながら”運転したかどうかが問題となります。

    「自動車運転死傷行為処罰法」
    第2条(危険運転致死傷)
    次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。

    1. アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
    第5条(過失運転致死傷)
    自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
    「危険運転致死傷罪」と「過失運転致死傷罪」の違いは、「故意」か「過失」が問題になります。

    現段階では書類送検であり、まだそこまで認定されているわけではないので、今後の捜査次第ですが、容疑者がこれまでも12錠飲んで、意識がもうろうとなっていたにも関わらず、あえて今回も運転したなら危険運転致傷罪が適用される可能性があります。

    一方、今回初めて大量に飲んだので効き目がわからず、自分では正常に運転できる、と思っていた場合には、過失運転致傷罪が適用される可能性があります。

    いずれにしても、クスリは使用上の注意をよく守って服用しなければいけません。

    自分の身体のために飲むクスリですが、自動車を運転するときは要注意ですね。

    自動車を運転するときは、「クスリはリスク」なのです。

    逆から読んでも「クスリはリスク」ですから、くれぐれも気をつけなければなりませんね。(;´Д`)アウ…

  • 危険ドラッグで自動車運転しただけで現行犯逮捕です

    2014年08月09日

    危険ドラッグに絡む交通事故の急増で、警視庁に動きがあったので解説します。

    「危険ドラッグ、事故なくても逮捕へ 警視庁、道交法積極適用を通知」(2014年8月5日 産経新聞)

    警視庁は5日、危険ドラッグ(脱法ドラッグ)の吸引者による交通事故が相次いでいることを受け、使用が疑われる運転が発覚した場合、道交法違反(過労運転等の禁止)容疑で現行犯逮捕する運用を始め、各警察署などに通知しました。

    以下に挙げるような条件を満たせば、同法が禁じる「薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態での運転」の疑いがあるとみなすということです。

    〇運転手の意識が混濁するなど異常な状態
    〇正常でない運転をしたことが明白
    〇車内に危険ドラッグや吸引具がある

    人身・物損事故を起こした場合、これまでは薬物と事故との因果関係を立証するために数ヵ月も鑑定結果を待たなければいけなかったのですが、今後は事故だけでなく、検問などで事前に危険ドラッグの使用が疑われれば、同法違反容疑を適用し、現行犯で逮捕するとしています。

    愛知県警では7月下旬から、物損事故を起こした運転者に危険ドラッグの使用が疑われる場合、同法違反容疑で現行犯逮捕する運用を始めているようですが、今回さらに一歩踏み込んだ方針といえるでしょう。

    薬物の影響で正常な運転ができない状態で事故を起こした場合は、「危険運転致死傷罪」の適用が問題となりますが、この罪は構成要件が厳格なため、それほど多く適用されるわけではありません。

    また、事故を起こして始めて適用されるため、薬物使用での運転の抑制という観点で言えば、まだ十分に機能しているとは言えません。

    そこで、薬物使用での運転には、事故を起こす前でも摘発してしまおう、というのが今回の運用です。

    薬物使用での運転の抑制の観点からは、評価できる運用だと思います。
    では早速、「道路交通法」を見てみましょう。

    「道路交通法」
    第66条(過労運転等の禁止)
    何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
    これに違反すると、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
    ちなみに、前条第1項とは、酒気を帯びての運転です。
    別の報道によると、2013年上半期に危険ドラッグに絡んで摘発された人数66人に対して、2014年上半期では、すでに145人が摘発。

    また、2014年上半期に摘発した危険ドラッグ使用者による交通事故33件のうち、26件で検出された薬物は、薬事法の指定薬物ではなかったことが判明。

    2013年でも、1年間で摘発した38件のうち28件は未指定で、7割以上で規制対象外の薬物が使われていたようです。

    覚醒剤や大麻は、試薬を使えば短時間で鑑定できるのですが、危険ドラッグは、違法かどうかの鑑定に数ヵ月もかかっていたわけですから、こうした迅速な判断は、危険運転による死傷事故の抑止には一定の効果があると思われます。

    どのような成分が入っていて、人体にどう作用するかわからない危険ドラッグを吸うことも、それで自動車を運転することも、ご法度だということを肝に銘じてほしいと思います。

  • 危険運転はなくならない!?-自動車運転死傷行為処罰法施行1ヶ月

    2014年06月29日

    危険・悪質な運転による死傷事故を厳罰化するために新設された「自動車運転死傷行為処罰法」が施行されて1ヵ月が経ちました。

    「自動車運転死傷行為処罰法」の詳しい解説はこちら
    ⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236

    この度、警視庁がまとめた1ヵ月の摘発状況が公表されたのですが、果たして、どのような結果だったのでしょうか?

    「新規定で18件摘発=悪質事故厳罰化1カ月―警察庁」(2014年6月26日 時事通信)

    警察庁の発表によると、自動車運転死傷行為処罰法の施行から1ヵ月間の摘発状況をまとめたところ、18件に適用されたということです。

    内訳は、「アルコール、薬物、病状の影響で運転に支障が生じる恐れを認識していた危険運転致死傷罪」が最多の8件、「通行禁止道路を進行した危険運転」が1件、「アルコールや薬物の影響の発覚を免れようとする免脱罪」は6件、さらに、これらの違反者が「無免許運転だった場合の罰則の加重」は3件あったとしています。

    そもそも、自動車運転死傷行為処罰法は、栃木県鹿沼市で起きた、てんかん患者の運転手の発作により小学生6人をはねて死亡させた「鹿沼市クレーン車暴走事件」(2011年4月)や「京都祇園軽ワゴン車暴走事故」(2012年4月)、無免許・居眠り運転が原因で起きた「亀岡市登校中児童ら交通事故死事件」などの重大事故の遺族の方などが危険運転の罰則の見直しを望んだことから世論の後押しもあって新設されたものです。

    しかし、単純計算すると、この1ヵ月では40時間に1件の割合で、危険・悪質事故が起きたことになります。

    先日、発生した脱法ハーブに絡んだ池袋の死傷事故など、依然として危険・悪質事故は絶えません。
    詳しい解説はこちら⇒「脱法ハーブで危険運転致死傷罪か!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1530

    新しい法律を作っても、それを国民に広く知らしめなければ、抑止効果は薄いと思います。

    今回の自動車運転死傷行為処罰法の施行については、国民に対する告知が足りないように感じています。

    危険な運転をすると、いかに重い処罰を受けることになるのか、広く国民に知ってもらい、少しでも悲惨な事故が減少するよう祈ります。