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キスが公然わいせつ?
2007年04月28日テレビで見ましたが、アメリカの俳優のリチャード・ギア氏が、インドにて、公衆の面前でインドの女優シルパ・シェティさんにキスをしたことで、インド・ラジャスタン州の裁判所が公然わいせつ容疑の逮捕状を出したそうです。
これについては、国内でも賛否両論とのことです。
わいせつとは、日本の場合「その行為者又はその他の者の性欲を刺激興奮又は満足させる動作であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するもの」(東京高裁昭和27年12月18日判決)という難しい定義ですが、日本の場合は、かなり緩くなっています。
日本では公然わいせつでの逮捕状は出ません。
テレビで専門家が「自分も本当はしたいのにできないという社会環境の中で、そのような行為をした人に怒りを感じるのでしょう」という趣旨の発言をしていました。
この論法に従うと、逮捕状まで出した裁判官は、相当悔しかったということでしょうか。
なお、軽犯罪法1条20号は「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」は拘留または科料に処すると規定しています。
お酒を飲むと露出したくなる傾向の人がいますが、くれぐれもご注意ください。
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刑事責任能力
2007年04月26日2007年5月25日10時40分ころ、JR横浜駅東口の地下街「ポルタ」で、女性(29)に、女児(2)が、果物ナイフで背中を刺されたそうです。重傷ですが、命に別状はないそうです。
女児は、母親らと地下街の噴水を見ているところで女に襲われ、後ろから突然、奈々ちゃんを抱きかかえ、いきなり果物ナイフを取り出し、無言で背中の右側を1回刺したとのこと。
目撃者によると「女は焦点の定まらない危険な目つきをしてブルブルけいれんしていた。意識がないように見えた」と証言しています。「人に狙われている」「自分の前を裸の子供が歩いていた」「子どもに手をかまれてしまうと思い、自分を守るためにやった」などと意味不明の供述をしており、警察では、刑事責任能力に問題がある可能性を視野に入れて捜査しているとのことです。
このような場合、刑事事件になると、弁護人から心神喪失の主張が出されることが多く、社会的に批判されることも多いようです。
刑法第39条1項は「心神喪失者の行為は、罰しない。」、2項は「心神耕弱者の行為は、その刑を減軽する。」と既定しています。この規定が根拠です。
判例によると、「心神喪失とは、精神の障害により事物の理非善悪を弁別する能力またはその弁別に従って行動する能力のない状態をいい、心神耕弱とは、精神の障害がまだこのような能力を欠如する程度には達しないが、その能力の著しく減退した状態をいう。」とされています。
心神を喪失した者に刑罰を科すことが良いのかどうか、という議論があります。
刑法学者達は、なぜ心神喪失だと刑罰を免れるのか、という点について議論をしています。一つの立場は、罪を犯した者が刑罰を受けるのは、自由意思を持つ者が、その自由意思に基づいて罪を犯したのであるから、その行為の責任は取るべきだ、という道義的責任論の立場から、心神喪失の場合には、そのような自由意思はないため、責任を問えないのだ、と論じます。
もう一つの立場は、罪を犯した者が刑罰を受けるのは、社会にとって危険な者は、社会の防衛手段としての刑罰を甘受しなければならないから、刑罰を受けるのである、という社会的責任論の立場から、心神喪失の場合は、刑罰に適応しうる能力が欠けるために責任を問えないのだ、と論じたりします。
刑法を学ばない人にとっては違和感のある議論であると思いますが、刑法にこの規定がある限り、弁護人としては、今後も心神喪失や心神耗弱を主張し続けることになるでしょう。
立法者は、どう考えるでしょうか。
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窃盗か占有離脱物横領か
2007年04月26日ゴルフ場に忍び込み、池ポチャボールを拾って新品同様に磨き上げ、売りさばいていた男(62)が逮捕、起訴されたそうです。
15年間で数千万円の利益を得たとのこと。経費はゴルフ場までの交通費や磨くための費用、売却費用だけなので、ほとんどが利益ということでしょう。
この場合、窃盗罪が成立するか、占有離脱物横領罪が成立するか、という問題があります。
窃盗罪は、「他人の財物を窃取」することであり、事実上の所持(占有)を侵害するところに本質があります。10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法235条)。占有離脱物横領罪は、占有を離れた他人の者を横領した場合であり、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金もしくは科料です(刑法254条)。
池ポチャボールは、元の所有者であるゴルファーは、これを取り返す意思は放棄しているのが通常であり、ゴルファーの占有は離れているといえるでしょう。
しかし、池はゴルフ場が管理する敷地内にあり、その池の中のボールはゴルフ場が占有するボールと言うことができます。そうすると、池ポチャボールを盗み出すことは、ゴルフ場がボールに対して持っている事実上の所持(占有)を侵害していることになり、窃盗罪が成立します。
このような観点から、過去の判例では、客が旅館内の便所でなくした財布は旅館主の占有にあるので窃盗罪としたものがあります。
それにしても、池ポチャボールを盗んで10年以下の懲役又は50万円以下の罰金であることを考えると、先日成立した「自動車運転過失致死傷罪」で、人を死亡させた場合でも、その罰則が、懲役7年以下の懲役または禁錮もしくは100万円以下の罰金であるのは軽い気がします。
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誌上セミナー
2007年04月21日今日は、ビジネス雑誌の日経ビジネスアソシエ主催の読者参加型誌上セミナー「交渉・説得の技術」の講師を務めてきました。
冒頭、「私の本を1冊でも読んでいる方~?」と聞いたところ、
「し~ん・・・」
誰も読んでくれていませんでした。
波乱の幕開けで始まったセミナー。
1日セミナーだったので、疲れましたが、有意義な一日だったと思います。
連載記事になるそうなので、楽しみにしています。
思いどおりに他人を動かす交渉・説得の技術―現役弁護士が書いた
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自動車運転過失致死傷罪成立
2007年04月19日「自動車運転過失致死傷罪」が、2007年5月17日の衆議院本会議で成立しました。早ければ6月上旬にも施行される予定との見通しです。
現在、自動車事故の罰則は、刑法211条の「業務上過失致死傷罪」の5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金か、刑法208条の2の「危険運転致傷罪」の15年以下の懲役、「危険運転致死罪」の1年以上20年以下の有期懲役です。
今回の「自動車運転過失致死傷罪」の罰則は、懲役7年以下の懲役または禁錮もしくは100万円以下の罰金ということです。
最近悪質な運手による悲惨な重大事故が多くみられ、懲役刑の上限からくる刑の軽さに、被害者や遺族等から批判の声があがっていました。私もまた、悲惨な交通事故の被害者側の弁護活動を通し、業務上過失致死傷罪の上限は軽いと思っておりました。
これで一応の決着になりますが、更に法定刑の見直しを求めていきたいと思います。
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若手会
2007年04月19日昨日は弁護士会の会派の「若手会」という催しがありました。弁護士登録15年までが「若手」だそうです。
私は平成6年登録なので、弁護士登録13年です。もうすぐ若手ではなくなるようです。見た目はかなり若いと思いますが。。
今、弁護士が大幅に増員され、就職もままならない状態にあります。若手の話を聞いていると、勤務弁護士を続けるか、独立を目指してゆくのか、皆将来に不安を抱えながら日々の業務を行っています。
私の事務所では、今年4名の新人弁護士採用が決定しており、積極的に採用活動を行っております。
しかし、全体としても、弁護士業務の拡大を図っていかなければならない、と感じた日でした。
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爆弾テロか!?
2007年04月15日2007年4月14日11時25分ころ、東京都千代田区霞が関の警視庁本庁舎の正門門扉にワンボックスカーが突っ込んだそうです。
運転していたオトコは、60歳の男性で、「誰かに追い掛けられている」などと支離滅裂なことを話しているそうです。
爆弾テロじゃなくて良かったと思います。
爆弾テロで、原子力発電所など狙われたら、たまったものではありません。
マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで
9.11 ~N.Y.同時多発テロの衝撃の真実~ -
ウドさんの過失割合
2007年04月14日お笑いコンビ「キャイ~ン」のウド鈴木さんが、2007年4月13日13時ころに、対向車線から右折してきた女性運転の車と交通事故を起こしたそうです。
ニュースによると、次のとおり。
場所 お台場のフジテレビ前交差点
状況 ウドさん 交差点を直進
女性 交差点を右折供述 ウドさん 「直進信号が青だったと思う」
女性(37) 「ウド車が赤信号で直進してきた」怪我 女性が左骨盤の打撲で軽傷
事故状況についての供述が異なるようですが、信号機の状況により過失割合が異なってきます。
ウドさん(青):女性(青)=2:8
ウドさん(赤):女性(右矢印青)=100:0
ウドさん(赤):女性(赤)=50:50女性は軽傷とのことですが、頸椎捻挫や腰椎捻挫などは、翌日などから痛みが出てくることもあります。注意が必要です。
青信号に従っていても交通事故に遭うことがありますので、車の運転には十分注意していただきたいと思います。
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弁護士募集打ち切り
2007年04月12日みらい総合法律事務所では、これまで経験弁護士を募集しておりましたが、ここで一旦打ち切ることに致しました。
ありがとうございました。<(_ _)>
さあ、これで、人員計画も整いました。
より一層気合いを入れて仕事に打ち込もうと思います。
今年こそは週末をお休みにしようと思っていたのですが、やはり休めそうにありません。
トホホ・・・
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売り手市場と買い手市場
2007年04月03日労務行政研究所の調査によると、大手企業の約3割が今年4月に入社した新入社員の初任給を引き上げたそうです。「超売り手市場」ということです。
更なる景気回復を期待したいところです。
逆に、弁護士業界では、初任給は下がっています。法科大学院、新司法試験制度などができて、大量の新規弁護士資格取得者が出てきているためです。
こちらは、「超買い手市場」です。
募集をすると、相当数の問い合わせ、応募を受けます。就職できない人も多いでしょう。その人達は、就職浪人になるか、いきなり自宅事務所として登録して業務を行うか、ということになるのでしょうか。あくまで自分の経験ですが、司法研修所を卒業しても、実務では、いきなり一人で開業できるほど甘い世界ではないというのが実感です。
もう少し弁護士増員に時間をかけた方が良いと思います。
ところで、雑誌「ZAITEN」6月号の特集は「弁護士 淘汰時代」でした。
そんな時代がそこまで来ています。