ブログ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 16
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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  • 「わしゃ、もう年だから」は通用するか?

    2010年11月15日

    私のメルマガ「弁護士がこっそり教える絶対に負けない議論の奥義」より

    あるところに、ガソリンスタンドの脇で小さなレストランを経営し
    ていた男がいました。

    その地で商売を始めて25年、店は一向に大きくなりません。

    このまま生涯を終えるかと思われました。

    ところが、お店のある国道から少し離れた場所に、新しいハイウェイ
    ができました。

    その影響は大きく、レストランの客は激減し、資金繰りが破綻。

    店は競売になり、男は全てを失いました。

    その時の年齢は、60歳を超えていました。

    最悪の状況です。

    「死ぬしかないか・・・・」

    しかし、男は諦めませんでした。

    男は、物質的な財産は全て失いました。

    しかし、男が作り上げてきた料理のノウハウは残っていました。

    男は、そのノウハウでフランチャイズビジネスを展開しました。

    あなたなら、この状況で、何店舗くらい権利を買ってくれるように
    営業でまわりますか?

    10店舗くらいですか?

    20店舗いけますか?

    男は、1000軒を超える店舗を回ったといいます。

    その結果、フランチャイズ店舗が増え、瞬く間に世界で1万店を超
    えるまでになりました。

    男の名はカーネル・サンダース。

    店は、もちろん、「ケンターキー・フライド・チキン」です。

    彼の前では、「私はもう年だから」という言い訳は通用しません。

    「自分なりに一生懸命やってもダメだった」という言い訳も通用し
    ません。

    人には常にチャンスがあること、

    そして、

    成功するには、成功するまで続けることだ、

    ということを教えてくれます。

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  • 弁護士は黒を白と言いくるめる?

    2010年11月13日

    弁護士に対する質問で、多いのは、「よく悪い人達を助ける弁護ができますね?よく黒を白だと言いくるめて平気ですね?」というものだ。

    「良い」「悪い」の判断基準が不明だが、刑事事件でいうと、罪を犯したと疑われている被告人を守るのが弁護士の仕事だ。

    だから、弁護士としては、仕事をしているだけのことである。

    そもそも、仕事をする相手の感情に完全に共感する必要はない。

    自社の商品を売る営業マンの中に、全ての商品について「絶対に他社の商品の方より優れている。全ての人に使って欲しい。その方が全世界がハッピーになるはずだ」と信じて疑わない人が何人いるだろうか。

    他者の商品の方が優れていると思っていても、自社の商品の優位性を説明し、なんとか自社の商品を購入してもらおうとする営業マンがほとんどのはずだ。

    それが仕事だからだ。

    罪を犯した疑いで逮捕され、あるいは起訴された被疑者、被告人を守るのが刑事弁護士の仕事だ。

    過去の事実だから、本当の真実を知ることはできない。

    弁護士は、証拠を吟味し、被疑者、被告人の言い分に耳を傾け、彼らの権利を擁護するよう全力を尽くすのだ。

    不思議なことではないと思うが、どうだろうか。

    ただ、「黒を白だと言いくるめる」のは弁護士の仕事ではない。

    特捜検事から弁護士に転身し、「闇の守護神」と呼ばれた田中森一氏は、「正義の正体」(集英社インターナショナル)の中で次のように言っている。

    「そもそもの大前提として、『真実は一つだ』と認識した上で、その真実に対してどちらから光を当てるかの違いが検事と弁護士の違いだと思っている。白を黒と言うのが弁護士なのではなく、白はあくまで白、黒は黒と認めて、そのう上で、『じゃあ、依頼人のためにどうしようか』と考えるのが弁護士の仕事」

    私の場合は、ちょっと違う。

    私の大前提は、「本当の真実は、誰にもわからない」ということだ。

    過去の事実について、何が真実かは、誰もわからない。検事も、弁護士も、裁判官もわからないはずだ。

    あくまで証拠の基づいて「真実らしき事実」が判断される。それが本当の真実かどうかはわからない。

    弁護士は、ここでも証拠を吟味し、被告人の言い分に耳を傾け、被告人の権利を守るだけだ。

    結果的に、被告人が無罪になることがある。

    しかし、その場合も、真実無罪だったかどうかは誰にもわからない。

    そういう世界で生きているのが弁護士だと思っている。

  • 車にしがみついて、何キロ走れるか?

    2010年11月12日

    不思議な事件です。

    2010年12月11日午後10時半ごろ、山梨県山中湖村山中の国道138号で事故がありました。

    妻が、夫(39)を迎えに行く途中、信号待ちで停車していた薬剤散布車の後部にしがみつく夫を発見。

    薬剤頒布車を追いかけたところ、約1.7キロ先の路上で倒れている夫を発見し、119番通報した。男性は頭の骨を折り意識不明の重体。酒を飲んでいたという。

    運転していた男性会社員(34)は、男性がしがみついていたことに気付いていなかったとのこと。
     
    http://news.livedoor.com/article/detail/5202981/

    薬剤頒布車の運転手は、男性がしがみついていたことに気づいていなかったとのことですが、これが本当で、かつ気づかないことに過失がなければ罪に問われることはありません。

    しかし、この事件には多くの疑問があります。

    ・この男性は、どうやって現場まで行き、どうやって帰ろうと思っていたのか。
    (まさか薬剤頒布車で現場まで行き、帰りもそうしようと思ったわけではあるまい)

    ・妻は、どういう契機で夫を迎えに行くことになったのか。
    (夫が呼んだのであれば、薬剤頒布車にしがみついていること自体が不合理である)

    ・妻は、交差点でどうやって夫を発見したのか
    (反対方向であれば、後部にしがみつく人間を発見できないし、同一方向であれば、夫は家とは反対方向に行こうとしていたことになる)

    真相解明が待たれるが、おそらくニュースにはならないだろう。

    今回の教訓は、

    「飲むなら、しがみつくな。しがみつくなら、飲むな」

    いや、そういう問題ではない。

    「車にしがみつくのは、やめよう」

  • 人を動かす話し方

    2010年11月10日

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    「感情的対立を避けて要求を通す」というタイトルで私のインタビュー記事が掲載されています。

    3つのコツ

    (1)質問を重ね、落としどころを探る
    (2)「仮~」で相手の腹を探る
    (3)「しかし」ではなく「だからこそ」を使う

  • シンプル・イズ・ベストは正しいか?

    2010年11月08日

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    最近、太ってきたので、知識だけでもつけようと思い、ボディビルの本を読んだ。

    内容は、

    ①食事のコントロール
    ②筋肉に刺激を与える
    ③休息

    の3つだけ。

    この3つで1冊ができあがっている。

    考えてみれば、この3つは当たり前だ。

    しかし、真実は、えてして、当たり前で、シンプルなものだ。

    そして、美しい。

    翻って、仕事で成功する秘訣もシンプルだ。

    ①目標を決める
    ②目標が達成されるまでとことんやり抜く
    ③報酬と期待以上の仕事をする

    この3つができれば、ぐんぐん上に昇ってゆくだろう。

    間違いない。

    逆に太るための秘訣を考えてみた。

    ①食う
    ②寝る

    これは・・・

    とてもシンプルだ。2つになってしまった。美しい。

    しかし、これを徹底的に実践した後の身体は、・・・

    とても美しいとは言えないだろう。

  • 弁護士は、どうやって事件の内容を憶えるのか?

    2010年11月07日

    一般事件を扱う弁護士は、平均して50件程度は、常時事件を抱えているだろう。

    テレビドラマのように、1件の事件にかかりきりになることはない。

    私の場合は、事務所の各弁護士の事件を管理するので、その何倍も多い。

    交通事故の事件の訴状を書いている途中に、相続事件の電話がかかってきて、それが終わると、事業再生の打ち合わせに入る、というようなことを日常的にやっている。

    「よく混乱しませんね?」

    そう言われることがある。

    ほとんど混乱しない。それには理由がある。

    私たちが扱う事件には、ストーリーがある。私たちは、ストーリーとして各事件を記憶している。

    ストーリーとして記憶していれば、いつでもすぐに内容に入り込むことができる。

    それは、あたかも連続ドラマを観ているのと同じである。

    連続ドラマはぶつ切りである。曜日によっていくつものドラマを平行して観る(私はほとんどテレビを観ないが・・・)

    バラエティを観終わったと思ったら、すぐにドラマが始まる。

    ドラマが始まった瞬間、視聴者は、前回のドラマの続きに入り込む。

    それは、ドラマがストーリーだからだ。

    ストーリーで憶えていれば、他のことをしていても、すぐに入り込むことができるのである。

    したがって、私たち弁護士も、多くの案件を抱え、全く違う作業をしながらでも、すぐに頭を切り替えて電話に出たり、打ち合わせをしたりすることができるのだ。

    そういえば、漫画の単行本の最新刊を買うと、前の巻から読み始める人がいる。それは、ストーリーを忘れているためだ。

    それは仕方ない。いくらストーリーであっても、時間がたてば忘れる。

    知人の妻は、「ワンピース」の最新刊を買うと、3巻前から読み始めるそうだ。

    そのせいで、その知人は、妻より先に最新刊を読めると喜んでいた。

    幸せな人だ。

  • 課題をやらないと、なぜ呪われるのか?

    2010年11月05日

    人が動くのは、自分に精神的・物質的にメリットがあるか、あるいはデメリットを回避する時だ。

    ある教師がこれをやった。

    岩手県盛岡市の市立中学校で、30代の女性教諭が英語の課題に「これをやらなければ呪いがかかりますよ」と書いて、3年生約140人に配布していたという。

    この中学校は、学級崩壊した小学校から進学し、授業態度に問題がある生徒が多い現在の3年生を、この教諭が熱心な指導で、水準学力レベルに引き上げたという。

    女性教諭は、生徒に課題をさせたいがために、呪いの言葉を書いてしまったのだろう。

    今回、検討するのは、この呪いの言葉が脅迫罪に該当するかどうかだ。

    刑法222条
     生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

    呪いは、生命、身体、自由、名誉又は財産の全ての害を加えそうである。

    しかし、これで脅迫罪成立は、常識はずれのように思われる。

    実は、脅迫の内容は、自分が直接・関節にその惹起を支配・左右しうるものとして告知される必要がある。

    この女性教諭は、おそらく呪術師ではない。本当に呪いを左右することはできないだろう。

    したがって、脅迫罪は成立しない。

    今回は、教育者として不適切な行為と言えるかどうか、が問題とされるだけだ。

    しかし、呪術師が、心底その呪術師を信奉している信者に対し、「お布施を持ってこないと、呪われるぞ」などと告知したら、脅迫罪や強要罪が成立する余地はある。

    そういえば、子供のころ、辛い食べ物が好きだったが、親から「辛い物を食べ過ぎると頭がバカになるよ」と言われ、怖くなって自粛したことがあった。

    親と子供の関係から考えると、子供が恐れるのももっともだ。

    法律を知っていたら、「それは脅迫罪だ」と言ったのだろうか。

    私は自粛したが、次のような子供がいたら、コワイ。

    母親「辛い物ばかり食べてると、バカになるよ」
    子供「ああ、そういえば、お母さんは、昔から辛い物が好きだったと言ってたね」

  • 民事再生で影響が出る業種?

    2010年11月04日

    熊本ラーメンの「桂花ラーメン」が、2010年11月1日、熊本地裁に民事再生手続を申し立てた。

    http://news.livedoor.com/article/detail/5113168/

    そのニュースを受け、同店舗では、いつもの2倍以上の客が来て、行列までできたという。

    それはあり得るところだろう。ラーメン屋が民事再生を申し立てても、店舗自体にマイナスイメージを抱くことはない。味が変わるわけではないからだ。

    逆に、広告効果により、来店客が増えることは予想される。私も、桂花ラーメンには、しばらく行っていなかったが、味を思い出し、近々行きたくなった。

    また、「希少性の法則」も働く。「希少性の法則」というのは、人は、今得られているものが、得られなくなると思うと、急にそれが欲しくてたまらなくなる、という法則である。

    「本日限り!」「残り5人まで」などと言われると、申込をしないと損をするような気になるのがこれだ。

    今回、民事再生申立によって、すぐに店舗閉鎖になるわけではないが、店舗が閉鎖されたり、桂花ラーメンがなくなってしまうかもしれない、と考えた人々は、希少性の法則により、店舗に押しかけているのだろう。

    しばらくすると、それも落ち着くはずだ。

    今回、ラーメン屋なので、マイナスイメージがないが、法律事務所が民事再生手続を申し立てたら、もうおしまいだ。

    儲かっていない弁護士に依頼したくないし、債権債務関係を処理できない弁護士に依頼したくないからだ。

    同じことで、経営コンサルティング会社の民事再生申立も厳しい。コンサルティングされている会社が「まさか、ウチも?」と不安になるからだ。

    他にも警備会社が空き巣に入られたら信用失墜だし、プロの格闘家が素人に喧嘩で負けるわけにはいかない。

    自分の専門分野で他人より秀でているがゆえに、プロフェッショナルであり続けられるところ、専門性に疑問を抱かせるような出来事があった場合には、信用の失墜が起こるのもやむを得ない。

    私は、少し痩せたいと思っているが、でっぷりと太ったインストラクターが教えているスポーツクラブには、やはり行きたくない。

  • スリ眼と亀眼?

    2010年11月02日

    少し前のブログでスリの「ケツパーの吉」が逮捕された件を書いた。

    その際、「ケツ」はわかるが、「パー」が不明だと書いたところ、「パーは、パース(財布)の略だよ」と親切に教えてくれた人がいた。

    警察の隠語だろう。

    そういえば、司法修習生時代に、警察の人から、犯人の見分け方を教えてもらったことがある。

    やはり、犯罪を犯す人は、眼を見ればわかるらしい。

    スリの場合には、周囲の人の持ち物や洋服などを鋭くチェックする「スリ眼」(すりがん)という独特の眼をしているらしい。

    そして、電車のホームや電車内などで、女性の腰のあたりをずっと見たりして、鋭くチェックする人も、独特の眼をしているらしく、痴漢の疑いを抱くという。

    ちなみに、この場合には、「エロ眼」(えろがん)とか、「亀眼」(かめがん)と言うらしい。

    世の男性陣よ、「あんた、エロ眼になってるよ」と言われないように気を付けよう

  • 無言電話は傷害罪!?

    2010年09月28日

    約1年半にわたり、1万951回の無言電話をかけて「不安性障害」にさせたとして、兵庫県警宝塚署は、2010年9月27日、傷害容疑で自称書道家(44)を逮捕したとのことです。

    「不安性障害」というのは、簡単にいうと、通常人に比べてとても大きな不安を感じてしまい、その結果日常生活に支障をきたしてしまう症状のようです。

    無言電話の理由は、被害者である女性の長女(11)が夕方にピアノの練習をしていることだそうで、音に腹を立て、「音がうるさい」と怒鳴り込んだこともあったといいます。
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100928-00000515-san-soci

    無言電話をかけて「傷害罪」というのは、ちょっと違和感があるのではないでしょうか。

    ここで、刑法の条文を見てみましょう。

    刑法第204条
    人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    つまり、傷害罪が成立するためには、「身体を傷害」しなければなりません。

    今回は、「不安性障害」にさせたことが「身体を傷害した」と言えるかどうかが問題となります。

    「傷害」というと、目に見える傷のような気がしますよね。

    しかし、刑法では、「傷害」とは、「人の生理機能に障害を与えること」を言います。

    したがって、必ずしも目に見える傷でなくても、傷害になり得ます。

    過去の判例では、失神させた場合、メチルアルコールを飲ませてめまい・吐き気をおこさせた場合、髪を相当数抜いた場合、などがあります。

    結構広いですよね。

    面白いのは、髪の毛を相当数抜けば傷害なのに、婦人の髪を根元から切り取った場合には、傷害より軽い暴行罪にしかならないということです(大判明治45年6月20日)。

    髪を抜けば生理機能に障害が発生するが、髪を切るだけでは、生理機能に障害が発生することにはならない、という理由です。

    そうすると、髭や鼻毛、爪などを切っても傷害になりませんね。
    (もちろん暴行にはなりえます)

    「あっ、鼻毛伸びてるよ」と言って、相手の承諾を得ずにいきなり切ったら暴行罪になる可能性があり、ブチッと抜くと傷害罪になる可能性がある、ということです。

    立件されることはほとんどないでしょうが・・・

    今回の場合、無言電話を1万回以上かけ続け、その結果、「不安性障害」という生理機能に障害を発生させたことになるので、傷害罪で逮捕された、ということです。

    法律って、難しいですね。