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頼まれて殺害した場合は罪?
2011年09月18日
10月17日、東京都小平市の公園で、44歳の女性を、19歳の少年が、刃渡り18センチの包丁で刺して殺害しようとしたとして、警察に逮捕されました。容疑は殺人未遂です。
女性は亡くなったとのことなので、容疑を殺人罪に切り替えて捜査しているものと思われます。
少年は、「彼女に頼まれて刺した。彼女を病気から救ってあげたかった」と供述しているとのことです。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20111018-00000017-jnn-soci
少年が言っていることが本当なら、「殺人罪」ではなく、「同意殺人罪」になります。
本人に頼まれて殺した場合の罪です。
切腹しようとする人が、介錯を頼み、「ごめん!」と言って首を刎ねるのも、これにあたります。
殺人罪の法定刑は、死刑・無期懲役または5年以上20年以下の懲役ですが、同意殺人罪になると、6月以上7年以下の懲役、とかなり軽くなります。
本人の自己決定権を尊重しているわけです。
安楽死の場面でしばしば問題となります。
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万引犯が強盗罪?
2011年09月17日
本日、17日午前9時20分頃、JR東京駅山手線内回りのホームで、自営業の男性が、売店から缶ビールを万引きしようとした男に注意したところ、男から、刃物で切りつけられたとのことです。注意した方の男性は、左手親指のあたりを切られたが、軽傷。男は刃物を持ったまま逃走しており、警視庁丸の内署は強盗傷害容疑で行方を追っているのことです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111017-00000418-yom-soci
万引きは、窃盗罪ですが、警察は、なぜ強盗傷害容疑で捜査をしているのでしょうか?
刃物で斬りつけるのは、傷害罪ですから、窃盗罪と傷害罪が成立するのではないでしょうか?
実は、刑法には、事後強盗罪というのがあります。
これは、窃盗犯人が、盗んだ物を取り返されるのを防ぎ、または逮捕を免れ、あるいは罪証を隠滅するために暴行又は脅迫した場合に成立するものです。
法定刑は、5年以上20年以下で、強盗罪と同じです。
ちなみに、窃盗罪は、1年以上10年以下の懲役または50万円以下の罰金ですから、かなり重くなっています。
万引きが見つかった以上、神妙にお縄になれば良かったのに、抵抗したばかりに、大変な罪に問われてしまうのです。
万引きはいけませんが、見つかった時に逃げるのはもっと重くなることを憶えておきましょう。
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過労運転は道交法違反
2011年09月04日
大阪府茨木市の名神高速道路で2011年6月に、過労状態の運転手が運転する大型トラックが渋滞の車列に突っ込み6人が死傷した事故がありました。すでに運転者は、自動車運転過失致死傷罪で起訴されていますが、このたび、運転者の使用者である会社と上司である営業所長が起訴されました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111004-00000510-san-soci
罪は道路交通法違反です。
道路交通法66条
何人も、前条第1項(酒気帯び)に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。道路交通法75条1項
自動車の使用者は、その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、次の各号のずれかに掲げる行為をすることを命じ、又は自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認してはならない。
4号 第66条の規定に違反して自動車を運転すること。つまり、トラックの運転者が過労により、正常な運転ができない状態であることを知りながら、運転するように命じたことが、道路交通法75条に違反する、ということです。
この場合の法定刑は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。結構重いです。
自分が過労状態で運転しても、同じく犯罪になります。
気を付けて下さい。
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すき家に強盗多発
2011年09月02日
牛丼の「すき家」に強盗が多発しているそうです。昨年は1年間で7件だったが、今年は9月だけで6件も発生とのこと(9月28日現在)。
中には、「毎度おなじみのすき家強盗です」などと脅してくる例もあるらしいです。
Googleで「すき家」と検索すると、関連キーワードで、「すき家強盗」と出てきます。
これはおかしいでしょ。┐( ̄ヘ ̄)┌オカシイデショ
埼玉県警幹部によると、「インターネット上に『狙いやすい』などの情報や夜間の防犯状況が流れており、ゲーム感覚で犯行に及ぶものもいる」とのことです。
これもおかしいでしょ。┐( ̄ヘ ̄)┌オカシイデショ
ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111001-00000513-san-sociゲーム感覚で強盗する感覚は理解できませんが、強盗は、ゲーム感覚でやるほど生やさしい犯罪ではありません。
刑法236条によると、強盗罪の法定刑は、5年以上20年以下です。
「すき家」の店員も、おとなしい人ばかりではありません。\(*`∧´)/ナンダト!
抵抗してくる人もいます。
その際、もみ合いになったり、殴ったりして、店員に擦り傷でも負わせると、強盗致傷罪です。
刑法240条によると、強盗致傷罪の法定刑は、6年以上20年以下の懲役、又は無期懲役です。
ちなみに、殺人罪の場合、刑法199条によると、法定刑は、5年以上の懲役、無期懲役、死刑です。
如何に強盗罪が重い罪かがわかると思います。
普通、執行猶予もつきません。
決してゲーム感覚でやるような犯罪ではないのです。
強盗するつもりだった人も、強盗罪の怖さがわかったら、諦めて牛丼食べて帰りましょう。
そして、「毎度おなじみのすき家強盗」ではなく、「なじみ客」になることから始めましょう。
( ´_ゝ`)ノ ナミチョーダイ! -
ピストバイクは、道路交通法違反
2011年09月01日
ブレーキの付いていないピストバイク(ピスト)と呼ばれる競技用自転車で公道を走り、道路交通法違反(制動装置不良)容疑で摘発されるケースが相次いでいるらしい。9月28日には東京都内で、お笑いコンビ「チュートリアル」の福田充徳氏(36)も同種の自転車で交通切符を切られた。
さらに、昨年には、歩行者の死亡事故も起きているという。
ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111001-00000401-yom-soci法律は、どうなっているか。
道交法63条の9第1項と、これに基づいて定められた道交法施行規則9条の3によって、自転車には、
「前車輪及び後車輪を制動すること」
という制動装置が求められ、かつ、
「乾燥した平たんな舗装路面において、制動初速度が十キロメートル毎時のとき、制動装置の操作を開始した場所から三メートル以内の距離で円滑に自転車を停止させる性能を有すること」
が求められる。
これに違反すると、道交法120条により、5万円以下の罰金だ。
ピストバイクは、この要件を満たさない。
ファッション性を重視してブレーキを取り外す人もいるというが、まずカッコ良く走っているところ、警察官に呼び止められて注意されたり、書類送検されたりするのはむしろカッコ悪い。
またうまく停止できずに転んだり、事故を起こすのもむしろカッコ悪い。
ファッション性を重視するのは良いが、法律は守って欲しいものである。
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中学生が決闘すると?
2011年09月01日
珍しく、「決闘罪」で逮捕者が出ました。京都府で、中学校計9校の男子生徒が参加して乱闘。
男子生徒3人が内臓を損傷するなどの怪我を負った、ということです。
1人、中学3年生の男子生徒(15)が逮捕され、26人が書類送検されました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110901-00000061-san-l26
決闘罪というのは、「決闘罪に関する件」という法律に定められています。
決闘を申し込むと、6月以上3年以下の懲役
決闘を受けて立つと、6月以上3年以下の懲役
決闘すると、2年以上5年以下の懲役です。
ちなみに、今回、怪我をした男子生徒がいるので、「傷害罪」も成立します。
過去のブログに決闘罪について詳しく書いておきましたが、これで逮捕者が出るとは。
決闘罪の記事
http://ameblo.jp/mtanihara/entry-10799907956.htmlちなみに、女性を取り合って男性が決闘する場面があるかもしれませんが、そうすると、双方怪我がなくても2人とも逮捕され、女性は他の男性に取られてしまうかもしれません。
そうならないためにも、決闘は避け、男同士、平和に「野球拳」とかで勝負を決するようにしましょう。
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逮捕勾留され、1億3000万円請求できるか?
2011年07月30日茨城県利根町布川(ふかわ)で1967年に強盗殺人「布川事件」がありました。
この事件、今年6月に再審無罪が確定しています。
無罪が確定した2人(64歳と65歳)が、水戸地裁土浦支部に刑事補償を請求しました。
請求額は各約1億3000万円。
これは、無罪であるにもかかわらず逮捕勾留されたことによる損害を補償してもらう請求なので、国家賠償ではありません。
国家賠償となると、警察や検察庁の捜査が違法ということになりますが、そうすると、適正な捜査であった場合には、何も得られないことになってしまいます。
そこで、「刑事補償法」という特別の法律を作って、無罪の人を救済しようとしているのです。
今回請求したのは、67年10月から仮釈放された96年11月までの約29年分で、刑事補償法の上限金額である1日12,500円。
実は、刑事補償法では、補償金額が定められており、1日につき、1,000円~12,500円までとなっています。
今回は、その上限金額を請求したわけです。
ちなみに、最低の1日1,000円で計算すると、約1,000万円強。
なんと10倍以上も違うのです。
29年間も無実の罪で囚われて、1,000万円の補償ではたまりませんね。
裁判所には、適正な補償額を算定して欲しいと思います。
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サプライズは業務上過失致死罪?
2011年07月29日
とんだサプライズです。27日午後10時ごろ、石川県の海岸で、誕生日のサプライズで、砂浜に穴を掘って本人を落とそうとしたにもかかわらず、本人を含めた夫婦で落とし穴に埋まって窒息死した事件がありました。
妻が友人数人と約2.5メートルの穴を掘ってブルーシートを覆っていたものの、周囲が暗くて自分も夫と一緒に落ちてしまったということです。
警察は、業務上過失致死罪の疑いで捜査しているとのことです。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4812705.html
ちょっと違和感があるのは、「業務上過失致死罪」の疑い、という点です。
「穴を掘って落とすのが『業務』か!?」ということですね。
業務上過失致死罪にいう「業務」とは、「本来人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、かつその行為は他人の生命身体等に危害を加える虞あるものであることを必要とする」(最決昭和60年10月21日)とされています。
必ずしも「仕事」にはかかわりません。
普段レジャーのために自動車を運転するのも、運転免許を取って反復継続して行い、かつ自動車は他人の生命身体に危害を加える虞がありますので、「業務」となります。
過去の判例では、「狩猟」も、「業務」であるとしています。
しかし、たとえば妻が家事や育児を行うのは、「妻」という社会生活上の地位に基づいて反復継続して行いますが、他人の生命身体等に危害を与える虞ある行為ではないので、「業務」ではありません。
では、「穴を掘って落とすサプライズは?」
確かに「サプライズ」は、妻や友人としての社会的地位に基づいて反復継続するかもしれません。
しかし、「穴を掘って落とす」のが、反復継続するかは疑問です。
1回限りで反復継続を予定していなければ、業務上過失致死罪は成立しません。
重過失致死罪、あるいは過失致死罪になるのではないでしょうか。
業務上過失致死罪及び重過失致死罪の法定刑は、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
過失致死罪は、50万円以下の罰金です。
かなり法定刑に違いがありますね。
ちなみに、自転車を運転して歩行者と事故を起こし、怪我をさせた場合、これまでは過失致傷、あるいは重過失致傷でした。
業務上過失致傷罪や自動車運転過失致傷罪は成立しません。
しかし、最近の自転車に対する社会の認識は、「他人の生命身体等に危害を与える虞」があると考えるようになってきると思えますので、そのうち、「業務上過失致死傷罪」が適用されるようになるかもしれません。
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出会い系サイトの「サクラ」がバレた?
2011年07月23日
出会い系サイトでの「サクラ」は、違法であり、サイト利用料その他約597万円を支払え。そんな判決が、さいたま地裁で出されました。
訴えたのは、埼玉県春日部市の女性(31)。
この女性は、約1年4ヶ月で、この出会い系サイトに対し、543万6000円を支払ったそうです。
女性は、出会い系サイト上で、会員になりすました「サクラ」と頻繁にメールをやりとりし、そのメールのやりとりの都度課金されることにより、約1年4ヶ月で約543万円を支払ったそうです。
判決では、「交信相手が直接のやりとりに応じずサイト上でのやりとりを求め、ポイントの追加購入に動いたことは、サクラであることを示している」と指摘。その上で「高額なサイト利用料を徴収した点などから違法行為に当たる」と認定しました。
女性は、メールをやりとりしているのが会員である男性で、その男性との出会いを求めて出会い系サイトを利用しています。
ところが、相手をしている男性は、会員になりすました「サクラ」だったとするならば、会員である女性を騙していることになります。
相手の男性が会員ではなく「サクラ」だと知っていれば、決してお金を払わないでしょう。その意味で、詐欺的な行為であると言え、返還請求が可能となります。
なお、出会い系サイト側は控訴したそうですので、まだ確定したわけではありません。
ところで、実演販売等でも「サクラ」がいて、拍手をしたり、買うふりをして客の購買行動を後押しすることがありますが、この「サクラ」も違法でしょうか。
この場合も、確かに他の客にしてみれば、「ああ、他の人が感動して拍手してるし、良い商品だと思って買っている。きっと良い商品に違いない」と誤解を生じさせるという意味では騙していると言えるでしょう。
しかし、いくら他の人が評価したと言っても、買うかどうかを決めるのは、あくまで本人。「サクラ」は購買行動を後押ししたに過ぎません。
「サクラが拍手したり、買うふりをしたりしなければ、決して買わなかった」とは言えないでしょう。
実演販売で「サクラ」を使うことは、販売方法としては不適切だと思いますが、法的に返還請求ができるか、と言えば、難しいのではないかと思います。
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福岡県が酒類提供店に「イエローカード」
2011年07月22日都道府県毎に、飲酒運転事故件数がカウントされている。
飲酒運転事故というと、福岡市で2006年にあった、飲酒運転の車に追突された車が海に転落し幼児3人が死亡した事故が思い出される。
各局のニュースで大々的に放映されていたので、その後は一気に減少した。
福岡県内の飲酒運転事故件数は06年の650件から08年には284件に減少したが、09年は12件増の296件、10年はさらに41件増の337件で全国ワーストに転落した。
福岡県警によると、今年3~4月に飲酒運転で検挙したドライバーの半数近くが飲食店で酒を飲んでいた実態に着目し、提供側の店を指導する「イエローカード」を作成したという。
客への対応策や酒類を提供した場合の罰則内容などが記載され、店側が「飲酒運転撲滅宣言書」に署名して県警に提出することになる。
すでに5~7月で63店舗に警告しているという。交通企画課は「『店に張れば注意しやすい』との声もあり、抑止力になるのではないか」と期待しているということだ。
時事通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110822-00000010-jij-sociところで、飲酒運転が道路交通法違反であることはお馴染みだが、飲酒運転の車を提供したり、同乗したり、お酒を提供したりする行為も刑罰の対象になることをご存じだろうか。
平成19年9月19日に施行された改正道路交通法で追加されたものである。
ちょっとまとめてみよう。
【運転者に対する処罰】
・酒酔い運転 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
・酒気帯び運転 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金【車両提供者】
・運転者が酒酔い運転 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
・運転者が酒気帯び運転 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金【酒類の提供・車両の同乗者】
・運転者が酒酔い運転 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
・運転者が酒気帯び運転 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金なお、刑罰だけではない。これらの行為は、行政処分(免許の取消・停止)の対象にもなる。
警視庁の発表によると、過去次のような例がある。
【運転免許が取消処分になった事例】
事例1 知人の男性が酒を飲んでいることを知りながら、自分の車を提供し、同乗した女性が車両提供、同乗罪で2年間の運転免許取消し
~平成20年1月 東京都江戸川区
事例2 飲食店を経営する店主が、客が車で来店しているのを知りながら、店内において日本酒、ビール等を提供し、酒類提供罪として2年間の運転免許取消し
~平成20年7月 東京都調布市以上、警視庁ホームページ参照
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotu/insyu/insyu_bassoku.htm酒を飲むと、気が大きくなる。
「まあ、大丈夫だよー。どうせ俺が捕まるだけだし」
とか言われて飲酒運転自動車に同乗しただけで刑罰の対象になる。
十分気を付けたい。