破産と交通事故の謝罪について
2004年11月17日
私が破産管財人をしている破産事件で、債権者集会がありました。東京地裁の破産管財事件では、破産宣告の後、3ヶ月くらいで債権者集会を開きます。出席者は、裁判官、破産管財人、破産者、破産者代理人弁護士、債権者です。
集会では、破産管財人が破産宣告後に行った職務、破産者の財産をどのように処分して財団を形成したか、その他特に説明すべき事項について報告をします。その後質疑応答等があって、届出債権についての認否をし、配当について説明が行われます。
破産手続については、かなり認知されてきておりますので、騒ぎになることはほとんどありませんが、たまには怒号があったり、泣き崩れる人がいたり、等のドラマもあります。
債権者としては、もちろん債権を回収できないことが一番悔しいところですが、怒りの発生源としては「謝罪の一言もない」という点が多いようです。弁護士に任せてしまって、謝らない人が多いのです。破産すると、債務のほとんどを踏み倒してしまうことになりますから、一言謝罪してまわるくらいのことはしても良いのではないか、と思います。
破産は、支払う約束を反故にすることです。約束を破ったときに謝るという普通のことができれば、破産手続もずっとやりやすくなります。法的手続と謝罪問題は別問題です。
交通事故でも同じです。加害者は、保険会社に任せてしまって謝罪をしない人がいますが、それが被害者の怒りを増幅させ、示談を困難にします。賠償問題と謝罪の問題は別問題なのですが、怒りは理性的判断を阻害します。怒りのために賠償問題と謝罪問題を分けることができなくなるのです。謝罪により賠償金額がそれほど変わるわけではありませんが、本来なら示談で終わるケースも最後までとことん争ったりします。加害者としては、怒りをぶつけられますから、謝罪しにくいのでしょうが、加害者が誠意をもって謝罪していれば、ずっと示談もしやすくなります。それが、加害者、被害者双方のためになるのではないか、と思います。