高いか、安いか | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
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高いか、安いか

2006年06月19日

歩行者同士がぶつかって損害賠償780万円っ!?

2004年8月、東京都世田谷区内の商店街、友人とともに歩いていた25歳の女性が、道路脇の店に気を取られて、右側から歩いてきた91歳女性に気づかずにぶつかったことにより、91歳女性は右足を骨折し、後遺症が残って外出時は車いすが必要となった事件がありました。

この件で、91歳女性が東京地裁に損害賠償請求訴訟を起こし、6月15日に、東京地裁は、25歳女性に780万円の損害賠償を支払うよう命じました。

ニュース

ただ歩いていてぶつかっただけで780万円の賠償金は高いと感じると思います。しかし、それはぶつかった側の感覚です。ぶつかられた方は、780万円では換えがたいものを失っているのが通常です。日本での損害賠償は「控えめな賠償額」になってしまうのです。

今回の場合、91歳女性は、右足骨折でおそらく入院したでしょうから、入院費、通院費、交通費、入院雑費、車いす代、家の段差をなすく工事費等の実費がかかっているはずです。これに慰謝料などを加え、東京地裁は、約1,000万円の損害を見積もりました。その上で、91歳女性にも過失があったということで3割差し引き、最終的に780万円の損害賠償になったものです。

仮に、被害者が若い人であり、頭などをうって働けなくなったような場合には、その後働いて得られたであろう利益(逸失利益)が加算され、1億を超える損害額になる可能性もあります。ただし、若い人の場合には過失割合も大きくなるので減額幅も大きいでしょうが、数千万円の損害賠償になる可能性は十分あるということです。この場合、被害者側から見ると、いくらもらっても安いということになるでしょう。

したがって、この事件、25歳女性から見ると「高い」、91歳女性から見ると「安い」と感じていると思います。

常に置かれた立場によって感じ方が違うということですね。

慰謝料算定の実務