消費税の助言義務違反で税賠の裁判例(資本金額) | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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消費税の助言義務違反で税賠の裁判例(資本金額)

2023年10月05日

今回は、消費税の助言義務違反で税理士損害賠償請求をされた事案をご紹介します。

東京地裁平成27年5月28日判決です。

(事案)

・原告は、個人で医院を開業していた医師甲野が、法人成りをして、平成15年2月17日、資産の総額1億74万9000円として設立された医療法人である。

・平成14年、甲野が被告税理士に対し、医院を法人にする旨を相談し、税理士が医療法人の設立手続の一部についての事務を委任する契約を締結した。

・原告設立時に原告の資本金を設立後2期分の消費税の免除を受けられるなど税務上有利とするために、1000万円未満とするよう、Aに指導すべき義務があったにもかかわらず、これをったとして損害賠償請求をした。

(判決)

・原告の設立の主な目的は節税であったことが認められ、そうであるとすれば、甲野から相談を受け、設立手続の一部に協力する旨の本件契約を締結した被告としては、その目的に沿うよう、甲野に対し、資産総額についても正しく説明・指導する義務があったと認められる。

・平成22年に甲野から電話で資産総額と消費税との関係について指摘を受けた際、日を変えて2度にわたり、消費税については、原告は個人経営から法人成りした経緯から、2期分の免除の適用はない旨、誤った認識に基づく回答をし、設立の際に正しい説明をしたことや、甲野の強い希望で資本金額を1億円以上としたことについては全く触れなかったことが認められる。

・他に被告が原告設立の際に正しい説明をしたことを示す客観的証拠もない。

⇒税理士敗訴

というものです。

これに対し、税理士は次のような主張をしましたが、認められませんでした。

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資産総額について、1000万円未満とした場合には設立後2期分の消費税が免税となる旨説明したが、原告代表者が「資産総額だけでも他のクリニックに勝ってブランド化したい。」「設立から2期分の消費税の免税が受けられなくとも、課税される消費税が経費となるならそれでかまわない。」「運転資金が潤沢にあった方が運営しやすい。」などと述べて、資産総額を1億円超とした。

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つまり、税理士が説明した証拠がないため立証に失敗したということです。

したがって、納税者が何らかの事情により税務上不利な方を選択した場合、そのやり取りを証拠化しておく必要があります。

そうしないと、後日、「税理士が助言してくれなかったから不利になった」と主張された際、説明した事実と不利な方を選択した理由を立証できない。

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