税理士の契約書の責任限定条項の適用を排斥した判決 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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税理士の契約書の責任限定条項の適用を排斥した判決

2023年09月15日

先日、You Tubeでも解説しましたが、税理士の契約書の責任限定条項の適用を排斥した判決が出ました。

福岡地裁令和5年6月21日判決です。

重要判決ですから、メルマガでも簡単にご紹介します。

責任限定条項というのは、本件でいえば、「乙の過失が原因で生じた場合の損害賠償は、乙が受けた利益を限度とする」というような条項のことです。

つまり、税理士が損害賠償責任を負う賠償額の上限を定める条項のことです。

この条項について、「契約書に明記してあるにかかわらず」裁判所が、「本件賠償額制限条項は、被告に故意又は重大な過失がある場合には適用されないと解するのが相当である。」として、税理士に故意又は重大な過失がある場合には適用しない、と排斥してしまったわけです。

そして、税理士が、消費税の本則課税事業者と簡易課税事業者のいずれである方が有利であるかを検討し、有利な届出をすることを約束したにもかかわらず、これを怠ったことについて、「ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態で行われたものといわざるを得ない」として重過失を認め、一部損害賠償を命じた、というものです。

新しい判決ですが、もうTAINSにアップされていますので、興味がある方は、読んでみてください。

責任限定条項について、他の業界についての裁判例から考えて、税理士業界にも、この判断基準が採用されることは、以前より予想しており、私の『税務のわかる弁護士が教える税理士損害賠償請求の防ぎ方』
(ぎょうせい)
https://www.amazon.co.jp/dp/4324104786/

でも警鐘を鳴らしていましたし、税理士会の研修でも言及してきたところです。

【税理士を守る会】で提供している契約書では、この判断基準を念頭においた責任限定条項にしているので、会員の先生は、責任限定条項を確認してみていただければと思います。

裁判所には「公序良俗」という伝家の宝刀があるので、完全ではありませんが、「重過失」でも適用の可能性がアップする条項にしています。

「税理士を守る会」は、こちら
https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/