【税理士向け】遺言能力を確認しよう。
税理士は遺言書の作成について助言を求められる場合が多いと思います。
しかし、特に自筆証書遺言については、相続開始後、「無効だ」と主張されるケースも増えているように思います。
それは、「遺言を書いた時、すでに認知症で意思能力がなかった。だから、遺言は無効だ」という主張です。
裁判で遺言が無効になったりすると、遺言を助言した税理士の責任追及を考える人が出てきかねません。
そこで、公正証書遺言にし、遺言が無効にならないようにしようとするわけですが、公正証書にしても、遺言が無効になる場合があります。
東京地裁平成29年6月6日判決(判例時報2370号68頁)の事例です。
この事例では、アルツハイマー型認知症を発症していた被相続人が公正証書遺言をした事例において、長谷川式認知症スケールや医師の意見書、日常の行動などを検討した上で、遺言の当時、遺言能力がなかったとして、公正証書遺言を無効とした、というものです。
したがって、「公正証書にしたから安心だ」ということにはならないわけです。
では、遺言能力に疑問がある依頼者から遺言に関する業務の依頼を受けた場合には、どうすればよいでしょうか。
注意すべきポイントとしては、
・遺言能力の有無を確認する
・遺言能力が争われる可能性がある場合は、遺言能力を後日立証できるような証拠を残す
ということです。
そこで、まず遺言者と面談し、遺言の意味を理解できるかどうか、確認します。
その上で、以下のような証拠が残せるかどうか、検討します。
・長谷川式スケールの実施
(認知症の診断に用いられるものです)
・医師による意見書
・看護記録の開示請求
(年数経過で廃棄されます)
・遺言作成時や遺言作成前後の会話等の録音、録画
このように証拠化しておかないと、遺言作成した時に遺言能力があったかどうか、遺言者死亡後に立証するのが難しい場合があります。
ご注意いただければと思います。
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