決算期変更で税理士懲戒処分 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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決算期変更で税理士懲戒処分

2020年03月27日

気になる税理士の懲戒処分がありました。

法人の顧問先が利益がたくさん出てしまった際に、

「うち5月決算なんだけど、3月と4月で利益ですぎちゃったんですけど、利益を減らせませんか?」

などと相談されることがあると思います。

この時、安易に、

「じゃあ、決算期を変更しましょう。一応臨時株主総会議事録を作成しておいた方がいいので、私の方で作成しておきますよ」

などと回答し、そのまま処理すると、懲戒処分を受けることがあります。

以下の懲戒処分事例が国税庁により、公表されています。

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(1)被処分者は、関与先であるA社の法人税の確定申告にあたり、開催されていない臨時株主総会において、決算期が5月から3月に変更されたと偽装することによって、4月および5月に生じた収益を除外し、所得金額を圧縮した事実に反する申告書を作成した。

(2)被処分者は、A社の消費税および地方消費税の確定申告にあたり、開催されていない臨時株主総会において、決算期が5月から3月に変更されたと偽装することによって、4月および5月に生じた課税売上高を除外し、消費税および地方消費税額を圧縮した事実に反する申告書を作成した。

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つまり、株主総会を開催していないにもかかわらず、開催したかのように偽装して、決算期を変更した、ということです。

条文としては、税理士法36条と45条1項が関連します。

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税理士法45条1項

財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は第三十六条の規定に違反する行為をしたときは、二年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる。

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税理士法36条

税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない。

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決算期を変更する助言をすることはあると思いますが、その際には、臨時株主総会を省略せず、実際に開催しないと、否認され、重加算税の対象になる可能性があるとともに、懲戒処分、税理士損害賠償に発展する可能性すらある、ということになります。

税理士の先生方は、ご注意いただければと思います。