会社受付で騒ぐと業務妨害罪です。
今回は、会社の受付で暴れた男が逮捕されたという事件について解説します。
「会社受付で騒ぎ、動画撮影 威力業務妨害容疑で男逮捕 警視庁」(2018年 11月29日 産経ニュース)
警視庁組織犯罪対策3課は、自動車メーカーの受付で騒ぐなどして業務を妨げたとして、東京都の元医師の男(79)を威力業務妨害の疑いで逮捕しました。
今年(2018年)9月下旬、容疑者の男は渋谷区の自動車メーカーの受付で同社総務担当の50代の男性社員をタブレット端末で撮影しながら、「全部載るから。お前も親も子もいるだろう」などと怒鳴りつけたうえで、動画を動画投稿サイト「YouTube」に投稿するなどし、同社の業務を妨害したようです。
組対3課によると、容疑者の男は同社の株主で、事件当時は「株主の権利行使」として会社書類の閲覧を要求していたということです。
男は株主総会で不規則発言などを繰り返す「特異株主」として知られており、上場企業など950社の株を保有。
今年は約100社の株主総会に出席し、このうち1社で退場命令を受けていたということです。
【威力業務妨害とは?】
刑法には、人の業務を妨害する2つの罪が規定されています。
「刑法」
第233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第234条(威力業務妨害)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
第233条は「偽計業務妨害罪」と呼ばれるものです。
・虚偽の風説の流布=客観的真実に反するウソの情報や噂を不特定多数の人に伝播させること
・偽計=人をあざむく計略
・毀損=こわすこと、損なうこと
会社や店舗、公的機関などに嫌がらせ電話をかけたり、ウソの注文をする、あるいは、コンビニや飲食店でのいたずらを撮影して、その動画をSNSなどに投稿することなどは偽計業務妨害罪に該当します。
一方、「威力業務妨害罪」は威力を用いて人の業務を妨害する罪ですが、法的な定義では威力とは次のようなことをいいます。
「人の意思を制圧するような勢力をいい、暴行・脅迫はもちろん、それにまで至らないものであっても、社会的、経済的地位・権勢を利用した威迫、多衆・団体の力の誇示、騒音喧騒、物の損壊・隠匿等、およそ人の意思を制圧するに足りる勢力一切を含む」
今回は、株主総会で騒いだわけではなく、会社の受付で騒いだことが、威力を用いた、と認定された、ということです。
会社の受付で騒ぐ人は、時々いると思います。
中には、正当な主張をしている人もいるでしょう。
しかし、会社の業務を妨害するような態様で行う必要があるでしょうか。
大声で怒鳴ったり、騒いだりすると、威力業務妨害罪が成立する可能性あがることを憶えておきましょう。
また、会社の受付で正当な理由なく騒がれて、業務を妨害された場合には、警察に連絡するようにしましょう。