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職場の飲み会での喧嘩で会社に損害賠償義務が?

2018年04月29日

職場の飲み会で暴行事件が起こったとき、当人同士に責任があるのは当然ですが、それを超えて、会社にまで責任問題が発展することがあるのでしょうか?

そうした問題に対し、ある判決が出たので解説します。

「忘年会での暴行“会社に責任”…“業務の一環”」(2018年4月23日 読売新聞)

事件の経緯は次の通りです。

・2013年12月、東京の海鮮居酒屋で正社員として働いていた男性(50)が上司の店長から忘年会に誘われた。

・当日は休みの予定だったが、「他の従業員も9人全員が参加する」と言われ、「参加しますよね?」と念を押されたこともあって参加することにした。

・忘年会は1次会が深夜から焼き肉店で開催、2次会は午前2時30分頃からカラオケ店で始まった。

・2次会の席で男性は酔った同僚から仕事ぶりを非難され、「めんどくせえ」と言い返すと、殴る蹴るの暴行を受け、肋骨を折るなどのケガを負い、約3週間後に退職した。

・2015年3月、職場の同僚だった加害者は傷害罪で罰金30万円の略式命令を受けた。

・同年8月、被害者の男性は居酒屋の経営会社と同僚に対して約177万円の賠償を求めて提訴。
これに対し、同社側は「業務外の私的な会合で本社に報告がなく、忘年会も禁じていた」と主張した。

・東京地裁は今年(2018年)1月22日の判決で、忘年会への参加を店長から促され、本来は休みだった従業員を含む全員が参加した経緯を重視。
「2次会は電車もない時間に始まり、全員が2次会にも参加せざるを得ず、1、2次会とも仕事の一環だった」と判断。
さらに、「会社が忘年会を禁じても会社は使用者責任を負う」として、約60万円の支払いを同社と同僚に命じた。

男性は取材に対し、「会社員として上司に誘われて自分だけ忘年会に参加しないのは難しい。判決が忘年会を業務と認めたのは当然だ」と話しているということです。


以前は、「同じ釜の飯を食べた仲間」とか「酒は人間関係の潤滑油」といわれたように、食事やお酒を共にすることで職場のコミュニケーションを図ることが普通に行なわれていたと思います。

しかし近年では、従業員たちの意識の変化にともない、職場の宴会には出席したくないという人も増えているようです。

そこでポイントになってくるのが、職場での宴会は果たして業務なのかどうなのか、という問題です。

今回、会社の責任が認められた根拠は、使用者責任ということです。

「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

つまり、飲み会において従業員が他の従業員に対して暴行したことが、「事業の執行について第三者に加えた損害」と認定された、ということです。

最高裁昭和44年11月18日判決は、仕事中の暴力行為に関し、「事業の執行行為を契機とし、これと密接な関連を有すると認められる行為によつて加えた」場合には、「事業の執行について」に該当するとしています。

今回の裁判例でも、参加強制であり、仕事の一環だったと判断されていますので、そうであれば、事業の執行行為を契機として暴行に発展したものと判断でき、使用者責任を認めたものと思われます。

忘年会や歓迎会、懇親会などは業務なのか、あるいは自由参加なのか、明確な規定のない会社も多いと思います。

しかし、宴会については建前としては自由参加であっても、実質的には全員参加で断ることができない状況であれば企業に責任が生じる可能性がある、ということは会社の経営陣は知っておいたほうがいいでしょう。

ちょうど今頃は、新入社員や新しい職場での歓迎会が開かれているかもしれませんが、トラブルなどないように、やはりお酒は楽しく飲みたいものです。