謝るタイミングとは?
キツネ君はサル君と海に出かけて、1日海水浴などして、たっぷり遊んだ。
キツネ君が帰りに自分の財布を見ると、1万円足りなかった。
キツネ君は、自分が海で泳いでいる間に、サル君が財布から1万円抜き取ったのではないかと疑った。
この日は2人で遊んでいたので、他には考えられなかったからだ。
キツネ君は言った。
「サル君、僕の財布から1万円盗んだだろう。返してくれよ」
サル君「そんなことしないよ。よく探してみたら?」
キツネ君「よく探したよ。なんてひどいことをするんだ?見損なったよ。早く返してくれよ」
サル君「僕じゃないって。信じてくれよ」
そんな押し問答が続き、結局サル君は盗みを認めないまま、2人は別れた。
キツネ君が家に帰ると、ズボンのポケットの中に1万円が見つかった。
財布から離れることが予想されたので、念のために財布とは別にズボンのポケットに1万円だけ入れておいたのだ。
キツネ君は、サル君を疑ってしまったことを後悔した。本来ならすぐに謝らなければならないところだが、あれだけ言ってしまった手前、なかなかサル君に謝ることができなかった。
その事件以来、キツネ君とサル君は疎遠になってしまった。
それから5年が経つが、キツネ君は、サル君にひどいことを言ってしまったままであることが、ずっと心に引っかかっていた。
キツネ君は、そのことをシロクマ君に相談すると、シロクマ君は言った。
「それだったら、今からでもいいから、すぐサル君に謝った方がいいよ。それでキツネ君は後悔の呪縛から解放されるはずだし、サル君だって気にしているかもしれないよ」
キツネ君は、意を決してサル君を訪ねた。
すると、サル君の母親が出てきて、言った。
「サルは、去年亡くなったのよ。生前、キツネ君は元気かなあ、とよく言っていたよ。昔は仲が良かったのに、突然疎遠になってしまったからねえ」
キツネ君は、自分はなんてバカだったのか、と改めて思った。
謝罪は、タイミングを逃すと、時間の経過とともにできなくなってしまう。しかし、謝らないうちは、ずっとそれを引きずることになる。後悔の呪縛から解放されることはない。たとえ時間が経っていても、キツネ君のように、手遅れにならないうちに、今すぐ相手に連絡して、謝ってしまおう。