赤信号無視に危険運転死傷罪適用
奈良地検は、2011年9月24日に、大和郡山市で発生した乗用車とミニバイクが衝突し、乗用車が逃走した事件で、乗用車の運転手を、危険運転致傷罪と道交法違反(ひき逃げ)罪で、起訴しました。
ニュースによると、乗用車の運転手は交差点の100メートル以上手前ですでに赤信号だったにもかかわらず、時速約40キロで交差点に進入し、ミニバイクと衝突して重傷を負わせたにもかかわらず逃走した、ということです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111015-00000080-san-l29
通常の自動車の事故の場合、加害者は、自動車運転過失致死傷罪に問われます。
この場合、法定刑は、7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金です。
ところが、あまりに危険な運転をし、その運転中に事故を起こした場合には、自動車運転過失致死傷罪ではなく、危険運転致死傷罪という、もっと重い罪に問われることがあります。
危険運転致死傷罪には、いくつかの類型がありますが、今回は、信号無視です。
赤色信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転して、人に傷害を負わせた場合に適用されます。
今回、事故現場の状況から考えて、この要件にあてはまる、との判断で、起訴されたものです。
ちなみに、危険運転致傷罪の法定刑は、1年以上15年以下の懲役です。
(被害者が死亡すると、1年以上20年以下の懲役です)
刑が格段に重くなっています。
傷害罪の法定刑が、1年以上15年以下の懲役または50万円以下の罰金なので、故意に傷害を加えた場合の方が、罰金という軽い罪で済む場合がある、というほど危険運転致傷罪は重く処断される、ということです。
そして、今回は、危険運転致傷罪に、道路交通法違反(ひき逃げ)の罪が加わっています。
ひき逃げの場合の法定刑は、道路交通法117条2項により、10年以下の懲役または100万円以下の罰金と、これまた重い刑罰となっています。
今回2つの罪ですから、危険運転致傷罪と、ひき逃げの罪の2つが併合罪となります。
その場合の法定刑は、22年6月以下の懲役、ということになります。
自動車を運転していて、前方に赤信号を発見し、「ええい、行ってしまえ」と交差点に進入したところ、ミニバイクと衝突して怪我をさせたが、怖くなって逃げた、という場合の法定刑が、22年6月以下の懲役、ということになるのです。
自動車を運転するときは、くれぐれも気を付けなければなりませんね。