ゴルフ場が酒を出したら賠償判決!
「ゴルフ場で飲むビールは最高に旨い!」
「お酒を飲みながらゴルフをするのが楽しみ! 」
という人も多いと思います。
しかし今後は、プレイヤーもクラブ側も要注意という判決が出たようなので解説します。
「ゴルフ場でのカート飲酒運転事故、漫然と酒を提供したクラブにも“過失”-民事訴訟で大阪高裁判決」(2017年8月17日 産経新聞)
ゴルフ場での飲酒後、カートの運転ミスで起きた人身事故を巡る民事訴訟で、大阪高裁は2017(平成29)年7月14日、ゴルフ場の酒提供を過失と認める判決を言い渡していたことがわかりました。
事故が起きたのは、2009(平成21)年9月、兵庫県篠山市のゴルフクラブで行なわれたゴルフコンペ中でのこと。
生ビールを中ジョッキで2杯ずつ飲んだ4人がカートに乗り込んだ後、運転していた男性が坂道の急な右カーブでハンドルを右に切りすぎ、さらにはブレーキも踏まなかったため、カートが斜面を転落。
その際、助手席の男性が頸髄を損傷し、重い身体障害を負ったというものです。
2014(平成26)年5月、負傷者への賠償金を支払った共済組合が、「事故は飲酒が原因で、幇助(ほうじょ)した責任がある」とゴルフ場経営会社に賠償金の一部負担を求めて提訴。
2016(平成28)年11月の一審大阪地裁判決では、「ゴルフ場利用者は飲酒の危険を常識として認識しており、ゴルフ場側が酒の注文を断る義務はない」と判断し、共済組合側の請求を退けていました。
ところが今回の二審大阪高裁は、事故には飲酒が影響し、ゴルフ場側が幇助したと指摘。
「ビール注文時にセルフプレーの4人の誰かが運転し、事故を起こすことを予見できたのに漫然と酒を提供した」として、ゴルフ場経営会社の過失を認めたということです。
今回の判決では、大阪高裁がゴルフ場側の過失を認めたわけですが、その過失とは事故の原因になった飲酒を幇助したというものです。
幇助とは、手を貸す、手助けするという意味です。
飲酒運転で幇助といえば、道路交通法が思い浮かびます。
「道路交通法」
第65条(酒気帯び運転等の禁止)
1.何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
2.何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
3.何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
4.何人も、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
もちろん、今回のケースは公道ではなくゴルフ場内で発生したものですから道路交通法違反にはなりません。
しかし近年、道路交通法で飲酒させた飲食店に刑事責任を発生させるようになった、という背景も今回の判決に影響していると思います。
つまり、飲酒運転は重大事故につながる危険性が高いものであり、「飲む人だけでなく、飲ませた人、飲んだことを知って同乗した人も同じく責任がある」という思想が法的に重視されているということです。
以前からゴルフのプレー中の飲酒については賛否両論があり、その危険性も指摘されていたようです。
今後は、ゴルフをする人だけでなく、ゴルフ場側にも警鐘を鳴らす必要があるでしょう。
道路交通法など、法律違反にならなくても、ゴルフ場が飲酒させたり、場合によっては、飲酒を知りながら運転させた人まで責任が発生する可能性がありますので、ご注意ください。
なお、飲食店でお酒を注文する時に、「自動車や自転車を運転する予定はありませんか?」と訊ねるマニュアルを作成しているお店が現時点でもあります。
今回の判決をきっかけに、ゴルフ場でも、たとえば、メニューに、「自動車や自転車、カートを運転する予定がある方へのアルコール類はご提供できません」と記載したり、アルコールの注文を受けた時に、「自動車や自転車、カートを運転する予定はありませんか?」と確認するというマニュアルが必要になるかもしれません。
事故の被害にあったときは、こちらから相談。