労災はパートやアルバイトにも適用されるのか? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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労災はパートやアルバイトにも適用されるのか?

2017年05月14日

今回は、パートやアルバイトの労災について解説します。

Q)ある会社でアルバイトとして働いています。先月、業務中にケガをしてしまい入院、治療が必要で働けない状態になってしまいました。そこで労災申請について会社に相談したところ、「非正規雇用の人は労災保険の給付対象ではない」、「働けないなら辞めてもらう」と言われました。収入もなく、将来も不安だらけです。どうしたらいいのでしょうか?

A)労災は正社員だけではなく、アルバイトでもパートでも適用されます。

労働者が業務に起因して負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至った場合を、労働災害(労災)といいます。

労災には、大きくわけると2種類があり、業務中のものを「業務災害」、通勤中の交通事故等によるケガなどを「通勤災害」といいます。

また、労働基準法により、会社(使用者)は従業員(労働者)が仕事上で病気やケガをした場合には療養補償や休業補償をすることが義務づけられています。

「労働基準法」
第75条(療養補償)
1.労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2.前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
第76条(休業補償)
1.労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
ここで問題となるのは、事業主にケガをした従業員に対する補償をする能力がないケースです。

その場合、従業員はケガをしたうえに働けず、収入が途絶えてしまいます。
さらに補償も受けられないならば、経済的に困った状態に陥ってしまうでしょう。

そこで、従業員が労災にあった時には確実に補償が受けられるようにするために、国が法律で「労災保険制度」というものを定めています。
つまり、労災にあった従業員は給付金を請求することができるわけです。

「労働者災害補償保険法」
第2条
労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する。
では次に、パートやアルバイト、契約社員など正規雇用ではない場合にも労災が適用されるかという問題ですが、こちらも条文を見てみましょう。

「労働基準法」
第9条(定義)
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
つまり、法律ではパートやアルバイトも含むすべての労働者が、労災保険の補償対象になると規定しているわけです。

経営者や法務・人事担当者の中には、非正規雇用者は労災保険の給付対象ではないと思っている人が見受けられますが、これは間違いですから十分に注意していただきたいと思います。

また、労災が起きた場合、会社は所轄の労働基準監督署に「労働者死傷病報告書」を提出しなければいけません。
これを怠ったり、虚偽の報告をした場合は犯罪になる可能性があります。

詳しい解説はこちら⇒「労災隠しは犯罪です」
https://taniharamakoto.com/archives/2025/

なお、労災保険で労働者の損害がすべて填補されない場合などの事情によっては、従業員は会社に対して損害賠償請求をすることもできます。
これは、会社には従業員に労働させる際、ケガや病気を防ぐために安全に配慮する義務=「安全配慮義務」があるからです。

詳しい解説はこちら⇒
「安全配慮義務を怠ると会社は損害賠償請求される!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1965/

いずれにせよ、労災問題が起きた場合は、労災に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

会社側からのご相談はこちらから⇒
http://roudou-sos.jp/flow/

労働者の方で、後遺障害等級認定を受け、会社に対する損害賠償を検討の方のご相談はこちらから⇒
http://www.rousai-sos.jp/soudan/flow.html