人に対する暴言は、犯罪を構成する | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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人に対する暴言は、犯罪を構成する

2017年04月06日

近所の人に7年間も暴言を浴びせ続けた女が逮捕されました。
容疑は、県迷惑防止条例違反です。

「“うそつきばばあ”何度も暴言疑い…86歳逮捕」(2017年4月5日 読売新聞)

兵庫県警西宮署は、西宮市の無職の女(86)を県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕しました。
容疑は、今年の1月10日~2月16日に、同じ通りに住む近所の会社員の女性(61)に対し、「うそつきばばあ」、「謝れ」などと叫ぶなどの嫌がらせを繰り返した疑いということです。

同署によると、容疑者の女は、女性が自治会役員だった2010年頃、自宅の前にごみ捨て場が移設されたことに立腹し、女性が出勤する際などに罵声を浴びせるようになったということです。

2016年の春、女性は自宅前に防犯カメラを設置。
映像には平日はほぼ毎日、容疑者が叫ぶ様子が映っていたようで、同署は映像などから容疑を裏付けたとしています。

同署は、「女性から相談を受け、何度も注意したが、やめなかったため逮捕した」としているということです。
86歳が61歳に対して「うそつきばばあ」と言うのも、何かムチャな気がします。

それはともかく、この事件を法的に見てみましょう。

迷惑防止条例は、現在では全国の47都道府県すべてで定められており、それぞれ正式名称が異なっていたりします。
兵庫県では、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」となっています。

この条例は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為などを防止し、県民生活の安全と秩序を維持することを目的としています。(第1条)

該当する条文は、次の通りです。

第10条の2(嫌がらせ行為の禁止等)
1.何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、執ように又は反復して行う次に掲げる行為(ストーカー行為等の規制等に関する法律第2条第2項に規定するストーカー行為を除く。)をしてはならない。

(4)著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

2.警察本部長又は警察署長は、嫌がらせ行為により被害を受けた者又はその保護者から、当該嫌がらせ行為の再発の防止を図るため、援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該申出をした者に対し、必要な援助を行うものとする。
これに違反した場合は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第15条)

今回のような他人への暴言で逮捕にまで至ることは少ないと思われますが、ではなぜ今回は逮捕になったのかというと、近年、迷惑行為や嫌がらせ行為に対する罰則が強化されたからだと思われます。

上記の第10条の2は、盗撮等を禁止するための第3条の2(卑わいな行為等の禁止)とともに、2016(平成28)年3月23日の条例改正により追加され、7月1日から施行されています。
そのため、報道にもあるように、被害者から相談を受けた警察が何度も注意したにも関わらず、容疑者が嫌がらせ行為をやめなかったために逮捕されたということだと思います。

なお、今回のような暴言を浴びせる行為を公然と行えば、その内容によっては刑法の侮辱罪に問われる可能性もあります。

「刑法」
第231条(侮辱)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

公然とは、不特定多数の人に知られる状態なので、たとえば今回の事件に当てはめてみると、被害者以外の近所中にも聞こえるように拡声器などを使って叫んだりすると、侮辱罪に問われる可能性もあるということです。

過去の判例では、2006年、山梨県大月市のスナックで20代の女性客に対して「デブ」と数回言った市議会議員の男が、「29日間の拘留」を言い渡されているそうです。

生きていれば腹の立つこともありますが、怒りの感情に流されて相手に対して暴言などの嫌がらせをすると犯罪になる可能性がある、ということは知っておいてほしいと思います。

「……おまえの仕事は、当分黙っている事だ……」(ゴルゴ13)