「公然わいせつ罪」と「身体露出の罪」の違いとは? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
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「公然わいせつ罪」と「身体露出の罪」の違いとは?

2016年12月03日

「裸」というと、みなさんはどういうものをイメージするでしょうか?

ヨーロッパのヌーディストビーチでは、みなが上半身裸のトップレスで自由と開放感を楽しむそうです。

もうかなり昔、1970年代初頭の頃の話になりますが、「ストリーキング」というものが流行したことがありました。
イギリスやアメリカなどで、多くの観客が集まるサッカーや野球のスタジアムなどの公共の場に全裸で乱入し、走り抜けるというパフォーマンスをするもので、当時は日本でも行われたようです。

また欧米では、全裸で抗議活動や芸術活動を行うこともあります。

さらには、露出狂と呼ばれる下半身などを人前に晒して興奮する性癖を持った人もいるようで、しばしば逮捕されるというニュースを見ることもあります。

そこで今回は、裸に関する犯罪について「身体露出の罪」を中心に解説します。

該当する法律は軽犯罪法です。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

二十 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者
ポイントは次の3点です。
①公衆の目に触れるような場所
②公衆に嫌悪の情を催させるような仕方
③身体の一部を露出

まず、場所についてですが、条文に「公衆の目に触れるような場所」とあります。

「ような場所」ですから、必ずしも公衆の目に触れる公共の場所に限りません。
公衆=多数の人の目に触れるような場所であれば、たとえば野外ではなく、道路に面した自宅の室内で多くの通行人から見えるような場合でも該当します。

次に、仕方ですが、公衆に嫌悪感を催させるような、とあります。
人が何に嫌悪や不快を感じるかは一概に規定できるものではありませんが、ここでは刑法の「公然わいせつ罪」と比較してみます。

「刑法」
第174条(公然わいせつ)
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
「公然」とは、不特定多数、または多数の人が認識できる状態のことで、行為者がその行為を認識している状態、つまり故意にやっていることが要件として必要です。

また、「わいせつ」の解釈も個人や文化によって違い、時代によっても変化していくものですが、法的には、「性欲を刺激し、興奮または満足させる行為」、「普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」とされています。

つまり、人に嫌悪や不快を感じさせる行為は軽犯罪法違反で、それよりもさらに度を越して性的羞恥心を害するような行為は公然わいせつ罪になる可能性があるということです。

最後に、身体の露出についてですが、軽犯罪法では、「尻」、「もも」、「その他の身体の一部」とあります。

「性器」の露出は前述のように度を越して性的羞恥心を害する行為となり、「公然わいせつ罪」となります。

そこまで至らない露出で、人に嫌悪の情を催させる露出ということになります。

条文には、「もも」とありますが、どうでしょうか?

今、短いパンツやスカートでももを堂々と出して歩いている人は多数います。

しかし、それで軽犯罪法が適用された例を知りません。

軽犯罪法は、昭和23年にできた法律で、当時は「もも」を出すのは嫌悪されたのが、時代が変わり、嫌悪の対象ではなくなってきた、ということですね。

数年前に人気アイドルグループのメンバーが公然わいせつ罪で現行犯逮捕された事件がありました。

酒に酔って、公園で全裸になり、大声をあげて大騒ぎををしていたということでした。
そのため、公然わいせつ罪が適用されたと考えられます。

もし彼が、パンツだけでも履いていれば、軽犯罪法違反か、もしくは東京都の迷惑防止条例違反での逮捕になっていたと思います。

これから忘年会シーズンです。

お酒を飲み過ぎて、身体の一部又は全部を出したり、飲食した物を出したりしないようにしましょう。

出していいのは、宴会の会費やカンパ、隠し芸くらいだと肝に銘じておきましょう。