強要罪と脅迫罪の違いとは? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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強要罪と脅迫罪の違いとは?

2016年03月18日

今回は、ゲーム仲間を脅迫したことで逮捕されたという事件を法的に解説します。

ゲームの世界と現実の区別がつかなくなってしまったのでしょうか?

「“大勢を敵に、逃げたまえ”ゲーム仲間を脅迫、転居させる 強要容疑で男女を逮捕」(2016年3月15日 産経ニュース)

福岡県警春日署は、携帯電話のゲームサイトで知り合った女性らを脅して転居させたとして、長野県諏訪市の無職の女(40)と福岡県筑紫野市の自営業の男(44)を逮捕しました。

2015年7月12日~9月5日にかけて、男は福岡県の39歳の女性の自宅に、「最終通告です。大勢を敵に回しており、攻撃される準備が行われている。逃亡したまえ」などと脅す手紙、はがき計7通を郵送。
女性と同居の友人女性に引っ越しをさせたようです。

警察によると、容疑者の女と被害者女性はゲームサイトで知り合い交流していたところ、交友関係を解消すると言われたことに女が腹を立て、会員制交流サイト(SNS)で知り合った容疑者の男に嫌がらせを依頼。
男が被害者女性に手紙などを送り付けたということです。
さて今回の事件、脅迫をしたのに強要罪で逮捕とは、どういうことでしょうか。
脅迫罪と強要罪は何が違うのでしょうか。

まずは条文を見比べてみましょう。

「刑法」
第223条(強要)
1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
第222条(脅迫)
1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
脅迫罪は、相手に危害を加えることを告げるだけで成立します。
一方、強要罪は、危害を加えることを告げて相手に義務のないことを行わせると成立します。

つまり、被害者女性が引っ越さなければ脅迫罪が適用された可能性がありますが、義務がなかったのに引っ越しを余儀なくされたために強要罪が適用されたということになります。

強要罪といえば、しまむらの土下座事件が記憶に新しいところです。
詳しい解説はこちら⇒
「半沢直樹による大和田常務への強要罪は成立するか?」
https://taniharamakoto.com/archives/1171

客として商品を購入した女が、商品を不良品だと訴えて従業員に土下座をさせて逮捕された事件でした。

ちなみに、強要罪について過去には次のような判例があります。
・辞職願を書かせた(最判 昭28・11・26 裁判集88-861)

・謝罪文の書面を読み上げさせた(最判 昭34・4・28 集13-4-466)

・口頭で物品の譲渡等を約束させた(最大判 昭24・5・18 集3-6-772)

・第三者を解雇させた(大判 昭7・7・20 集11-1104)

・医師に麻薬を注射させた(高松高判 昭34・4・28 集13-4-466)

・株主総会の議事進行を妨害した(東京地判 昭50・12・26 判タ333-357)

・動物の競技会への参加を妨害した(岡山地判 昭43・4・30 下集10-4-416)
子どもの頃は、後輩を脅してジュースを買いに行かせたり、荷物を持たせたりした人もいるのではないでしょうか。

これ、強要罪が成立するかもしれません。

また、大人になっても、会社の部下を脅して一気飲みさせたり、裸踊りをさせたりしても強要罪が成立する可能性がありますので気をつけてください。