営業秘密の漏洩で懲役5年+罰金300万円!
今回は、企業秘密の不正取得、情報漏洩に対する裁判の判決について解説します。
裁判の流れは、不正を働いた者に対して厳しいものになってきているようです。
「東芝データ漏洩、元技術者に懲役5年判決 “極めて悪質” 東京地裁」(2015年3月9日 日本経済新聞)
東芝の半導体メモリーを巡るデータ漏洩事件の判決公判で、被告の男に懲役5年、罰金300万円が言い渡されました。
被告は、提携先の米半導体メーカーの元技術者(53)。
容疑は、不正競争防止法違反(営業秘密開示)の罪。
判決によると、被告の男は2008年1~5月ごろ、東芝の四日市工場(三重県)で、同社の半導体メモリーの研究データを無断でUSBメモリーにコピー。
韓国半導体大手「ハイニックス半導体(現・SKハイニックス)」に転職した後、2008年7月と2010年4月頃、同社の従業員にスライド映写したり、メールに添付したりして情報を開示したようです。
被告は公判で、「東芝や米メーカーに多大な迷惑をかけて申し訳ない」などと謝罪し、起訴内容をおおむね認めていましたが、弁護側は「漏洩したのは最高レベルの機密ではなく、公知の情報も含まれていた」と主張し、執行猶予付きの判決を求めていたということです。
裁判長は、「我が国の産業で重要な半導体分野の営業秘密を他国の競業他社に流出させ、社会に大きな衝撃を与えた」、「極めて悪質な営業秘密の開示。犯行によって東芝の競争力が相当程度低下した」、「転職先での地位を維持するために、自らの意思で情報を開示しており、刑事責任は重い」と非難。
また、「競合他社が約330億円を支払うという和解が成立している点で、東芝の競争力が相当程度低下したことを裏付けるものだ」と指摘しました。
なお、データ漏洩事件を巡っては、東芝がハイニックスを相手取り約1100億円の損害賠償を求めて提訴。
2014年12月、東京地裁でハイニックスが2億7800万ドル(約330億円)を支払う内容で和解が成立しています。
ところで、みなさんは今回の判決、重いと思うでしょうか? それとも軽いと感じるでしょうか?
「会社の情報を持ち出しただけで、懲役5年+罰金300万円は重すぎる」
「330億円もの損害賠償命令が出ている情報なのだから、被告の受ける罰は軽すぎるだろう」
「会社に大きな損害を与えているのだから、もっと刑を重くするべきだ」
「懲役5年の実感が湧かない…」
さまざまな意見があると思います。
今回は、企業の「営業秘密の開示」の罪ですが、過去の判例からみても、私は、懲役5年と罰金300万円は重い判決が下されたと思います。
その背景には、この数年における企業の秘密漏洩事件の増加があるのだと思います。
・日産の企画情報が流出
2014年5月に発覚。元社員が新型車の企画情報などを不正に取得。
・ベネッセで個人情報流出
2014年7月に発覚。外部業者のSEが関与して、2070万件もの個人情報が流出。
・エディオンの営業秘密資料が流出
・2015年1月に元課長が逮捕。退職時などに不正に取得した営業秘密情報を転職先の企業に漏洩。
これらの事件以外にも、2013年には中国のデータ共有サイト「百度文庫」で、トヨタやパナソニック、三菱電機などの内部資料が大量に流出していたことが発覚した例などもあります。
こうした事態を受けて、政府は法人に対して、国内企業同士の秘密漏洩には罰金を最大5億円に引き上げるなど罰則を強化するほか、企業秘密を海外の企業が不正利用した場合は最大で10億円の罰金を科すなど、不正競争防止法の改正法案を2015年の通常国会で提出するとしています。
「産業スパイ防止へ改正法案を閣議決定 罰金上限10億円など厳罰化」(2015年3月13日 産経新聞)
法人だけでなく、企業秘密を不正に入手、流出させた個人には、懲役は現在の10年以下のままにするものの、国内の事件なら最大1000万円だった罰金を2000万円に、海外に漏らした場合には3000万円へ引き上げるとしています。
その他にも、以下の内容などを盛り込んでいるようです。
・営業秘密の流出を、被害者の告訴がなくても起訴できる「非親告罪」にする。
・未遂でも捜査をできるように取り締まり対象を広げる。
・日本企業が海外に持つサーバーの情報を盗む行為も処罰できるようにする。
・民事訴訟では、設計図などの物の生産方法をめぐる情報漏えいの場合に、被害企業の立証責任を軽くする。(情報漏洩の被害を受けた企業が盗んだ企業を相手取って起こす場合)
企業秘密の漏洩に対して、法律は厳罰化の方向に向かっています。
今、企業の危機管理への体制強化など、厳格で迅速な対応が求められています。
主に3点の対策が必要です。
・物的対策(パソコンのセキュリティなど)
・ルールによる対策(書類保管庫への立入制限など)
・教育研修など人的対策
今一度、社内の体制を見直してみてはいかがでしょうか。
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