業務委託なのに、残業代を支払う!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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業務委託なのに、残業代を支払う!?

2014年12月28日

正社員にすると、労働法の色々な規制がかかってきたり、残業代を支払う義務が発生したり大変なので、正社員ではなく、「業務委託」という形にして仕事を委託している会社が少なからずあるようです。

会社は、社員が残業をした場合には、当然残業代を支払う必要がありますが、業務委託先に対しては、委託先が長時間働いたとしても残業代を支払う必要はありません。

例えば、個人事業主として、自己所有のトラックを持ち込んで輸送業務に従事する運転手や、建設業における一人親方などに対しては、会社は残業代を支払う必要はありません。

そのため、会社は、社員を雇用するのではなく、業務委託の形式で作業させることで、残業代の支払いを免れて人件費を削減することができます。

しかし、当該社員(ないし業務委託先)が、会社が残業代の支払義務を負う「労働者」であることを否定するためには、単に当該社員(ないし業務委託先)と会社との契約の名称を「業務委託契約」や「請負契約」などとしておけば良いというわけではありません。

この「労働者」性が否定されるためには、当該社員(ないし業務委託先)が、実態として、「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」ではないことが必要であります。

いくら「業務委託契約」を締結していても、実態が「労働者」とみなされると、残業代を支払う義務が発生する、ということです。

そして、この労働者性の判断基準ですが、

・時間・場所の拘束の有無、程度(拘束の程度が強ければ労働者性を肯定する事情と評価されます

・契約に対する諾否の事由の有無(自由がなければ労働者性を肯定する事情と評価されます)

・契約内容の遂行に当たっての指揮命令の有無(指揮命令に従っている場合には労働者性を肯定する事情として評価されます)

・経費の負担の有無(受託者が経費を負担するような場合には労働者性を否定する事情として評価されます)

等の種々の事情を考慮して判断されます。

したがって、例えば、自己所有のトラックを持ち込んで業務に従事する運転手であっても、会社の仕事しかすることができず、始業・就業時間が決まっており、経費も会社持ちであるような場合には、会社は運転手からの残業代の請求を拒むことができません。

また、例えば、独自に飲食業を営む者としての立場でクラブとの間で入店契約を締結したホステスについては、業界の慣習や所得税の申請において個人事業主として扱われているとしても、クラブへの出店が義務付けられていることや、クラブからの報酬が事業者性を認める程高額でないこと、衣装代はホステスの負担であるものの、その他の経費はクラブ側が負担していることなどを理由に、クラブはホステスからの残業代の請求を拒むことはできないとした裁判例もありますので、注意が必要です。

会社が雇用契約ではなく、業務委託契約の形式をとっている場合、往々にして、当該社員(ないし業務委託先)の残業時間は長時間となってしまっているのが実情です。

そのため、もし当該社員(ないし業務委託先)が会社が残業代を支払わなければならない「労働者」であるとされてしまうと、会社は、非常に多額の残業代の支払いを余儀なくされてしまう場合が多いです。

このようにならないよう、会社は、「業務委託契約」を締結する場合には、上述のさまざまな事情を考慮して、就労のさせ方を慎重に検討する必要があるでしょう。

このあたりは、法律の素人では判断が難しいので、弁護士に相談することをおすすめします。

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http://roudou-sos.jp/