社員の給料を下げられない?
★社員の給料を下げられない場合とは?
社員の給料最初、会社と社員の合意で定められます。
その後は、会社の給与規定などに基づき変動してゆくのが通常です。
社員の給料が上がる時にはトラブルは発生しませんが、社員の給料を下げようとした時は、労使トラブルが勃発します。
会社が、社員の給料を下げたいと考える理由としては、会社の経営状況による場合や、社員自身が原因である場合など様々です。
今回は、社員の給料を下げる場面として、
①経営難を理由として給料を下げる場合
②人事考課・人事異動の結果として給料が下がる場合
③懲戒処分として減給をする場合
に分けて説明したいと思います。
①経営難を理由として給料を下げる場合
経営難を理由として社員全体の給料を下げる場合には、社員の同意なしには行えないのが原則です。
労働条件を社員に不利益に変更するには、原則として社員の同意が必要となるためです。
もっとも、会社が就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、変更後の就業規則を社員に周知させ、かつ、その内容が下記要素から考えて合理的である場合には許されます。
(1)社員の受ける不利益の程度
(2)労働条件の変更の必要性
(3)変更後の就業規則の内容の相当性
(4)労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情
会社の存続自体が危ぶまれたり、経営危機による雇用調整が予想されるなどといった状況にあるときは、労働条件の変更による人件費抑制の必要性が極度に高い上、労働者の被る不利益という観点からみても、失職したときのことを思えばなお受忍すべきものと判断されます。
そのような場合には、多数の労働者が反対している場合であっても、就業規則の変更により給料を下げることが許されるといえます。
②人事考課・人事異動の結果として給料が下がる場合
まず、年度ごとの人事考課等の結果として給料の額が減額することについては、あくまで賃金の計算方法に過ぎず、人事考課制度の枠内で行うのであれば、裁量権の濫用に当たらない限りは問題なく行うことができます。
次に、人事権の行使として、成績不振を理由として、部長が社員に降格する場合や、部長が係長に下がる場合など、人事権に基づく役職や職位の降格の場合には、雇用契約の上で使用者の当然の権限として認められるものであり、人事権の濫用にあたらない限り問題なく行うことができるといえます。
③懲戒処分として給料を下げる場合
まず、懲戒処分として減給をする場合には、懲戒処分の前提として、次の要件が必要です。
(1)就業規則に懲戒処分の規定があること
(2)就業規則が社員に周知されていること
(3)就業規則で定められる懲戒事由に該当する行為があったこと
(4)当該処分が労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であること
特に、減給は、労働者の生活への影響が大きいことから、十分な理由が必要となると考えるべきでしょう。
さらに、減給処分が有効であったとしても、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えて減給をすることは法律上禁止されています。
会社の側としては、もっと下げられるのではないかと考えられている方も多いと思いますので注意をしなければなりません。
以上、社員の給料を下げる場面として3つに分けて説明をしてきました。
どちらにしても、給料を下げることは、社員の生活に与える影響が大きく、後に紛争となるケースも少なくありませんので、専門家と相談をしながら慎重にすすめるとよいでしょう。
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