妻が離婚でもらえる財産分与とは?
厚生労働省が発表している、「平成25年(2013)人口動態統計の年間推計」によると、平成25年の離婚件数は約23万1000件で平成24年の約23万5000件から減少しています。
それでも、単純計算で1日に約633件も離婚していることになります。
なんと、2分17秒に1件の割合です!
この瞬間にも、日本のどこかで誰かが離婚しているようですね……。
離婚に至るプロセスは人それぞれでしょうが、女性が決断を躊躇する理由のひとつに金銭面の不安があるでしょう。
今回は、離婚したいけれど将来が不安だという、ある女性からの相談です。
質問
夫との離婚を真剣に考えています。といっても最近のことではないのです。もう、ずいぶん前から夫への愛情はなく、離婚したかったのですが私は専業主婦で働いた経験もほとんどなく、一人で生きていくことは、やはり大きな不安があったからです。ところが先日、古い知り合いと再会した折に彼女が離婚したことを知りました。彼女の話では、財産分与でまとまったお金をもらえたから決断したというのですが、財産分与とはどういうものなのでしょうか? 今後のために、ぜひ教えていただきたいのです。
回答
夫婦が離婚した場合、妻が夫から受け取ることができるものには「財産分与」「慰謝料」「年金分割」などがあります。
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して得た財産を離婚する際、または離婚後に分けることです。
重要なポイントは、共有財産がどのくらいあり、それをどのような割合で分けるのかになります。
これらは、一般的には2分の1ずつの割合で分けられることが多く、夫婦協議の上で決定されますが、合意に至らない場合は家庭裁判所に調停を申立てることができます。
ただし、申立てできるのは離婚後2年以内です。
通常は、離婚調停の中で財産分与額の話し合いも行われます。
財産分与だけの調停の場合、調停でも話し合いがまとまらない場合は、自動的に審判手続が開始され、裁判官が必要な審理を行った上で審判をすることになります。
財産分与
協議上の離婚をした夫婦の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます。(「民法」第768条1項)
財産分与できるのは、夫婦の共有名義の財産のほか、婚姻中に夫婦協力のもとで取得した財産で夫婦どちらかの名義になっているものも対象になります。
主なものに、預貯金、株、土地や住宅などの不動産、保険解約返戻金、退職金、自動車、家財などが挙げられます。
一方、婚姻前からの財産(預金など)や、相続などで婚姻後に得た財産は財産分与の対象にはなりません。
また、住宅ローンなどの負債も共有財産となりますが、プラス財産よりマイナス財産が大きい場合は財産分与の対象にはならないようになっています。
なお、財産分与は相手に離婚の原因がない場合でも請求できますし、離婚の原因を作ってしまった側からも請求できます。
ちなみに、2006年の「司法統計年報3家事編」(最高裁判所事務局編)によると、財産分与額は400万円以下が54.8%、総額決まらず算定不能が18.0%、支払者は夫が86.8%、妻が13.2%となっています。
慰謝料
相手の不貞行為や暴力が原因で「精神的苦痛」を受けた場合、慰謝料請求することができます。
慰謝料については以前、解説しました。
「不倫相手にいくら慰謝料請求できるか?」
https://taniharamakoto.com/archives/1666
離婚の原因が、性格の不一致や価値観の違いでは慰謝料は認められないと考えておいたほうがいいでしょう。
また、慰謝料というと大きな金額を想像する方もいると思いますが、現実的には離婚裁判で認められる金額は、150~300万円くらいがほとんどです。
野球選手とか芸能人は、箔をつけるために慰謝料額を高額にしている、と言えなくもありません。
年金分割
年金分割制度は、婚姻期間中に払い込んだ保険料の総額を、多いほうの夫から少ないほうの妻へ分割するものです。
ただし、注意点があります。
〇分割できるのは、会社員の厚生年金と公務員共済年金のみで、国民年金や厚生年金基金、国民年金基金の部分は分割できません。
そのため、夫が自営業者や農業従事者の場合は、この制度は適用されません。
〇婚姻前の期間は含まれません。
〇将来、夫が受け取る予定の年金金額の半分を受け取れるわけではなく、納付実績の期間の分割を受けるというものです。
〇請求期限は2年以内です。
年金分割は、夫婦協議の上で決定しますが、合意に至らない場合は、家庭裁判所に調停を申立てることができます。
調停でも合意に達しない場合は、審判に移行します。
婚姻費用分担請求
別居中、または離婚の話し合い中はまだ夫婦であるため、この期間の生活費を「婚姻費用分担請求」して支払ってもらうことができます。
これは、夫婦には生活費など「婚姻費用」の分担義務があるからです。
婚姻費用には、生活費や居住費、子供の生活費、学費などが含まれます。
金額は夫婦協議の上で決定しますが、合意に至らない場合は、家庭裁判所に調停を申立てることができます。
裁判所は、「婚姻費用算定表」から金額を算定します。
特に熟年世代や専業主婦の方の場合、離婚後の生活費の問題は重要ですから、まずは、共有財産がどのくらいあるのか事前に調べてまとめておくことをおすすめします。
また、夫婦の話し合いは当事者同士の場合、上手くまとまらないことも多いので、難しいようであれば弁護士などの専門家に依頼するのもいいでしょう。
「ずいぶん敵を持ったけど、妻よ、お前のようなやつははじめてだ」
(ジョージ・ゴードン・バイロン/イギリスの詩人)