離婚と親権 その解決法は? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
メニュー
みらい総合法律事務所
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。

離婚と親権 その解決法は?

2014年11月16日

ダビデ王の息子で、古代イスラエル第3代目の王・ソロモンは、多くの知恵を持った賢者だったといわれています。

旧約聖書には、古代イスラエルの最盛期を築き、神から知恵を授かったというソロモン王の逸話で、2人の母が子供を巡って争う裁判の話があります。

これは後に、名奉行「大岡越前」として有名な江戸時代中期の幕臣・大名だった大岡忠相の逸話「子争い」にも影響を与えたという説があるようです。

ある時、2人の女が1人の子供を連れてきて、互いが「自分が本当の母親だ」と主張します。
そこで大岡越前は、「それぞれが子供の右腕と左腕を持って引っ張り、勝った方を実母とする」といいました。
すると、子供が痛がって泣くので、1人の女が思わず手を放します。
大岡越前は、手を離した女を実母とします。
それは、「本当の親なら子供を思うものである。子供が痛がるのにそれでも腕を引っ張るのは本物の母親ではない」という理由でした。

しかし、古今東西、子供を巡る親同士の争いは繰り返されているようです。
今回は子供の親権をめぐる、ある主婦の方からの相談です。

Q)43歳の主婦です。夫が不倫をしていることがわかったので、離婚したいと考えています。でも、子供とは絶対に離れたくないんです。今まで何度か言い争いになり、その度に夫は自分が子供の面倒をみると言います。子供を手放さずに離婚するには、どうしたらいいのでしょうか? 子供は15歳の女の子と11歳の男の子です。

A)夫婦が協議のうえで離婚する時、未成年の子供がいる場合には夫と妻のどちらかが必ず「親権者」にならなければいけません。
つまり、親権者を決めなければ離婚できないのです。

しかし、夫婦間の協議で親権者を決められない場合があります。
そのような場合には、家庭裁判所に離婚調停の申立てをし、その中で親権者についても話し合いをします。

親権問題と離婚は切り離せないため、双方の協議で合意が得られない場合は、離婚調停から離婚訴訟へ移行し裁判所の判決を待つことになります。

「離婚審判」という制度もありますが、ほとんど使われていません。

【親権とは】
未成年の子を教育、監護(保護や世話)して、子の財産管理をする親の権利と義務を親権といいます。

親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行います。(民法第818条第1項)

しかし、父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければなりません。(民法第819条第1項)

裁判上の離婚の場合には、裁判所は父母の一方を親権者と定める判決をします。(民法第819条第2項)
【監護権とは】
原則として、親権者が未成年の子を引き取り養育します。
しかし、父母が合意すれば親権者とは別に、未成年の子を引き取り養育する「監護者」を決めることもできます。(民法第766条第1項)

法的にいうと、監護権には以下のものがあります。
〇居所指定権(民法第821条)・・・子の住所の指定をする
〇懲戒権(民法第822条)・・・子に対して懲戒、しつけをする
〇職業許可権(民法第823条)・・・子の職業を親が許可する

親権者を父、監護者を母というように分けて、父が財産の管理をして、母が監護者となって子供と同居するという選択もあるわけです。

場合によっては、離婚協議で合意できないなら、親権を放棄して監護者となって子供との同居を優先したほうがいいケースもあります。

しかし、親権者が別居したまま親権を行使できるのか、という問題や、就学などで意見が分かれた場合にどうするか、などトラブルが予想されますので、親権と監護権を分離するのはおすすめしません。
【養育費とは】
未成年の子供が社会人として自立するまでに必要な費用を「養育費」といいます。

養育費は、父母が協議の上で分担しますが(民法第766条第1項)、基本的には子供を養育しない方の親が支払います。
民法では、子の利益を最も優先して考慮しなければならない、としています。

なお、協議により決定できない場合は、家庭裁判所が決定することになります。
金額の決定には、裁判所で使われる「算定表」を基準にします。
算定表は、裁判所のHPに掲載されています。
【面会交流とは】
別居している親が未成年の子供と会うことを「面会交流」といいます。

以前、「面会交流」について解説しました。
詳しい解説はこちら⇒「面会交流は成立しない!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1610

いつ、どこで、どうように、どのくらいの回数・時間で会うのか、付き添いやお泊りはあるのかなど父母が話し合いで決めます。

こちらも、民法では、子の利益を最も優先して考慮しなければならない、としています。
しかし、子供を養育している方の親が一方の親に子供を会わせたがらない傾向が強く、問題にもなっています。

子供に合わせてもらえない場合、面会交流を求めて家庭裁判所に調停の申立てをすることができます。
調停では、子供の意向を尊重した取決めができるように話合いが進められていきますが、調停が成立しないケースが約4割あるのが現実です。
【親権が認められる条件とは】
親権を争う裁判になった場合、実際に子供と同居している親の方が親権者として認められる傾向はありますが、具体的には以下のような条件などを総合的に見ながら判断されます。

〇子供の年齢・性別・発育状況
〇親の経済力
〇親の年齢・心身の健康状態による監護能力
〇住居や学校などの環境
〇子供自身の意思
そもそも、子供をめぐる争いを話し合いで解決できるくらいなら、夫婦の仲も冷えて憎しみ合い、離婚することもなかったのかもしれません。

しかし、親権者を決めることとは、親同士の感情的しこりやエゴを押しつけることではなく、子供の健全な成長や、これからの未来のために最善の道を選択することです。

本当に子供のことを愛するなら、お互いが歩み寄ることも大切です。

それでも、話し合いが上手くいかないようであれば弁護士などの専門家に相談するのもいいでしょう。
「愛することとは、ほとんど信じることである」
(ビクトル・ユーゴー/フランスの詩人・小説家)

「母ほど自分を認め、信じてくれた人はいない。それなくしては、決して発明家としてやっていけなかった気がする」(エジソン)