残業代の立証はどうするか?
使用者(会社)と労働者の間にリスペクトがあり、互いに尊重し合う関係の中で仕事ができれば、こんなに幸せなことはありません。
しかし現実には、解雇問題やいじめ・パワハラ、労働条件の引き下げなど、労使間の労働紛争が絶えず起きています。
5月に厚生労働省が発表した「平成25年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、労働相談の総件数は105万件あまり。
前年度比で1.6%減となっていますが、それでも6年連続の100万件超えで高止まりしています。
ところで先日、こんな報道がありました。
「9割の求人で不適切記載 固定残業代導入の企業で」(2014年7月29日 産経新聞)
一定額の残業代を手当などの形で事前に支払う「固定残業代制度」を導入している企業が全国のハローワークに出した求人のうち、約9割に不適切な記載があったとの調査結果が発表されました。
報道によると、近年、求人や労働契約の際に固定残業代を盛り込む企業が増えているが、何時間分の残業代に当たるかが不明である、長時間労働の助長、給料の総額を高く見せかけるなどの問題点が見つかっているということです。
労働契約の内容や就業規則等は、各企業によって違うものですが、中には固定残業代どころか、残業代がないという企業もあるようです。
今回は、そうした企業で働く社員の方のお悩みです。
Q)残業代について質問です。私の勤務先では残業代がでません。それなのに、残業は毎日のようにあります。仕事はがんばりたいのですが、やはり「損をしている」、「会社にいいように使われている」と思うと仕事へのやる気がなくなります。お金がすべてとは思っていませんが、自分が働いた対価は当然ほしいです。上司に聞いてみたところ、「うちは前から残業代ないし、社員はみんな納得して働いてる。お前もつべこべ言わず働け」と、まったく取りあってもくれません。法的には、どう対応したらいいのでしょうか?
以前、残業代について解説しました。
「残業代を支払わない会社には倍返しのツケがくる!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1574
中華料理のチェーン店「餃子の王将」で、社員とパート従業員の計923人に対し、2億5500万円分の残業代の未払いがあったというものでした。
「労働基準法」では、使用者が労働者を働かせることができる労働時間は、原則として1日8時間、一週間で40時間までと定められています。これを「法定労働時間」といいます。
法定労働時間外の勤務をさせた場合、会社は労働者に対して「割増賃金」(残業代)を支払わなければいけません。
よって、質問者の方は会社に対して残業代を請求できますし、支払ってもらう権利があります。
ただし、実際に会社に請求するには、毎日の始業時間と終業時間、そして実労働時間をできるだけ正確に、客観的に特定しなければいけません。
タイムカードのコピーや、勤怠システムのデータを出力したものがあれば、一番よいでしょう。
それらがない場合には、業務上のメールやFAX、勤務時間が記載してある業務日報や報告書、自分の手帳に記載した勤怠時間のメモ、パソコンのログイン・ログアウトのデータの時間なども証拠となります。
では、勤務記録が自分の手元にない場合はどうでしょうか?
この場合は裁判で立証するしかないでしょう。
しかし、ここまでくると手続きなど難しい部分もあるので、一度、弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。
反対に、会社の側では、きちんと労働者の勤怠管理をしておくことが、残業代の払いすぎを防止することになります。
ちなみに、残業代請求の時効は2年となっています。
2年を過ぎると時効によって残業代は消滅してしまいますので、注意が必要です。