亀岡市登校中児童ら交通事故死事件の刑が確定 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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亀岡市登校中児童ら交通事故死事件の刑が確定

2013年10月24日


ある日突然、愛する人が交通事故で亡くなったら、あなたはどうしますか?
もし、大切な人が交通事故で誰かを傷つけてしまったら?

昨年4月、京都府亀岡市で集団登校中の小学生と引率の保護者ら10人が暴走車に次々とはねられ、3人が死亡、7人が重軽傷を負った事故を記憶している人も多いでしょう。

無免許運転で10人を死傷させた事故が、なぜ危険運転ではないのか? そもそも、危険運転とはどういうものなのか? 事故後、マスコミや世論で、かなり議論が高まりました。

ところで、無免許で車を運転して、自動車運転過失致死傷罪と道交法違反(無免許運転)の罪に問われていた無職少年(19)の刑が今月の16日、確定しました。
懲役5~9年の不定期刑、というものでした。

この事故では、少年が「危険運転致死傷罪」にあたるかが争点になりました。

危険運転致死傷罪(『刑法』第208条2項)の中に、進行を制御する技能を有しないで自動車を運転して事故を起こし、他人に怪我をさせたり、死亡させたりした場合、最長懲役20年に処する、というものがあります。

車を発進させたものの、ハンドル操作ができずにまっすぐ走れない。あちこちぶつけたり、フラフラと蛇行運転する。ブレーキ操作がわからず、つねに急ブレーキになるなどの状態を危険運転としています。

事故の前夜から、入れ替わり友人らを乗せながら、少年は京都市内と亀岡市内で30時間以上ドライブを続け、翌朝、居眠り運転で児童たちの列に突っ込みました。

当初、京都地検や京都府警は「自動車運転過失致死傷罪」(『刑法』第211条2項)よりも罰則の重い、危険運転致死傷罪の適用を視野に入れていました。
被害者側も重い罰則を求めていました。

しかし京都地検は、少年は以前から無免許運転を繰り返しており、事故の直前も無事故で長時間運転していたことから、運転技術はあると判断し、自動車運転過失致死傷罪で起訴。

一審判決では、懲役5年以上8年以下の不定期刑が言い渡されました。

そして今回、二審の判決の後、検察側と弁護側双方が上告しなかったため、刑の確定となったわけです。

ではなぜ、無免許運転にも関わらず、この事故は危険運転と認められなかったのでしょうか。

2001(平成13)年の刑法改正まで、自動車事故はすべて「業務上過失致死傷罪」(『刑法』第211条)で処罰されていました。最長5年の懲役です。

しかし当時、危険な運転による事故が多発していたことで、危険運転致死傷罪という重罰を作りましょうということになりました。

ここでは、特に危険な5つの運転行為を危険運転致死傷罪として定めたために、免許の有無ではなく、運転技術の有無が重視されることになったのです。
つまり運転技術があれば、たとえ無免許でも危険運転にはならないということです。

ただ近年、無免許による重大事故が頻発しているように思います。
無免許を危険運転としなくてもいいのか、という議論もだんだんと盛りあがってきています。

日本には運転免許制度があり、免許がなければ自動車の運転はできない国なのです。
そうであるにも関わらず、自分が無免許であることを知りながら運転して事故を起こす。

これが危険運転ではなくていいのかという議論は、当然なされていい。危険運転致死傷罪や自動車運転過失致死傷罪をさらに重罰にするような改正論議がなされていいのではないかと私は考えます。

平成25年6月7日の衆議院本会議で、改正道路交通法が可決しました。

その内容の一つに無免許運転の罰則強化があります。

旧法では、無免許運転の法定刑は、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」でしたが、改正道路交通法では、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

しかし、それでも無免許による重大事故を起こした者を罰するには刑が軽すぎるのではないか、という議論がなされていました。

そこで、第183回国会に、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案」が提出されましたが、まだ成立していません。

この法律では、無免許運転で自動車事故を起こした場合の刑を重くする内容が含まれていますので、議論の動向を見守りたいと思います。

詳しくは、また機会があるときに解説したいと思います。

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