有名人の飲酒暴行事件が多発中。お酒にはご用心! | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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有名人の飲酒暴行事件が多発中。お酒にはご用心!

2013年10月18日


酔って狂乱、醒めて後悔。

ドイツのことわざにあるそうです。

日本のことわざにもありますね、酒は飲んでも飲まれるな……
身につまされる経験をした人も多いのではないでしょうか。

さて最近、酔ったいきおいでタクシー運転手に暴行する事件が立て続けに起きています。

タクシー運転手を殴るなどしたとして、サッカー元日本代表の前園真聖氏(39)が暴行容疑で現行犯逮捕(10月13日)

また、タクシー運転手を蹴るなどしたとして、女優の松雪泰子さんの弟でミュージシャンの男(34)が傷害容疑などで現行犯逮捕(10月11日)

タクシー運転手に暴行し、料金を踏み倒したとしては集英社社員で『週刊ヤングジャンプ』の編集長の男(46)が強盗容疑で逮捕(10月16日)

楽しいお酒の酔いのはずが他人を傷つけ、自分自身も傷つけてしまった残念なケースです。

お酒は楽しく、美味しくいただきたいものですが、
じつは、「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」(通称、酔っ払い防止法)
というものがあるのを、ご存じでしょうか?

これはお酒の飲み過ぎによって、個人や社会に与える悪影響を防止しようというのが趣旨です。

たとえばこの法律の中には、警察官は酩酊者の保護をする義務がある、とあります。
つまり、ベロンベロンに酔っぱらって、その辺で寝ていると警察に連れて行かれるということです。

さらには、酩酊者が、公共の場所や乗り物で、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした時は、拘留又は科料に処する、とあります。

これは要注意です。酔って人に迷惑をかけるのは犯罪だということです。
場合によっては、殴るなどの暴力をふるわなくても逮捕されてしまうわけですね。

今回の3件のケースでは、酒に酔ったうえで殴る、蹴るなどの暴行をタクシー運転手に加えているため、『刑法』の傷害の罪が適用されます。

第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

ところで、前園氏は、酒に酔って暴行をした、とういことになっています。

当初、「酒に酔って憶えていない」と供述していたそうです。

弁護士をしていると、酒に酔って暴行をしてしまった人の弁護をすることがありますが、「酔って憶えていない」と弁解する人が多いです。

確かに、酔っ払った時の言動を全然憶えていない人は、私の周りにもいます。

ここでひとつ難しく、デリケートな問題があります。
心神喪失状態での暴行ではないか、ということです。

『刑法』では、こう定めています。

第39条(心神喪失及び心身耗弱)1項
心神喪失者の行為は、罰しない。

心神喪失とは、罪を犯した者が物事の是非や善悪を判断できない状態のことで、責任能力がないと判断されれば、無罪となることがあるのです。

実際の裁判では、専門家による精神鑑定などが行われ、その結果をもとに判断されます。

多くの場合には、被告人が「酔って憶えていない」と主張し、弁護人が「心神喪失」の主張をしても、「判断能力あり」として、有罪判決が下されます。

今回も、「心身喪失」の主張は難しいのではないでしょうか。

酒癖が悪い人は、周りから、酒に酔った時にどのような状態になっているか、聞いているはずです。

酒を飲み始める時は、判断能力があるのですから、その時に、節制する強さを持ちたいものです。