お笑い新世紀
新しい時代の到来だ。
26日に毎年恒例の「M-1グランプリ」が開催され、「笑い飯」が悲願の優勝を果たした。
しかし、より多く笑いを取ったのは、新星「スリムクラブ」だろう。
「M-1グランプリ」は、視聴者にとって最も面白かったコンビが優勝するのではない。
面白さと同時に、芸能としての漫才の技術点が高いことが要求される。
それは、フィギュアスケートしかり、器械体操しかりである。
見ている方が「すごい!」と思っても、協会などで取り決められた技術点などを元に採点されるので、点数を見ないと、誰が優勝するのかわからない。
「M-1」も同じである。
最も面白かったのは、「スリムクラブ」である。
しかし、「スリムクラブ」は、これまで主流だった漫才の型を破っている。
その意味で、技術点が低かったのだと思われる。
「スリムクラブ」の妙は、独特の間にある。
漫才は、リズムが重要だ。
北野武氏が昔コンビを組んでいた「ツービート」のリズムをツービートとすると、島田紳助氏の「紳助竜介」のリズムはフォービート、松本人志氏のダウンタウンはワンビートだろう。
そして、「スリムクラブ」はオフビートだ。
テンポの良いリズムがなく、逆にリズムを壊してしまったところに笑いが発生している。
今後、変幻自在の間を使いこなせれば、人気が続くだろうが、特定の間しか使いこなせなければ、視聴者は慣れてしまい、間から生ずる笑いは少なくなるだろう。
クイズミリオネアが面白かったのは、司会のみのもんた氏の「ファイナルアンサー?」と尋ねる時の独特の間だった。
「スリムクラブ」は、「間の魔術師」を目指して頑張って欲しい。
今回、もう一つ、注目したのが、「ジャルジャル」である。
彼らはコントを得意とするようだが、今回は、漫才の場でコントをしているかのようだった。
漫才とコントの融合である。
その意味で、芸能としての漫才の技術点は高くない。
しかし、根本的なことから考えてみよう。
視聴者は、漫才の技術点に注目しているか?
伝統的なボケとつっこみをしなければ、怒って帰ってしまうか?
そんなことはしない。面白ければ良い。
今後、お笑いの世界は、漫才やコントという枠組みを超えて、視聴者の立場に立ち、より面白いものに育っていって欲しい。
くしくも「M-1」は、今回最終回を迎えたが、これを区切りにお笑い新世代が到来してくれることを祈る。
「M-1」は、格闘技でいうと、「K-1」だ。
「K-1」が、グローブをはめ、決められたルールの中で闘うように、「M-1」は、漫才という決められたルールの中で闘っている。
お笑いは、今後、「プライド」化して欲しい。お笑いの総合格闘技だ。
よりルールを少なくし、視聴者が最も面白いと感じた者をチャンピオンに選ぶ。
完全実力主義だ。
タイトルは、「プライド」ならって、「ワライド」でいいのではないだろうか。