給与所得と事業所得の区別の例示
今回は、給与所得と事業所得の区別基準です。
情報公開により取得された国税局の内部文書を整理しました。
東京国税局 平成15年7月 第28号法人課税課速報(源泉所得税関係)(TAINS H150700-28)です。
この中に、実務において、給与所得と事業所得を判定する際に参考となる例示が記載されています。
ある事実関係があると、給与所得と事業所得のどちらに判例が傾くか、という例示です。
===================
●給与所得の認定に傾く例示
労働基準法の適用を受ける
支払者が作成している組織図・配席図に記載がある
役職(部長、課長等)がある
服務規程に従うこととされている
有給休暇制度がある
他の従集員と同様の福利厚生を受けることができる(社宅の貸与、結婚祝金、レクリェーション、健康診断等) |
通勤手当の支給を受けている
他の従業員と同様の手当を受けることが可能(住居手当、家族手当等)
時間外(残業)手当、賞与の制度がある
退職金の支給の対象とされている
労働組合に加入できる者である
支払者からユニフォーム、制服等が支給(貸与)されている
名刺、名札、名簿等において支払者に帰属しているようになっている
業務に当たって、支払者側のマニュアルに従うこととされている
支払者の作ったスケジュールに従うこととされている
本来の請負業務のほか、支払者の依頼・命令により、他の業務を行うことがある
勤務時間の指定がある
勤務場所の指定がある
旅費、交通費を会社が負担している
報酬の最低保障がある
その対価が材料代等の実費とそれ以外に区分して請求される
●事業所得の認定に傾く例示
支払を受ける者の提供する労務が許認可を要する業務の場合、本人は資格を有している(例 運送業)
その業務に係る材料等の在庫を自己で保管している
報酬について値引き、値上げ等の判断を行うことができる
その対価の支払者以外の顧客を有しているか
以前にも他の支払者のもとで同様な業務を行っていた
店舗を有し一般客の求めに応じているものである
その対価の支払者以外の者からの受注を受けることが禁止されている
同業者団体の加入者である
使用人を有している者である
支払を受ける者がその業務について自己の負担で損害保険等に加入している
業務の遂行の手順、方法などの判断は本人が行う
遅刻、無断欠勤の場合、それに見合う報酬が支払われないほか罰金(報酬の減額)がある
その対価に係る請求書等の作成がされている
その対価が経費分も含めて一括で請求されている
==================
関与先で行われている金員の支払の判定の際に参考にしていただければと思います。
また、たとえば、事業所得と判定したのであれば、実際の運用を、上記の【事業所得の認定に傾く例示】が多く含まれるように関与先に助言指導をしていくことをおすすめします。
微妙な判定になる場合には、説明と将来否認される可能性がある旨の証拠化もおすすめしたいと思います。