緊急事態宣言の法律要件 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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緊急事態宣言の法律要件

2020年04月03日

新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出るのではないか、という噂が流れています。

海外の状況を見ると、外出が禁止され、むやみに外出すると、刑罰を科される、という国もあります。

では、日本で緊急事態宣言が出された場合は、どうなるのでしょうか。

この点については、法律に基づいて宣言が出されますので、法律を確認してみました。

法律としては、2020年3月14日改正された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づいて行われます。

緊急事態宣言は、政府対策本部長(内閣総理大臣)が区域と期間を示して行います(法32条1項)。

内閣総理大臣の緊急事態宣言を受けて、都道府県知事が次のようなことを行います。(全てではありません)

(1)住民に対し、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことなどを「要請」(法45条1項)

違反した場合の罰則はありません。

(2)学校、劇場、集会場、百貨店、ホテル、遊技場、キャバレーなどの施設管理者や催物開催者に対し、使用制限・使用停止・開催制限・開催停止などを「要請」(法45条2項)

⇒正当な理由なく応じない時は「指示」「公表」

対象となる施設については、「新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令」11条に規定しています。
http://ow.ly/VlaL50yYIpr

(3)臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋又は物資の所有者及び占有者の同意を得てこれらを使用(法49条1項)

⇒正当な理由なく同意しない等の場合で、「特に必要と認めるとき」は、不同意で使用(法49条2項)

(4)医薬品、食品、医療機器その他衛生用品、再生医療等製品、燃料など(施行令14条)の所有者に対する売渡「要請」(法55条1項)

⇒正当な理由なく応じない時で、「特に必要があると認めるとき」は、「収用」(法55条2項)

(5)(4)の物資を確保するため緊急の必要があると認めるときは、生産などを行う者に対し、保管を「命令」(法55条3項)

⇒命令に対して違反し、物資を隠匿し、損壊し、廃棄し、又は搬出した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金(法76条)

さらに緊急性が高くなると、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)も検討されることになります。以下、列記しますが、全てではありません。

<建物への立ち入り制限、禁止>
(1)都道府県知事は、一類感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある建物について、当該感染症のまん延を防止するため必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、厚生労働省令で定めるところにより、期間を定めて、当該建物への立入りを制限し、又は禁止することができる。(32条1項)

<建物封鎖>
(2)都道府県知事は、前項に規定する措置によっても一類感染症のまん延を防止できない場合であって、緊急の必要があると認められるときに限り、政令で定める基準に従い、当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある建物について封鎖その他当該感染症のまん延の防止のために必要な措置を講ずることができる。(同条2項)

<交通の制限又は遮断>
(3)都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、七十二時間以内の期間を定めて、当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。(33条)

では、緊急事態宣言は、どのような場合に出るのでしょうか。

まず、今回の新型コロナウイルスが、緊急事態宣言の前提となる「新型インフルエンザ」に該当することが必要ですが、この要件は、「国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるもの(かかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、インフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められること)」です。(特措法32条1項、施行令6条1項、感染症法6条6項1号)

これは、該当するでしょう。

そして、緊急事態宣言の要件は、特措法32条1項が

(1)全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼす場合

又は、

(2)政令で定める要件に該当した場合

としています。

そして特措法施行令6条2項は、次の場合に、要件に該当する、としています。

① 調査の結果、感染経路が特定できない場合

② 感染者等が、新型インフルエンザ等を公衆にまん延させるおそれがある行動をとっていた場合その他の新型インフルエンザ等の感染が拡大していると疑うに足りる正当な理由のある場合

次に、「いつ出るか」です。

手続きは、次のように進みます。

(1)政府対策本部を設置

(2)有識者等の意見を聴いて、「基本的対処方針」を決定

(3)有識者等に緊急事態要件に該当するか聴取

(4)内閣総理大臣による緊急事態宣言

すでに、(1)、(2)は完了しています。

そこで、今後、(3)で前述の緊急事態要件に該当する旨の意見があり、その後内閣総理大臣が会見し、その後、都道府県知事が会見する、ということになると、緊急事態宣言が出される可能性大、ということになるかと思います。

なお、上記は、2020年4月1日時点での情報です。法律や政令がまた変わるかもしれませんので、チェックしていただくようお願いいたします。