給与を外注費処理で税理士懲戒処分
2020年01月21日
今回は、税理士向けの記事です。
国税庁のホームページにおける税理士の懲戒処分の事例が更新されました。
その中に、気になる事例がありました。
被処分者は、関与先であるA社及びB社の消費税及び地方消費税の確定申告に当たり、従業員に対する給与について、その一部を外注費に計上することによって、消費税及び地方消費税額を圧縮した真正の事実に反する申告書を作成した。
処分としては、「税理士業務の禁止」です。
税理士業務の禁止は、税理士登録抹消処分され、処分日から3年を経過する日まで税理士資格なし、ということで、かなり厳しい処分です。
法令違反の根拠としては、税理士法45条1項です。
財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は第三十六条の規定に違反する行為をしたときは、二年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができる。
「故意」の不真正税務書類の作成を認定した、ということです。
従業員に対する給与を外注費にしたがる経営者がいますが、多くの場合には税理士の指導により実態が業務委託になるよう整えてくれると思います。
しかし、中には形式だけ整えて税理士の指導に従わない経営者もいると思います。
その場合、税理士としては、外注として処理できない旨経営者に助言指導することになりますが、経営者が従わない場合に、将来の否認の可能性を指摘した上でやむなく外注費として処理する先生もいらっしゃるかと思います。
ところがこの場合には、
「税理士が、従業員に対する給与について、その一部を外注費に計上することによって、消費税及び地方消費税額を圧縮した真正の事実に反する申告書を作成した。」
ということになってしまい、先ほどの懲戒処分の事例と同じ行為になってしまいます。
経営者に助言指導したとしても、税理士が知っている以上、「故意」が認定される、ということです。
この点、十分注意したいところです。