ウェブサイトのIDを何個も取得すると犯罪!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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ウェブサイトのIDを何個も取得すると犯罪!?

2018年07月15日

今回は、企業の運営サイトが発行する会員IDに関わる犯罪について解説します。

「サイトID不正取得疑い“6万個取得し2千万円を売り上げ”と供述」(2018年7月12日 産経新聞)

リクルート社の運営サイトで使える会員IDを不正に取得したとして、埼玉県警は無職の男(38)を私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで逮捕しました。

事件の流れは次の通りです。

・容疑者の男は、2016(平成28)年6~9月、偽名などを使って、リクルートが運営する美容室予約の「ホットぺッパービューティー」や旅行予約の「じゃらんnet」など4つのサイトの会員IDを不正に取得。

・キャンペーンで割引ポイントが付与されたIDをインターネットオークションで販売。

・IDは、付いているポイントに応じ、ネットオークションで980~240円で落札された。

・男は大量のメールアドレスを自動生成するソフトを利用して、これまでに6万個のIDを取得し、2千万円を売り上げたと供述していることから、県警が裏付けを進めている。

次に本罪の条文を見てみます。

「刑法」
第161条の2(電磁的記録不正作出及び供用)
1.人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
3.不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第1項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。

「電磁的記録」とは法律用語で、刑法では次のように定義されています。

「刑法」
第7条の2
この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。

簡単にいうと、電子計算機(コンピュータやパソコン)で処理可能なデジタルデータのことで、過去の判例ではさまざまなものが認められています。

「電磁的記録の例」
・電子メール
・USBメモリ
・CD-ROM(光ディスク)
・フロッピーディスク(磁気ディスク)
・電車などの定期券等の磁気部分
・デジタル放送を観る際に使うB-CASカード
・オンラインゲーム内のアイテム
・ビデオテープやカセットテープなどのアナログデータ
・電子計算機(コンピュータやパソコンを含む)による情報処理の用に供されるもの など。

ちなみに、身近なところでは、キャッシュカードやクレジットカード、プ
リペイカードなどの磁気部分がありますが、これらは第163条の2(支
払用カード電磁的記録不正作出等)が適用されます。
こちらの法定刑は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となっています。

「作出及び供用」とは、新しく作り出して、多くの人が使えるようにすることです。

なお、容疑者の男は架空の名前や生年月日で会員登録をしていたようですが、個人の会員IDなので「私電磁的記録」ということになります。

会員IDは、簡単に作れてしまうことも多いので、このようなことを思いついたのでしょうが、ウェブサイト主催者が想定していないようなことをすると、知らない間に犯罪が成立していることがあります。

「裏技」、「簡単副業」などとして紹介されることがあっても、想定されていない使い方は危険ですので、特にお金が儲かってしまうような方法はやめておきましょう。