従業員の転落死事故と会社の安全配慮義務とは!?
危険度の高い仕事の現場では、従業員のケガや死亡などの重大事故が起きる可能性が高まります。
今回は、従業員の転落死事故と会社の責任について解説します。
「高所作業中に男性社員が転落死、マリンフードと副工場長を書類送検」(2017年11月17日 産経新聞)
泉大津労働基準監督署は、高所作業に必要な危険防止措置をとらなかったとして、大阪府豊中市の食品製造業と同社の40代男性副工場長を労働安全衛生法違反の疑いで書類送検しました。
事故が起きたのは、2017年7月17日午前8時半頃。
同社泉大津工場の倉庫で、50代の男性社員が在庫品の管理をする際、高さ約5・5メートルの作業台から転落して死亡しました。
報道によると、書類送検容疑は、作業台に手すりを設置するなど、転落を防止する対策を講じなかったとしています。
【労働安全衛生法はとは?】
労働安全衛生法は、1972年に施行された法律です。
労働災害(労災)の防止など、労働者の安全と衛生についての基準を定めており、事業者に対して労災防止の事前予防のための安全衛生管理措置を定め、遵守を義務づけています。
かつては、職場における労働者の安全と衛生については労働基準法に規定されていましたが、これらを分離して独立させたのが本法ということなります。
「労働安全衛生法」
第1条(目的)
この法律は、労働基準法と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
第3条(事業者等の責務)
1.事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。
「事業者の講ずべき措置等」について規定している条文は次のものです。
第21条
1.事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2.事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
第24条
事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
これに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役、又は50万円以下の罰金に処されます。(第119条)
労働安全衛生法は、会社に対して安全衛生における一定の措置を講ずるように義務づけているものです。
そのため、会社は義務であるのをわかっているのに一定の措置を講じていなかったという場合に、今回のケースのように会社と責任者が労働安全衛生法違反に問われます。
【労働災害(労災)とは?】
労働者(従業員)が、業務に起因して負傷(ケガ)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至ることを「労働災害(労災)」といいます。
労災には大きく2つあり、業務中の労災は「業務災害」、通勤中の交通事故などによるケガや病気などは「通勤災害」となります。
労災が発生した場合、会社が労災手続きを行い、労災が認定された場合には、被害にあった労働者に労災給付金が支給されます。
これは、労災には「労働基準法」と「労働者災害補償保険法(労災保険法)」により災害補償制度があるからです。
しかし、労災給付金ですべての損害賠償金をカバーできるわけではありません。
その場合、労働者やその遺族は、会社に対して民事上の損害賠償請求をすることができます。
なぜなら、会社には労働者に労働させる際にはケガや病気、死亡事故を防ぐために安全に配慮する義務=「安全配慮義務」があるからです。
詳しい解説はこちら⇒
「安全配慮義務を怠ると会社は損害賠償請求される!?」
会社がこれを怠った場合には、民事において不法行為責任や安全配慮義務違反として、労働者や遺族は正当な損害賠償金を請求することができることになります。
また、ここまで見てきたように、会社には従業員の安全と衛生を守る義務があるのですから、業務の安全の徹底には慎重な対応が必要になります。
いずれにせよ、法的な対応や手続きは難しいので、労災問題が起きた場合は労災に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
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