事後強盗って、どんな罪?
インターネットで「事後」と検索してみると、「事後報告」、「事後承諾」、「事後処理」などに並んで、「事後強盗」というキーワードが出てきます。
じつは、事後強盗とは犯罪の名称です。
一体、どのような罪なのでしょうか?
「事後強盗容疑で保育士逮捕 倉敷署 万引、保安員振り切る」(2016年8月17日 山陽新聞)
倉敷市内のスーパーで万引し、制止しようとした保安員の腕を引っかくなどして逃走した保育園のパート保育士の女(42)が逮捕されました。
逮捕容疑は、事後強盗です。
事件が起きたのは、8月16日午後3時15分頃
容疑者の女はスーパーで、煮豚や煮卵など食料品17点、計3193円相当を万引。
呼び止めた同店の保安員女性(36)の腕を引っかいたうえ、駐車場に止めていた乗用車を急発進。
ドアにつかまっていた保安員を振り切って逃げたようです。
倉敷署によると、保安員が車の色やナンバーを覚えており、犯行を特定。女は「間違いない」と容疑を認めているということです。
普通、「強盗」というと、包丁とかを持って銀行に行き「カネを出せ!」などと迫る行為をイメージします。
しかし、この報道では、単なる万引き犯のように思えます。
なぜ、「強盗」と名の付く犯罪が成立してしまったのでしょうか。
条文を見てみましょう。
「刑法」
第238条(事後強盗)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
たとえば、映画やドラマにも次のようなシーンがあります。
侵入した家の人に見つかってしまった空き巣の犯人。
その時、盗んだものを取り返されるのを防ぐため、逮捕されるのを免れるため、あるいは証拠を隠滅するために、犯人が相手に暴行や脅迫を加えている。
こうした場合に、窃盗犯が相手を殺傷してしまい、重大な犯罪に発展するケースがしばしばあります。
そのために、処罰としては強盗罪と同様に扱うこととしたのが事後強盗罪ということになります。
つまり、「事後強盗」という犯罪は、「窃盗犯」だけが犯すことができる犯罪だ、ということです。
ちなみに、事後強盗は、昏睡強盗(第239条)とともに「準強盗」とも呼ばれることがあります。
刑罰としては、窃盗罪(第235条)は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですが、事後強盗罪の場合は強盗罪(第236条)と同じく、5年以上の有期懲役となります。
重いですね。学生時代、初めてこの犯罪を知った時にはビックリしたことを思い出しました。