幼稚園児の死亡事故で園長に有罪判決:業務上過失致死傷罪
幼稚園での事故により園児が死亡した事件で、園長に有罪判決が出たようです。
今回は、学校事故と刑事事件について解説します。
「元幼稚園長のみ有罪、愛媛 川遊び事故死判決、2人無罪」(2016年5月30日 共同通信)
2012年、愛媛県西条市で宿泊保育中に川遊びをしていた私立幼稚園の園児らが流され、当時5歳の男の子が死亡、2人がケガをした事故について、業務上過失致死傷の罪に問われた当時の園長や教諭ら3人の判決がありました。
松山地裁は、当時の園長(75歳)にのみ罰金50万円(求刑罰金100万円)の判決を言い渡し、共に起訴された教諭ら2人は無罪(いずれも求刑罰金50万円)としたとのことです。
裁判長は判決理由の中で、「上流の天候を確認せず、遊泳場所の増水の危険性がないと判断したのは園長として安易な態度だった」と指摘したということです。
では、条文を見てみましょう。
「刑法」
第211条(業務上過失致死傷等)
1.業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
今回は、宿泊保育中だということですので、園長は業務中という認定をされています。
そして、園児に川遊びをさせる際には、川に流されてしまう可能性があるわけですから、自らあるいは教諭をして、常時看視し、監督しなければならないことになります。
この注意義務を怠った場合には、業務上必要な注意を怠った、ということで、業務上過失致死傷罪が成立する可能性があります。
教諭2人は無罪が言い渡されていますが、この理由は明らかにはなっていません。
学校における子供の事故については以前にも解説しています。
詳しい解説はこちら⇒
「学校での柔道事故で8150万賠償命令【国家賠償法】」
https://taniharamakoto.com/archives/2031
「学校での人間ピラミッドや組み体操事故の法的責任は?」
https://taniharamakoto.com/archives/2062
学校(保育所)の管理下における子供の事故、災害では、被害者や親は学校に損害賠償請求することができます。
この場合、公立校であれば国家賠償法、私立校ならば民法715条が適用されます。
ちなみに、学校(保育所)の管理下とは、授業中(保育所における保育中を含む)、部活動や課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学(通園)中などが該当します。
今回も、幼稚園、園長、教諭などに対しては、刑罰の他、民事の損害賠償請求ができる可能性があります。
子供たちが傷つかず、安全に学校(保育所)生活が送れるよう、運営者を含めた関係者には今一度、注意義務の徹底を図ってほしいと思います。
学校事故のご相談は、こちらから。
http://www.bengoshi-sos.com/school/