一度書いた遺言書を変更したくなったら!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
メニュー
みらい総合法律事務所
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。

一度書いた遺言書を変更したくなったら!?

2014年06月07日

自分が死んだ後の財産の処分について、遺言書を書くことは大切なことです。

しかし、一度遺言書を書いたものの、その後で遺言書の内容を変更したくなったらどうしたら良いでしょうか?

以前、「遺言書の書き方」について解説しました。

解説記事はこちら→ https://taniharamakoto.com/archives/1372

今回は、「遺言書の加筆・訂正・変更の仕方」について解説したいと思います。

【自筆証書遺言の加筆・訂正・変更】
遺言者が自分で書いた「自筆証書遺言」の内容を訂正・変更するには、厳格な方式が定められています。なぜなら、偽造や変造を防止するためです。
「民法」第968条では、遺言者が行うべき以下の要件が定められています。

①変更した場所を指示する。
②変更した旨を付記する。
③これに署名をする。
④変更した場所に印を押す。

この4つの条件を正しく守ることで、加筆・訂正した遺言状に効力が生じます。

【遺言の撤回】
加筆・訂正する箇所が広範で詳細な内容におよぶ場合は、既存の遺言をいったん撤回して新たに書き直すほうがいい場合があります。
その際、民法では以下のように規定されています。

「民法」第1022条(遺言の撤回)
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

「民法」第1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等)
1.前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2.前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

「民法」第1024条(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

わかりやすくまとめると、以下のようになります。

①前の遺言の方式いかんを問わず、すべての方式の遺言で、いつでも撤回することができる。

②どの方式・種類の遺言に変更してもよい。

③遺言は、その一部でも全部でも撤回できる。

④前の遺言で定めた内容について、同一の対象を後の遺言で異なった定めをした場合、その部分に関しては前の遺言は撤回されたことになる。

※たとえば、前の遺言書に「不動産Aを長男に相続させる」とあったものが、後の遺言書では「不動産Aを次男に相続させる」となっている場合、長男への相続の遺言は撤回されたことになります。

⑤遺言者の死後に相続する予定だったものを生前処分(売却や贈与など)した場合、遺言は撤回したものとみなされる。

⑥遺言者が故意に、遺言書の全部または一部を破棄した場合、その部分の遺言は撤回したものとみなされる。

※たとえば、遺言書を焼き捨てたり、判別できないほど黒く塗りつぶした場合などが当てはまります。

⑦遺言者が故意に、遺贈の目的対象物を破棄した場合、その部分についての遺言は撤回されたとみなされる。
※たとえば、父親が家にわざと火をつけたり、土地に劇薬を撒いたり…

人は誰しも間違いがあったり、後から変更したいことが出てくるものです。

サクサクっと消しゴムで消して書き直せばOK! ならば簡単でいいのですが、遺言書はそうはいきません。
法律をしっかり守って変更してください。

間違っても「消せるボールペン」で書いてはいけませんよ。

この機会に正しい遺言書の訂正・変更の仕方を覚えて、万が一の事態に備えておくのも大切なことだと思います。