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柔道大会の事故で1億2000万円の賠償命令


2017年4月27日

6年前、高校で行なわれた柔道大会で重傷を負った男性と両親が、県に
対して損害賠償を求めた訴訟の判決が出たようです。

「校内の柔道大会で後遺症 福岡県に1億2千万円賠償命令」(2017年4月24日 朝日新聞デジタル)

事故が起きたのは2011年3月、福岡県の県立高校で開かれた武道大会のクラス対抗柔道の試合中のことでした。

男性は同級生と対戦中に転倒。
畳に頭部を打ちつけた際、頚髄損傷のケガを負い、四肢麻痺などの重度の後遺障害が残ったということです。

福岡地裁での判決の概要は次の通りです。

・前年度の大会でも骨折など2件の事故があったのに、原因分析や予防策を協議した形跡がない。
・生徒らの歓声で盛り上がり、冷静さを欠く試合になって事故が起きる可能性があった。
・大会固有の危険性を十分に説明し、指導したとは認められない。
・県は、事故を未然に防止する注意義務に違反した。

以上のことから、県の過失を認め、計約1億2400万円の支払いを命じています。
【柔道では重傷事故になるケースが多い】
日本スポーツ振興センターが公表している災害共済給付のデータ(平成10~平成21年度の集計)によると、中学や高校での体育の授業における死亡・重度の障害事故の発生件数の上位は、陸上競技(87人)、水泳(24人)、バスケットボール(17人)となっています。
柔道は9人となっており、体育の授業での安全管理については一定の成果が出ていると考えられます。

しかし、部活動での死亡・重度の障害事故の発生件数を見てみると、柔道(50人)、野球(35人)、バスケットボール(33人)となっており、やはり武道である柔道で重大事故が起きる確率が高いことがわかります。

柔道における学校事故では、初心者が中上級者に投げられ、受け身を取ることができずに頭部に重傷を負うケースが多いのですが、今回の事故のように頸部に外傷を負って重大な後遺障害が残ってしまうことも多いようです。

報道内容からだけでは詳細はわかりませんが、今回の事例では、毎年この高校の武道大会は選手も応援する生徒も大変に盛り上がるもので、異様な熱気の中で学校側が安全配慮や注意義務を怠ったと判断されたものと思われます。
【被害者本人や親は損害賠償請求をすることができる】
学校の管理下、たとえば授業中や部活動中、または課外授業中、休憩時間(始業前、放課後を含む)、通学中における子供の事故では、通常は学校が加入している日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(医療費、障害・死亡見舞金)が支払われます。

しかし、今回の事故のように子供が重度の後遺障害を負ったり、死亡した場合は、災害共済給付金だけでは損害賠償金額すべてを賄えないことが多いものです。

そうした場合、被害者本人や両親は損害賠償請求をすることができます。

その相手は、民間の学校の場合は教員個人や学校になり、国公立校の場合は国や地方自治体になります。

担当教員に「注意義務違反」があった場合は、教員個人には不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
同時に、担当教員が所属する学校には、使用者として使用者責任に基づく損害賠償責任が発生します。

「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
さらに、学校は生徒に対して安全配慮義務を負担していたと考えられることから、債務不履行に基づく損害賠償責任が発生する可能性もあります。

一方、前述したように国公立校での事故の場合は、被害者本人や両親は国や地方自治体に対して損害賠償請求をすることができます。

「国家賠償法」
第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

今回の事故は、学校の武道大会におけるクラス対抗柔道の際に起きたものです。

心身の健全な発達をはかる等の学校教育における体育的行事を行う際には、教師や学校には生徒の安全に配慮する義務があります。

運動会での事故の事案について、「事前に十分に計画を練り、運営方法を検討する等の義務、競技内容、生徒の能力に応じて、生徒に対し指導、監督、注意する義務、運動会に伴う事故を回避するため、一定の場合には生徒の動静を監視して、行事の進行状況等を把握し、危険な状態が発現すれば直ちに対応できるようにしておくべき義務がある」とされています(福岡地裁平成11年9月2日)。

そして、柔道は、「武道」であり、身体接触を伴うものですから、それ自体すでに生徒の生命身体に危険がおよぶことが予見されるものです。

より一層の注意が求められると言えます。

今回の判決は、そのような注意義務に違反した、と人知恵したものと思われます。
学校事故で子供が死亡した場合や、重大な後遺障害を負った場合は、まずは示談交渉になりますが、これが決裂した場合は訴訟の提起をして裁判になってしまいます。

いずれにしても、法的な手続きは複雑で大変に難しいものですから、弁護士に相談をすることをお勧めします。
そして、あきらめずに、どのように交渉や裁判を進めていくのかを検討していくのがよいと思います。

ご相談はこちらから⇒「弁護士による学校事故SOS」
http://www.bengoshi-sos.com/school/

従業員への罰金制度は法律違反です。


2017年4月25日

今回は、従業員のミスや欠勤などに対して罰金を課すと、会社や社長などが逮捕、書類送検される可能性があるということについて解説します。

Q)私の会社では「罰金制度」があります。遅刻や欠勤、営業成績などで罰金を取られるのです。上司などは、ゲーム感覚のようにとらえている部分もあるようなのですが、正直、私は納得がいきません。従業員から罰金を取ることは法律的には違法ではないのでしょうか?

A)使用者は労働者に対して罰金を支払わせる契約を結ぶことはできません。もし罰金を課している会社があれば、労働基準法違反に問われる可能性があります。
労働基準法は、会社に比べて立場の弱い労働者の保護を図ることを目的として1947(昭和22)年に制定された法律で、会社が守らなければいけない最低限の労働条件などについて定めています。

では、今回の質問に関係する条文を見てみましょう。

「労働基準法」
第16条(賠償予定の禁止)
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
これに違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。

たとえば、従業員が無断欠勤をしたり、何らかのノルマを課して達成できなかった場合に罰金を取るといったことをすると、使用者として社長や店長などが逮捕、書類送検される可能性があるわけです。

近年、こうした罰金制度に関する労働基準法違反の報道が相次いでいるので、以下にまとめておきます。
2016年8月、人気の喫茶店チェーン店で、アルバイトがオーダーのミスをしたり、辞める1ヵ月前に報告しなかった場合や無断欠勤した場合に罰金を課していた店舗があったことが発覚。
2017年1月、コンビニチェーン大手の東京都武蔵野市の加盟店が、風邪で欠勤したアルバイトの女子高生(16)から9350円の罰金を取っていたことが発覚。
女子生徒は、1月後半に風邪のため2日間、計10時間を欠勤したところ、給与明細に「ペナルティ」、「9350円」と書かれた付箋が貼られていた。
親会社の広報センター担当者は、「加盟店の法令に対する認識不足で申し訳ない」、「労働者に対して減給の制裁を定める場合、減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が賃金総額の10分の1を超えてはならない、と定めた労基法91条(制裁規定の制限)に違反すると判断した」として、加盟店に返金を指導した。
2017年2月、コンビニチェーン大手の名古屋市北区の加盟店でアルバイトの急な欠勤に罰金を課していたとして、愛知県警は中国籍の夫婦で経営者の男(37)と店長の女(37)を労働基準法(賠償予定の禁止)違反の疑いで書類送検した。
容疑者の2人は、「急にバイトが休むと、自分たちが穴埋めをしなければいけない。自由な時間が欲しかった」という理由で、10~30代のバイト男女5人に「急に欠勤した場合は1回1万円の罰金を徴収する」との契約を結ばせていた。
実際、欠勤したバイトはいなかったとみられるが、1人には3回遅刻した罰金として、計3万円を支払わせたという。
2017年2月、中古車販売大手会社内で、自動車保険の契約について月間目標額が定められ、目標を下回った販売店の店長が上回った店長に現金を支払うことが慣行になっていたことが発覚。
同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた。
社長は社内メールで、「罰金を払うということは、店長としての仕事をしてないということだ!」、「罰金を払い続けて、店長として(中略)恥ずかしくないか!」などと記載していたという。
ところで、この労働基準法第16条は、条文にあるように「損害賠償額を予定する契約をしてはならない」としていることに注意が必要です。

つまり、賠償額を予定する契約を禁止しているのであって、従業員に損害賠償請求することを禁止するものではないため、たとえば従業員のミスによって会社に損害が生じた場合は、会社がその賠償を従業員に求めることは違法ではないということです。

また、会社としては、「ノーワーク・ノーペイ」の原則から考えれば、従業員が遅刻や無断欠勤した場合は、その間は働いていないので、当然その分の給料は支払わなくてもいいということになります。
就業規則に、「遅刻や無断欠勤、仕事のミスなどの場合は減給する」と記載することで対応すればいいでしょう。

なお、罰金を給料から天引きした場合は、労働基準法第24条(賃金の支払)に問われる可能性があります。

労働基準法第24条では、賃金の支払いには次の「5つの原則」を定めています。

・通貨払いの原則
・直接払いの原則
・全額払いの原則
・毎月1回以上払いの原則
・一定期日払いの原則

つまり、給料やアルバイト代は天引きせずに、労働者に対し、直接、全額を支払わなければいけないので使用者側には気をつけてほしいと思います。

万が一、労働トラブルが起きた場合は、まずは一度、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

会社側からのご相談はこちらから⇒http://roudou-sos.jp/flow/

労働者の方のご相談はこちらから⇒http://roudou-sos.jp/zangyou2/

セミナー実施


2017年4月20日

4月17日、不動産事業者向けセミナー

4月18日、税理士向け損害賠償防御セミナー

の講師を務めました。

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