重加算税の説明義務違反で税理士損害賠償
今回は、所得税確定申告において、税理士が説明助言義務違反を理由に損害賠償請求された事例をご紹介します。
前橋地裁平成14年12月6日判決(TAINS Z999-0062)です。
請求額は、合計2381万3700円。
●事案の概要
・依頼者らは、自分で所得税の確定申告をしてきたが、所得が増加してきたため、平成6年度分から税理士に依頼することとした。
・税理士(職員)は、依頼者らに対し、確定申告書を作成するために必要な書類として、現金出納帳、預金通帳、請求書、領収書などの原始記録を提示するよう求めたが、依頼者らは、これを拒んだ。
・依頼者らは、税理士に対し、依頼者らが作成した平成5年度の申告書の控え、生命保険料や損害保険料の控除証明書のみを提示して、同6年度についても同5年度と同様に申告するよう要請した。
・税理士は、提示された上記書類のみでは事業の経費が不明なため確定申告書の経費欄を記載することができないことから、経費を推計で算出して経費の合計額のみを記載し経費欄の具体的項目の金額を記載しない方法による申告をするよう提案したが、依頼者らはこれも拒んだ。
・そこで、税理士は、それ以上原始資料の提示を求めることなどを断念して、依頼者らの指示通り申告した。
・後日、国税庁は、上記申告には脱税があるとして強制調査し、重加算税その他追加納税が発生した。
・そこで、依頼者らは、税理士から重加算税等の説明を受けていなかったとして、説明助言違反を理由と損害賠償を請求した。
●判決
・税理士は、依頼者の希望や要請が適正でないときには、依頼者の希望にそのまま従うのではなく、税務に関する専門家としての立場から、依頼者に対し不適正の理由を説明し、法令に適合した申告となるよう適切な助言や指導をするとともに、重加算税などの賦課決定を招く危険性があることを十分に理解させ、依頼者が法令の不知などによって損害を被ることのないように配慮する義務があるというべきである。
・本件では、税理士において、依頼者らが売上げや経費を実際の金額と大幅に異なる金額として申告し不正に課税を免れようとしている可能性があることを容易に認識することができた。
・依頼者の指示どおりの申告をした場合に、依頼者らが将来脱税を指摘されて重加算税や延滞税などを課せられる危険があることを何ら説明しないまま、依頼者の指示どおりに所得税等確定申告手続を行ったことは、税務に関する専門家である税理士としての立場から、依頼者に対し不適正の理由を説明し、法令に適合した申告となるよう適切な助言や指導をするとともに、重加算税などの賦課決定を招く危険性があることを十分に理解させ、依頼者が法令の不知などによって損害を被ることのないように配慮する義務に違反しており、税理士の債務不履行になる。
・但し、依頼者らの責任は重く、過失相殺として9割を減ずる。
賠償額は、238万1370円。
以上です。
このように、税理士が何度も依頼者に原始資料を提示するよう求め、依頼者がこれを拒んだ場合(つまり、責任が依頼者にある場合)であっても、将来依頼者に生ずる不利益を説明しておかなければ、税理士に説明助言義務違反が発生します。
しかし、このような場合、往々にして「言った、言わない」の議論になりますので、説明した旨を書面、メール等の証拠に残しておくようにしましょう
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税理士損害賠償防御は、こちらから。
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