わら人形で脅迫罪に | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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わら人形で脅迫罪に

2017年10月02日

古今東西、「呪い」の道具にはさまざまなものがあるようですが、日本人にとってなじみの深いアイテムといえば、「わら人形」でしょう。

「丑の刻参り」は、呪いたい人間の髪の毛などを入れ込んだわら人形を作り、丑三つ時の深夜の2~3時頃に白い装束を着て、念を込めながら樹木に五寸釘でわら人形を打ちつけます。

日本人なら誰もが一度は目にしたことのある夏の風物詩……ではありませんね。

じつは、わら人形を作ると逮捕される可能性がある、ということを今回は解説します。

「脅迫容疑  41歳男逮捕 通学路に“わら人形”つるす」(2017年9月28日 毎日新聞)

警視庁小松川署は、小学校の通学路に「死ね」などと書いた紙をつけた「わら人形」をつるしたとして、東京都江戸川区の無職の男(41)を脅迫容疑で逮捕しました。

事件があったのは、9月26日午前5時頃。

容疑者の男は、自宅近くの歩道橋に「クソがきどもここからとびおりてみんな死ね」と書いた紙を付けた人形1体をつるし、通学路にしている区立小学校の児童を脅したということです。

わら人形は高さ約12センチで、枯れたマツの葉を束ねて自作したもの。近くの防犯カメラに人形を取り付ける様子が映っていたようで、男は「子供の声がうるさくて頭にきてやった」と容疑を認めているということです。

では、条文を見てみましょう。

「刑法」
第222条(脅迫)
1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

 

脅迫罪は、相手に危害を加えることを告げるだけで成立します。
その方法は口頭や書面のほか態度などでもよく、また直接ではなく間接的な手段でも相手が知ることができれば成立するとされています。

脅迫罪について、過去には次のような判例があります。

・対立する派閥の中心人物宅に宛てて、現実に出火もないのに「出火御見舞申し上げます。火の元に御用心」等と書いたハガキを送った。
(最判昭35・3・18集14-4-416)

現在、選挙に向けて、政党間で火花が散っておりますが、くれぐれも出火見舞いのハガキを出さないよう気をつけていただきたいと思います。

・相手の住宅付近にある物に火をつけて燃焼させた。
(仙台高秋田支判昭27・7・1判時22-237)

・相手の自宅付近の人目につく場所に加害内容を記載したビラを貼って、その内容を認識させた
(大判大8・5・26録25-694)

・刃物を着衣の下に隠し持って相手に危害を加えるような態度を示して脅迫した。
(大判昭6・12・14集10-763)

・村八分の通告は相手の名誉に対する加害の告知であると認められた。
(大判昭9・3・5集13-213)

・相手方一族の社会的罪悪を攻撃する旨の記事を掲載した雑誌を送付することは加害内容として十分具体的であると認められた。
(大判大1・11・28録18-1445)

・祈祷師が祈祷を信仰している者に対して、神の力で加害する旨の告知をするのは畏怖させるに足りる程度の害悪の告知だと認められた。
(最決昭31・11・20集10-11-1542)

色々な脅迫の形がありますね。

ついカッとなって、「殺してやる」とか、相手に危害を加えるようなことを言ってしまう人がいますが、場合によって、脅迫罪が成立するかもしれません。

日頃より、感情のコントロールに心を砕いて生活することが大切ですね。