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カラオケ動画をアップすると著作権法違反

 >カラオケ動画をアップすると著作権法違反

2017年1月24日

ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。

「方丈記」の冒頭にこう書いたのは、平安時代末期から鎌倉時代初期の歌人で随筆家の鴨長明(1155年‐1216年)でした。

多様化する現代社会においても、経済環境や人々の生活、文化、娯楽などは絶えず変化し続けています。

たとえば、カラオケ。

1980年代半ば、カラオケボックスというものが現れると、それまでのスナックなどでお酒を飲みながらカラオケを歌うという楽しみ方以外に、ただ純粋にカラオケで歌うという楽しみが生まれました。

そして今では、一人カラオケもあり、さらには自分がカラオケで歌う姿を動画で撮影し、それをYouTubeなどに投稿することを楽しみにしている人も増えているようです。

しかし、注意が必要です。

自分のカラオケ動画を動画共有サイトなどに投稿すると、カラオケ通信機器の会社から権利侵害で訴えられる可能性があります。
【動画共有サイトに投稿したカラオケ動画に関する訴訟の概要】

じつは、昨年末の2016年12月20日、業務用通信カラオケ業界大手の第一興商が、自分のカラオケ動画をYouTubeにアップロードしていた個人に対して差し止めを求めていた訴訟の判決が東京地裁で出ていたことがわかりました。

判決文から概要をまとめます。

「原告の主張」
・原告は、業務用通信カラオケ機器「DAM」シリーズを販売している。

・原告は、2016年8月に発売された女性ボーカルグループの楽曲のカラオケ用音源(本件DAM音源)を作成した。

・原告は、本件カラオケ音源につき、その音を最初に固定化したレコード製作者として送信可能化権(著作権法第96条の2)を有する。

・被告は、カラオケ店舗でDAMの端末を利用して、この楽曲のカラオケ歌唱を行い、その様子を動画撮影し、同年9月にインターネト上の動画共有サイト「YouTube」にアップロードした。

・この行為は、原告のカラオケ音源に関係する送信可能化権を侵害する行為に当たる。

・被告の動画はすでにYouTube上から削除されているが、今後、被告がほかの動画共有サービスを用いるなどして、この動画の電磁的記録(データ)を送信可能化する可能性がある。

・被告による原告の送信可能化権の侵害を防ぐためには、被告が管理する本件動画のデータを消去する必要があるため、本件動画の送信可能化の差し止めと記録媒体(ハードディスク等)からの動画データの消去を求める。
「被告の主張」
・本件動画は自主的にYouTube上から削除した。

・そもそも本件動画は、主として被告自身の歌唱の様子を撮影したもので、原告の利益を明確に侵害したとはいい難い。

・原告が、差し止め請求等の訴訟を提起したのは適切ではなく、原告は被告に連絡をとって被告が自主的に削除する機会を与えるべきだった。
「裁判所の判断」
・原告が主張する請求原因事実は、すべて認めることができる。

・よって原告は被告に対して、本件動画の送信可能化の差し止めと記録媒体からのデータ消去を求めることができる。

・現時点では、動画はYouTube上から削除されているが、被告が有する記録媒体から動画データが消去されたことはうかがわれないため、原告の請求の必要性を認める。

以上から、東京地裁は、個人のカラオケ動画の動画共有サイトへの投稿は、原告の権利を侵害するものと認め、動画のアップロードの禁止と個人の記録媒体からの動画データの消去を命じています。
なお、この訴訟では原告側は初めから損害賠償請求はしていません。
【著作権とは?】

さて、今回の事案に関係する法律は「著作権法」ですが、判決文の中にキーワードがありました。
それは、「レコード製作者としての送信可能化権」というものです。

著作権とは文字通り、著作物の創作者である著作者の利益を保護するための権利について定めた法律です。

著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。(第2条1項1号)

具体的には、次のようなものがあげられます。(第10条1項)

・小説、脚本、論文など言語の著作物
・音楽の著作物
・舞踊などの著作物
・絵画、版画、彫刻など美術の著作物
・建築の著作物
・地図、図面、図表、模型など図形の著作物
・映画の著作物
・写真の著作物
・プログラムの著作物

では、著作権にはどのような権利があるのかというと、以下のものなどがあげられます。

・複製権(第21条)
・上演権・演奏権(第22条)
・上映権(第22条の2)
・公衆送信権(第23条)
・口述権(第24条)
・展示権(第25条)
・翻訳・翻案権(第27条)

著作者には、これらの権利を排他的に占有することが認められているわけです。

なお、故意に著作権を侵害した場合、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれを併科する(第119条)、となっているので、これはかなり重い刑罰だといえます。
【著作隣接権とは?】

ところで、第1条の中に「著作者の権利に隣接する権利」とありますが、じつは、これが今回のキーワードである「レコード製作者としての送信可能化権」と関わってきます。
なぜなら、著作権法では、著作者の著作権と同時に「著作隣接権」を認めているからです。

ここでは、音楽を例に考えてみましょう。

作曲者は音楽の著作物、作詞者は言語の著作物の創作者ですから、それぞれ著作者として著作権が認められます。

しかし、曲を作ったからといっても、たとえそれがいい曲だったとしても、多くの人に届くわけではありません。
多くの人に聴いてもらい支持してもらうためには、この曲を広く大衆に広める役割を担う人や事業者が必要です。

こうした人や事業者に認められているのが著作隣接権で、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利です。(第89条)

たとえば、歌手は実演家でレコード会社はレコード製作者、テレビ局やラジオ局が放送事業者となり、著作権はありませんが著作隣接権があるわけです。

今回の訴訟の原告である第一興商などの通信カラオケの会社は、カラオケの音源を制作することからレコード製作者に該当します。

レコード製作者の権利としては次のものがあげられます。

・複製権(第96条)
・送信可能化権(第96条の2)
・商業用レコードの二次使用権(第97条)
・譲渡権(第97条の2)
・貸与権(第97条の3)

これらの権利が侵害された場合、著作隣接権者には著作権者と同じように、「差止請求権」や「損害賠償請求権」が認められています。

なお、故意に著作隣接権を侵害すると著作権の場合と同様、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれを併科となります。(第119条)

YouTubeはJASRACなどの著作権管理団体と包括的な契約を結び一定の著作権使用料を支払っています。
そのため、たとえば個人の投稿者が好きな曲を演奏して動画などを投稿しても、その曲の著作権を著作権管理団体が管理している場合には問題になりません。

しかし、著作権管理団体は著作隣接権については管理の範囲外のため、今回のような問題が起きるわけです。

YouTubeに動画をアップする行為は、送信可能化する行為であり、カラオケには、音源を製作した者の著作隣接権があるため、個人が勝手にカラオケをアップすることは許されない、ということです。

YouTubeを観ると、よく動画や音源が削除されていますが、これはレコード会社などから削除請求が来たということですね。

もし、どうしても自分が歌う動画をアップしたいなら、自分で(もしくは友人に)演奏してもらうしかないでしょう。
条文そのものを見てもらうとわかると思いますが、著作権や著作隣接権は複雑な法律です。

しかし、今回の事例のようにカラオケ動画のアップロードを気軽に行ったり、他人の文章のコピペによる引用が法的に問題になる場合があるので注意が必要です。

ちなみに、冒頭で「方丈記」の一文を掲載していますが、これは著作権法の第32条に認められている、正当な範囲内での引用ということになります。

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