法律事務は、弁護士でなければできません。 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
メニュー
みらい総合法律事務所
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。

法律事務は、弁護士でなければできません。

2016年11月03日

資格がないにもかかわらず弁護士業務を行っていた男が逮捕されたという報道があったので解説します。

「〝無資格〟弁護士の会社役員を逮捕 民事訴訟受任し書類作成…大阪地検特捜部」(2016年11月1日 産経新聞)

大阪地検特捜部は、弁護士の資格がないのに法律事務を行ったとして、大阪市鶴見区の会社役員の男(68)を弁護士法違反(非弁活動)の疑いで逮捕しました。

2015年4月から8月頃、容疑者の男は弁護士資格がないにもかかわらず報酬を得る目的で、貸金返還や損害賠償請求といった3件の民事訴訟を受任し、訴状などの書類を作成して大阪地裁などに提出していたようです。

特捜部は、容疑者の男が非弁活動を継続的に繰り返していた可能性もあるとみて調べているということです。
非弁活動(非弁行為)とは、法律で認められている場合をのぞいて、弁護士資格を持たないのに「弁護士法」の第72条に規定される行為(弁護士業務)を、報酬を得る目的で反復継続して行うことです。

「弁護士法」
第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
これに違反した場合、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。(弁護士法第77条3号)

過去、非弁活動により弁護士法違反に問われた事件には、通称「スルガ地上げ事件」と呼ばれるものがあります。

「スルガ地上げ事件」
2008年3月、弁護士資格がないにもかかわらず、大阪市の建設・不動産会社の社長らがオフィスビルの立ち退き交渉をしたとして、弁護士法違反で逮捕された。
もともと、このビルは商業ビル経営の「秀和」が所有していたもので、その後、モルガン信託銀行に移り、2005年9月、横浜市にあった建設・不動産会社の「スルガコーポレーション」(東証二部上場)が買収した。
その際、暴力団との関わりを持つ不動産会社に、いわゆる「地上げ」による立ち退き交渉を委託し、多額の報酬を支払っていたという。
スルガコーポレーションは、2007年9月までにビルを解体し、更地にした後に高値で広島市の商業施設開発会社「アーバンコーポレイション」に売却していた。

これは、いわゆる、地上げ、土地転がしに関連して、地上げ屋が多額の報酬を得て立ち退き交渉という法律事務を行ったために弁護士法違反に問われたものでした。

非弁活動による違反行為については、他にも以下のような判例があります。

「行政書士による弁護士法違反」
行政書士が、交通事故被害者から自賠責保険の申請手続、書類作成およびこれに付随する業務に関する依頼を受け、報酬の支払いを求めた控訴審の事例。
裁判所は、行政書士の請求を棄却した原審の判断を維持し、本件契約が法律事務に当たり、弁護士法第72条に違反する非弁行為に該当することから、公序良俗に反して無効であるとして行政書士の請求を棄却した。
(大阪高裁平成26年6月12日判決・判例時報2252号61頁)

遺産分割についての紛争が生じている場合に、他の相続人と折衝することは行政書士の業務の範囲外であると判断された事例。
(東京地裁平成5年4月22日判決・判例タイムズ829号227頁)
「司法書士による弁護士法違反」
本人訴訟による約1300万円の過払金返還請求の訴え提起について、司法書士による代理行為によるものであり、民事訴訟法54条1項、
弁護士法72条に違反する違法なものであるとして、不適法却下された事例。
(富山地裁平成25年9月10日判決・判例時報2206号111頁)
なお、過払金返還請求に関しては司法書士以外にも逮捕されている事件があります。
2013年に宮城県で弁護士資格のない夫婦が、2年間で約1000人から過払金返還請求を請け負い、約12億円を回収して約3億円の報酬を得ていたとして逮捕されています。

よく、お金を貸したのに返してくれない、というときに、弁護士じゃない人が、「代わりに取り立ててあげようか?そのかわり、取り立てたお金の半分ちょうだいね」などと言って取り立てに行くことがありますが、これも貸金請求の交渉という法律事務になるので、弁護士法違反です。

反対に、借金の返済ができないときに、会社や個人の代理人として、報酬を得て返済条件の交渉などをするのも、弁護士法違反です。

思わぬところで弁護士法違反となる可能性があります。

法律上の問題は、必ず弁護士に相談するようにしましょう。