夫婦喧嘩で逮捕される時代です。 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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夫婦喧嘩で逮捕される時代です。

2016年10月29日

夫婦げんかは犬も食わぬ、ということわざがあります。

しかし、夫婦喧嘩も行き過ぎると犯罪が成立してしまう可能性がある、という件について解説します。

「夫婦げんかで妻を暴行 容疑の中学校教諭を逮捕」(2016年10月27日 産経新聞)

京都府警亀岡署は、夫婦げんかで妻にコップを投げつけたり、殴ったりしてケガをさせたとして、町立中学校で保健体育と生徒指導を担当している教諭の男(33)を傷害容疑で緊急逮捕しました。

事件が起きたのは、10月26日午後10時半頃。

自宅で妻(33)と友人女性の3人で酒を飲んでいたところ、夫婦で口論に発展。
その後、妻から顔に酒をかけられたことに激怒した男は、プラスチック製のコップを妻の顔に投げつけて鼻に傷を負わせたほか、頭を殴るなどして頭部打撲のケガをさせたようです。

男は、「ケガをさせてしまったが、コップは投げてはいない」と容疑を一部否認しているということです。
以前、お尻をめぐる夫婦間での暴行事件について解説しました。
詳しい解説はこちら⇒「スパンキングは暴行罪か!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1688

夫婦げんかがエスカレートしてしまい、口論の末、私立の中高一貫校の教諭の夫が妻のお尻を蹴って暴行罪で逮捕された、というものでした。

2つの事件には、何やら共通点が多いような気もしますが、まずは刑法の条文を見てみましょう。

「刑法」
第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
「刑法」
第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
この2つの罪の違いは、簡単に言うと相手がケガをしたかどうか、ということになります。

今回の事件では、暴行を受けた妻が傷を負ったために、夫が傷害容疑での逮捕になったのでしょう。
もしケガをしていなければ暴行容疑での逮捕になったと思われます。

ちなみに、殴る、蹴るという行為だけが暴行になるわけではありません。
相手をくすぐったり、刃物を突きつけたり、タバコの煙を吹きかけても暴行罪になる可能性があります。

顔に酒をかけられれば誰でも腹が立つと思いますが、そこでこの夫が我慢をして手を出さなければ、逆に妻が暴行罪で逮捕されるという可能性もあったわけです。

その酒が熱燗で、やけどしていれば、妻が傷害罪で逮捕、という可能性もあったわけです。

男は、酒を顔にかけられて、

「無礼な!」と怒ったのかもしれません。

あるいは、「酒がもったいないだろ!」と、あまりの酒好きが高じて怒ったのかもしれません。

いずれにしても、暴力はいけません。

そして、世の中の人々は、たかをくくっていますが、このように、夫婦間でも、暴力は犯罪となることを肝に銘じておきましょう。